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予兆

ここまで読んでくださった方大変お待たせしました。ようやく仕事の方が落ち着きましたのでひとまず投稿させていただきます。

 朝食をすませた3人は再び優雅の部屋へと集まり、昨夜と同じように空間結界を張った。

 ただ今回は昨夜のような森の中ではなく、白い床が広がるただの広い空間だった。

「早速だけど2人とも?昨日の襲撃からして、今日も間違いなく敵は何かしらの行動をとると思う。だからできるだけの対応策を考えておきたいんだけどそれでいいかな?」

 優雅がそう提案する。

「うん、いいよ」

「私も構わない。それで作戦というのは?」

 2人とも頷き雅が問いかけてきた。

「……いや、特に何も考えていない」

 優雅が申し訳なさそうに答えると2人は揃って「え?」といった表情で顔を見合わせる。

「本当に何も考えていないのか?てっきり優雅のことだから何かびっくりするような策でも考えていると思っていたんだが?」

「そうそう、私も」

「2人とも買いかぶりすぎだぞ。おれはそこまで大したやつじゃない。

 経験だってないも同然だ。それに今回はあまりにも敵の情報が少なすぎる。

 後あとを考えれば変に策を考えない方がいいだろうと思う」

「なるほど、たしかにそうだな。でもそうなると今からいったい何をするのだ?

 優雅はさっき対応策を考えるといったのではないか?」

「ああ、それはあくまで戦闘になった場合の対応を考えておきたいってことだ」

「あ!なるほどねぇ。ていうことはやっぱり戦闘は避けられそうにないってことだよね?

 大丈夫かなぁ」

優が声を低くしながら聞いてくる。

「まぁ無理だろうなぁ。心配するな。何とかなるだろ」

 優雅はさも簡単に答える。

「相変わらず簡単に言ってくれるな優雅は。華音様の命がかかっているのだぞ?

 私はすでに緊張でおかしくなりそうだ」

「冷静そうな雅でも緊張するんだな。大丈夫だ!華音はおれが必ず守るさ。

 2人は敵のことだけ考えてくれればいい」

「わかったよ」「うむ」と2人は軽く頷いた。


「ところで優雅くんも私たちと同じ風遁なんだよね?それにしては私たちとはなんか違うように見えるんだけど?」

「私もそれは昨日から気になっていた。何か秘密があるのか?」

優と雅がそんなふうに聞いてくる。たしかに偶然にも3人の使う忍術系統は一緒だった。

 まぁ優雅の本当の忍術は違うのだが……。

「いや、忍術自体に違いはないよ。はっきりいうが、優の『大旋風』の強さも、雅の『風弾』や『烈風斬』の安定さもおれのそれより上なくらいだぞ?」

「ええぇ?絶対優雅くんの方が強いと思うよぉ」

 優も雅も優雅の言葉が信じられないようだった。

「それが本当ならなぜあんなことが起きるんだ?」

「それは簡単に言うと、お互いの術が衝突した瞬間に自分の術を少しだけコントロールしいてるからだ。ただこれは同じ忍術同士でなければできないんだがな」

 2人は疑問符を浮かべたままだ。

「まぁ説明するとだな、優とおれの風、または雅とおれの風が衝突した際に自分の風をコントロールして優の忍術を逸らしたり、雅のを無効化したりしたってことだ」

「「………………」」

 はてさて2人が優雅と出会っていったい何度目の驚きだろうか。

「ま、まて!それはそう簡単にできるものなのか?」

「それなりに術のコントロールができるやつならできるんじゃないかな?

 優は圧縮系の忍術を使ってこなかったところを見るとどうやらコントロールが苦手みたいだけど、雅ならおれより安定感あるしすぐにできるようになると思うぞ」

 優雅がそう答えるといじけたように優がつぶやく。

「いいなぁ雅。優雅くんに褒めてもらって。わたしはコントロールは無理だよぉ」

「優はそれでいいんじゃないか?」

「えっ?どうして?」

 優雅は思ったことをそのまま口にする。

「2人はずっと一緒にやってきたんだろ?多分これからも。ならコントロール系は雅に任せてゆうは自分の得意分野を伸ばすべきだ。優の『大旋風』なんかは力強くていい術だったと思う。変に他のものに手を出すよりそっちの系統を伸ばした方がより魅力的になると思うぞ」

「み、魅力的!?そ、そっかな。うん、優雅くんがそうゆうならそっちで頑張っていくよ。

ありがとう」

 なぜだか優の頬がやたら赤く染まっていたがすぐに雅が割って入るように発言してきた。

「ォホン!そろそろ始めたいのだが?」

「え?ああ、そうだな。始めるか」

 こうして半ば強制的に夕方に向けての対策がスタートした。



 

