作戦会議?
ここまで根気強く読んでくださった皆様初めまして。胡蝶天下です。
今回の投稿で書きためが尽きてしまったため次回の投稿が未定になってしまうことを先にお詫びしておきます。
さて今回の投稿ですが、前回のラストからようやく本当に早く書きたかったシーンへと突入したのですが、それ故に前半の説明などいろいろぶっ飛ばしてしまいあまりいいできになっていなかったかもしれません。すみません。
ただここから先は自己満足ではありますがなかなかよくできた感に自信がありますので若干の期待を抱いて読んでいただけたらと思います。
この物語はここから一気にクライマックスまで行く予定です。今までなんとか優雅の実力を隠してきたのですがそれも次回で明らかになる予定ですのでどうぞご期待ください。
それとかってながら次回の投稿では新作のプロローグも投稿の予定ですのでお時間のおありの方はぜひ立ち寄ってもらえればとおもいます。
長くなりましたがこれで初めての挨拶とさせてもらいます。メッセージや感想はどんなことでもかまいませんのでお待ちしております。
戻ってきた優雅達は夕食の整った部屋で四人、昨晩と同じように座っていた。
ただ、今回は優も食事には手を付けず話を聞いてくれるようだった。さすがにこの状況で昨日のようなことをされては優雅も優に対して多少の嫌悪感を抱いたかもしれなかったが、ちゃんと切り替えのできるものであったことに安心感を覚えていた。
「華音、一つ聞きたい」
「なにかしら?」
「命を狙われる相手に心当たりは?」
「ないわ……いえ違うわね。多すぎてわからないわ、が正しいかしら」
まぁそうだろうな。と優雅は思う。いくら九峰院の社長だろうと華音はまだ一五歳だ。よく思わないものがいても不思議ではないだろう。
「だろうな。しかし情報があまりにも少ないな。
東郷さんのほうはどうだった?」
「あちらは特に何もなかったそうよ」
ということは……と、優雅は考えたが、そこへ雅が尋ねてくる。
「優雅、ひとついいか?」
「なんだ?雅」
「狙撃犯は私たち同様忍術者で間違いないのか?」
「ああ、間違いない」
それは優雅が確認済みだった。狙撃ポイントを見回している途中でかすかに忍術を使った痕跡が残っていたのだ。
「そうか……やっかいだな」
「だね。少なくとも敵は5人はいる。全員が忍術者となると不利よね」
優がそういって肩を落とす。だが優雅は。
「そんなことはないさ。少なくとも狙撃してきた5人は大した忍術者じゃない」
「なぜわかる?」
雅が問いかける。
「一番近くの狙撃ポイントから車までやく1キロ、そんな距離から気配を感じられる程度の術者なら大したことはないだろう?」
優雅は逆に問いかけてみせた。だが優と雅の表情は曇ったままだ。
「私は気付かなかったよ」
「私もだ」
「それは探ろうとしてなかったからだろう?探らなければおれだった気付かなかったさ」
優雅は笑顔でそういって二人を庇った。
「さて、おれから1つ意見があるんだがいいか?」
ここで優雅は先ほどから考えていたことを3人に告げる。華音、優、雅も黙ってそれを聞いた。
「今回の犯人はおそらく内部の人間による意志の犯行ではないと思う。
理由は簡単だ。今回の狙撃による襲撃はあまりにも雑だ。
ただ華音を殺そうとしたことは間違いないだろう。だが、これが内部の者の考えた計画ならもっと確実な選択をするはずだ。
おそらく……いや、確実に犯人たちはおれたちが忍術者であることは気付いた、あるいは知っていたはずだ。内部の者ならなおさらな。にもかかわらず犯行はライフルによる狙撃のみ。しかも失敗とともに速やかに退避している」
ここで優雅は一度会話を切って確認するように3人を見る。
3人は黙ったままだった。
「続けるが、隙をついた襲撃が失敗した場合疑われるのはこの場合、華音をよく思わないものとなる。華音?ここ一週間で今日の東郷さんとの商談に関係ない者との接触はあったか?」
優雅が途中で華音に問いかける。
「ないわ。そもそも今日の商談の情報も漏れているとは思わないわ」
「なら真っ先に疑われるのは内部の華音の下にいるもの、あるいは東郷さん自身、それか東郷さんの下の者によることになる。そんな奴らがあんな成功率の低い手段をとるはずがないとおれは思うんだが何か意見はあるか?」
優雅が問いかけるが優も雅も表情は唖然、としたものだった。
華音はというとかすかに微笑んでいた。
「あれ?なにかおかしかったかな?」
優雅が恐る恐る聞くと。
「え?ちち違うよ!ただすごいなぁと思って」
「あ、ああ。正直に驚いていた。よくあれだけのことでそこまで考えが及ぶものだな。
探偵になったほうがいいんじゃないか?」
2人は優雅の説得力のある考えに驚いていただけだった。
「そ、そうか。ならいいんだが。華音はどうだ?」
「ええ、すばらしい推理ね優雅。それに私も自分の下、あるいは私が信頼している東郷の下にそんな輩がいるとは思わないもの。それだけの信頼は築いてきたつもりよ」
華音が自信満々に言ってのけた。そして優雅もそれには同意だった。まだ出会って間もないが華音の目は確かだと思うし、そもそも、見ず知らずの他人にここまでよくしてくれる華音を嫌うものが内部にいるとは思えない。それは下の者に接する華音の態度を見れば一目瞭然だ。優雅は華音の言葉に一つ頷いてみせる。
「まぁ今のはあくまで仮定だ。断定するには情報が少ないからな。とりあえず一度、霧島先生に報告しておこうと思う。
優雅の言葉に2人は相槌をうった。
そして優雅は懐から一枚の紙切れを取り出した。そこには何やら文字が刻まれている。そして瞳を閉じ、その紙切れに流し込むように忍術(外気)を放った。すると優雅の頭の中によく知る声が響く。
(相沢か?どうした?)
そう。この紙切れは連絡を取るための言わば携帯電話のようなものだ。ただし外気を必要とするため、忍術者にしか使うことができない。
優雅は頭の中で返事をした。別に口で言葉にしても相手には聞こえるのだが優雅は基本頭の中で会話をしている。
(それが少々厄介なことになりまして)
優雅は今の状況と考えを簡潔に伝える。
(なるほど・・・・・・。すぐに行ってやりたいのだが生憎、明日の夕方から大事な会議があってな。
そちらだけで何とかなりそうか?)
(問題はないと思います。一応報告だけと思っていたので)
(そうか。相沢がそう判断したなら問題ないだろうな。念のため会議が終わったら私もそちらに向かう。まぁそれまでに終わらせてもらっても構わないがその時はまた連絡をくれ。
それから今より任務の難度をAランクから特Aランクへと繰り上げるので十分注意しながら行ってくれ)
(・・・・・・了解)
そう言って優雅は瞳を開け一息つく。
「先生、なんだって?」
優がすかさず聞いてくる。
「あ、ああ、明日の会議が終わったら合流するそうだ。
それとAランクから特Aに繰り上げるとかも言ってたな」
優雅が簡単に言った言葉に優と雅は何やら驚きの声を上げる。
「うそ!特A?」
「本当か?それは!特Aなど私たちはまだやったことがないぞ!」
「ん?そうなのか?まあ大丈夫だろ」
「はぁ……簡単に言ってくれるなきみは。特Aは私たち二年にとって最高難度の任務だぞ。
二年になったばかりの私たちだけではかなり荷が重い。
今の二年の一位、二位が三年の付き添いでついているくらいだ」
そうだったのか?と、多少驚いた優雅だったが。
「ん~この3人なら何とかなるだろ」
の一言で流した。
しばらく黙って何かを考えている二人だったが不意に優が優雅に聞く。
「ところでさ、優雅君っていったい何者なの?」
そして雅も同調するように口を開けた。
「そうだな。私もそれが気になっている。霧島先生が私たちだけに繰り上げまでした特Aランク任務を続行させるほどの力を、優雅が持っているとみるべきだろう?