現在時刻は夕方5時。

 いよいよだ。優雅たち4人は昨日と同じく東郷の下へと向かうため車へと乗り込んだ。

 車内は優と雅のせいか緊張感に包まれている。

「ふ、2人とも今からそんなに警戒してたら最後まで持たないぞ?」

耐えかねた優雅が口を開く。

「何を言っている優雅。敵はいつ襲ってくるかわからないんだぞ!常に警戒は必要だ」

「そうだよ優雅くん。何かあってからじゃ遅いんだよ」

 いやまぁたしかに間違ってはいないんだが……。

「多分今の段階で襲ってくることはないと思うぞ?」

「「へ?」」

「だから今はもう少し楽にしてた方がいいぞ」

2人はもはや恒例行事並みに驚いた表情を浮かべる。

「な、なんで?」

「なんでって言われてもなぁ、感だ」

「ほ、本気で言っているのか?」

「まぁな。可能性で言えば十分あたる可能性の感だからな」

「どうゆうことかしら?優雅」

 華音が尋ねてくる。

「簡単さ。おれたちが警戒してくることは向こうだってわかってるだろうから警戒の強い序盤にわざわざ襲ってくるやつなんかいないだろ?

 それに昨日はかなり人目を気にしていた印象を受けたからな。

 まだ明るい今の段階で襲うくらいなら早朝ないし昼間にでも襲ってくればいいだろ?

 どうせホテルの場所くらいは突き止められているはずだしな」

「……なるほど」

「そうね、たしかに優雅の言うとおりね」

「優雅くん、すごぉい!」

 別にこのくらいは普通だと思うけどなぁと思ったが口には出さなかった。


 

 昨夜と同じく東郷ブランドのビルへと到着した優雅たちは同じ部屋へと案内される。

「雅、ちょっといいか」

 優雅は雅にだけ聞こえる声で呼ぶ。

「どうした?」

「華音と東郷さんの商談が始まったらこの階だけでいいから警戒を強めといてくれるか?

 優だとちょっと心配なところがあるからな」

「う、うむ、わかった」


そして案内された部屋へと入る。

「お待ちしておりました。九峰院華音様。昨夜はわざわざ来ていただいたのに大変ご迷惑を掛けてしまったようで申し訳ありません」

 東郷がのっけから頭を下げてきた。

「あら?あなたが謝ることではないでしょう?それともあれはあなたの差し金だったのかしら?」

「と、とんでもありませんよ!現状私が九峰院様の命を狙ってもいかほどのメリットもございませんから」

「まぁそうね。冗談よ。これでも私はあなたを信頼しているわ」

「ありがとうございます」

 再び東郷が頭を下げる。

 

しばらく昨日の襲撃に関しての情報の会話がされたが、一通り終わったところで華音と東郷は商談の話に移った。

昨日同様、優雅たち3人は少し離れたところでソファーに座って待つ。

「雅、どんな感じだ?」

 優雅が雅に聞く。おそらく部屋に入る前に雅に指示した件だろう。

「うむ。特に問題ない」

 雅が頷きながら答える。

「そうか……」

「どうした?納得いかなそうだな?」

「何か気になることがあるの?優雅くん」

 優雅が考え込むように黙ったところで2人が問いかける。

 優にもこのことはこちらに座った際に話してある。

「ちょっと気になることがあってな。まぁ思い過ごしかもしれないが」

「きみがそういうんだ。思い過ごしではないだろう?どこが気になるんだ?」

「だといいけどな。華音が話し始めてからどうもだれかに見られて、いや監視されているような気がするんだ。」

「えぇ、そうかな?私は特に感じないけど」

「私もだ」

「そうか。まぁおれもかすかにそんな感じがする程度だからただの警戒のしすぎかもしれんな。悪い!とりあえず今はあまり気にせず2人が終わるのを待とう」

 そう言って優雅たちは2人を待った。


2人の商談は昨夜より早く終わった。もともと昨日の段階でほとんどのことは済ませてあると華音は言っていたので予定通りだろう。

「3人とも待たせたわね」

 華音が優雅達の方へ歩み寄り声をかける。

「華音様、昨夜申し上げた通りこの後パーティを用意しておりますがいかがされますか?

 昨夜の件もありますしこの際、無理にとは申しません」

「そうね……、3人はどう思うかしら?」

「私は……個人的には行きたいですけど……、楽しみにしてたし」

「華音様の判断に任せます」

 優と雅が答える。

「そう、優雅は?」

「どちらでも構わない。どのみち華音が命を落とすことは絶対にさせないからな」

 優雅は自然に答える。

「わかったわ。なら行きましょう。ふふ、期待しているわ、優雅」

「ああ、まかせろ」


 部屋を出た5人はパーティ会場に向かうためエレベーターで一階まで降りる。

「会場はここより車で二十分ほどの所です。フロントへ付きましたらすぐに車を用意しますので少々お待ちください」

「その必要はないわ、東郷。下にじいやがいるでしょうから私の車で行きましょう」

 エレベーター内で東郷がそう言うと華音が答える。東郷はそれに頷いた。

てっきりもっと近くのレストランでやるものだと思っていたので結構遠いなと思った優雅だが、まぁパーティというくらいだからそのような場所を用意しているのだろうと納得した。

 しかしそんな納得は今をもって無駄に終わることになる。


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