今回の任務はチームワークが不可欠だと思う。この機会に一度、優雅の実力がどれほどなのか見ておきたいのだが?」
それは優雅も思っていたところだった。
「そうだな。なら連携の確認も兼ねてやっておいた方がいいだろうな。場所はこの部屋を使えばいいだろう」
「え?ここ?だれが空間結界を張るの?私あれ苦手だから無理だよ?」
優がそんなことを言い出したが優雅にとってはいらない心配だった。
「いや、それはおれがやるよ」
「しかし、それでは君の力が見れないのではないか?まさか空間結界を持続させたままやるつもりか?」
「ん?そうだけど?」
優雅の、当然だろ。という表情を見て2人は驚いた表情を見せた。空間結界を維持しながらの実戦訓練がどれほど困難なのか2人は知っていたからだ。
「何を言っているのかは理解できないけどなんだかおもしろそうね。私も見学してもいいかしら?」
華音がさも楽しそうにそんなことを言い出す。
「は?いや……別にかまわないけど結構危ないと思うぞ?」
「ふふ、構わないわ。もともと命を狙われているのだからその程度大した問題ではないでしょう?それにあなたたちが守ってくれるのではなかったかしら?」
華音が、ふふ、と笑顔で答える。優雅も思わず失笑して、その通りだな、と言い、言葉を続けた。
どうせなら華音にも一役買ってもらおう。おれが華音の護衛をするから優と雅は敵として華音を狙ってくれ。その方がより実戦的だからな」
優雅の案に雅が、なっ!と、過剰に反応したが次の言葉を出す前に優が、雅、私が言うよ、と言って遮った。
さすがは双子。一瞬で雅の言いたいことが伝わった。意思の疎通ができている。と思った優雅だったが、優の言葉は雅が出そうとした言葉とは全く関係ないものだった。そしてその言葉はまさに優らしい、優だからこその言葉だった。
「その前に、ご飯にしよう!」
そう言って優のお腹が、ぐぅっと鳴った。
優以外の3人は顔を見合わせたあと同時に笑った。あまりにもマイペースな優に対してもはや笑うしかなかった。
すっかり冷めてしまった夕食を食べ終えた4人は今森の中にいた。だが当然、本物の森ではない。優雅が張った空間結界で先ほどまでいた部屋を基本にして、空間を歪ませて森を作り出したのだ。もちろん森の中で何をしようと部屋が壊れることはない。実戦訓練を行う際にとても便利な基本忍術だ。
「うわぁ広い!」
「確かに広いな」
「あら?素敵じゃない。こんなことができるなんて忍術者が羨ましくなるわ」
3人は優雅の張った空間結界に驚いているようだが、優雅にとってここは自分の庭のようなものだったのでどこか懐かしいといった表情だった。
優雅が最後にここへ来たのは一年前、両親と訓練した時以来だった。もっともその時は空間結界を張ったのは優雅ではなく、瑞希だったのだが。
それでも作り出すのは同じ森であったし、時には優雅が空間結界に慣れるためと張っていることもあったので同じことだった。
「でも優雅君、こんなに大きな空間結界張って大丈夫?」
「優の言うとおりだ。これだけの空間結界を維持して尚且つ、華音様を守りながら私たち2人を相手にするというのか?ずいぶんなめられたものだな」
雅が少々棘のある言い方をする。それもそのはずだった。優と雅はこれでも学年三位と四位なのだ。自分の腕には少なからず自信を持っている。だがそんな二人でさえ空間結界を維持しながらの実戦訓練などできないのだ。にもかかわらず優雅はさらに華音を守りながら、申し分ない実力を持った2人を相手にしようというのだからなめていると思われるのは当然であった。
しかし優雅は決して2人をなめているわけではない。というより相手をなめるということを知らないといった方が正しいだろう。そもそもいままで優雅が相手にしてきたのは最強コンビと言われた両親と風遁忍術を教わった瑞希しかいないのだからなめられるはずもなかった。そんな両親たちに、相手が誰であろうと忍術者である限り油断はするなと言われ続けてきたのだから尚更だ。
「いや、そういうわけじゃないよ。ただ実はおれ、一対一でやりあったことないんだよ。
だから実力を見てもらうにはいつもやっていたやり方の方がいいかなぁと思っただけさ」
2人は今日でいったい何度目になるであろう驚きの表情をする。
「うそでしょ?優雅君」
「嘘をついてどうする」
「しかし優雅は水谷とも霧島先生とも模擬戦をやったのではなかったのか?」
「ん?ああ、確かにな。でもシンの時は一瞬で終わったし、霧島先生とも五分もやってないぞ?それは入れてもあまり意味はないだろ。それよりとりあえず始めないか?」
「え?あ、うん」
「わかった。優雅がどれほど力を隠しているのか存分に見せてもらう」
そして簡単な勝敗基準を決めて、優雅と華音、優と雅に分かれて一度木の陰に隠れた後、訓練は始まった。
勝敗基準は至ってシンプルだ。敵役である優と雅が優雅を戦闘不能、または華音を捕えたら勝ち。そして優雅は2人から制限時間の二時間まで華音を守り切れば勝ちだ。
そして二時間後。
景色は優雅が借りている部屋に戻っていた。
「……ふう」
優雅はソファーに腰を下ろして一息ついた。
「お疲れ様。貴重な体験ができたわ」
隣に座った華音が呑気に言う。しかしそんな華音の傍らで……いや正面のベッドで約2名、はぁはぁ、と息を切らして倒れこんでいるものたちがいた。言うまでもなく優と雅だ。
「ううぅ、もぉうごけないよぉ……。優雅君強すぎ」
「あ、ああ……。正直完敗だ。これほどまでに実力差があるとは思わなかった……。
きみはいったいその可愛い見た目のどこにあんな力を隠しているのだ。
きみはあれか?手品師にでもなるつもりなのか?」
いや、手品師って全然違うだろと優雅は思いながらベッドに横たわる2人を見て苦笑する。
「でも優と雅の連携には何度か焦ったよ。即席では到底できないお互いを知り尽くしたコンビネーション。ほんとにいいコンビだ。さすがは双子だよ」
いくらか訓練時の様相を思い出しながら2人を庇うように答えた優雅だったが、2人は呼吸を整えるのが精いっぱいのようで全く反応しなかった。
「ふふ、どうやら優雅は2人とは1つ2つレベルが違うようね。
でも同じ二年生でここまで差がつくものなの?2人は確か成績は上位なのでしょう?」
「それがおれにもよくわかんないんだよなぁ。特に変わった訓練をしてきたつもりはないし、ましてや先月までおれは普通の高校に通ってたからな。
忍学に入る前は全員が自分と同じくらいはできると思ってたくらいだし。
自分以外の忍術者が、忍術に目覚めてからどんな訓練を積んできたのかもわからないから答えようがないな」
確かに優雅は特に変わったことはしてきていない。忍術の使い方は両親、あるいは瑞希に軽く教わったくらいで、あとはひたすらその3人のうちのだれか2人と複数相手の実戦訓練を繰り返してきただけだ。しいて言うなら両親を相手にする場合は、頭に最強の、と付くぐらいで他はというと平均よりちょっとばかし忍術に目覚めるのが早すぎたくらいだろう。だから自分とほかの忍学生でここまで差がついているとは優雅自身編入するまで思っていなかったのである。
「そう、まあいいわ。少し気にはなるけど……この話はまたの機会にでもしましょう。
私は自室に戻って仕事をするわ。いくら優雅が見た目可愛くても日付が変わるまで殿方の部屋にいるのも気が引けるし。まあいまの私は優雅なら別にいいと思っているのだけど……今日は2人もいることだし、こちらもまたの機会にするわ」
「ん?どういう意味だ?」
優雅は華音の言っていることがさっぱりわからないといった感じだった。
「ふふふ、優雅は自分のこととなると以外と鈍感なのかしら?」
しかし優雅はこの意味も分かっていないようだった。
そして華音は部屋を出ようと扉に手をかけたところで本日一番の笑顔で優雅の方へ向き、今度こそ鈍感な優雅にも分かるような言葉を発した。
「それと2人はどうやら疲れて眠ってしまったようだから今夜は此処で寝かせてあげなさい。起こすのは可愛そうだわ。もちろん優雅もここで寝るのよ?かわいそうだけど他の部屋はもうお客様を迎える準備をしてしまったから使えないのよ。
それじゃぁおやすみなさい」
「は?え?ちょっ!」
優雅はあわてて確認するようにベッドの2人を見たが確かに寝ていた。そして再び華音の方へ向いたが華音が出て行ったあとだった。
おいおい、冗談だろ?といった様子で意外にも優雅は焦っているようだった。
そして追い打ちをかけるように静まり返った部屋で2人の寝息が聞こえてくる。
(くそ!わからない。どうすればいい?考えろおれ!)
優雅は同様のあまり1人で会話を始める。
(は!そうだ!2人の使っていた部屋なら……いやダメだ。女の子が使っていた部屋に勝手に入って寝るとか今の状況より悪い。そもそもカードキーは目の前の2人のどっちかが持ってるんだ。探すわけにもいかない)
そんな感じで優雅は自分で案を出し、回答まで自分で出すということを幾度か繰り返し、結局それは無意味だと悟り、あきらめてソファーで寝ることにした。
「…………ダメだ……寝れん」
そういうと優雅はおもむろに立ち上がり、ベッドの二人を見る。
まさか襲う覚悟を決めたのだろうか。まぁ優雅も見た目は可愛いが一応は男だ。
無防備に眠る美少女二人を前にそういう気を起こしても致し方ないだろう。
しかし優雅はそんなことを思っていたわけではなかった。
「ん~二時間はちょっと長すぎたかな?
明日は確実に何かあるだろうし、疲れが残っているとまずいなぁ……。仕方ない」
そう小声で漏らすと優雅は胸の前に軽く右手を握って構えた。それは優雅が忍術を使う際の動作だ。そして何かを呟く。
すると優雅の身体の周りから電気がパチパチッと現れ、それを優雅は2人へとそっと優しく流し込んだ……。
明朝八時、あまり寝付けなかった優雅がシャワーを浴びて出てきた時、ようやく雅が目を覚まし、目を擦りながら状態を起こした。
「おはよう、雅」
優雅はそう声をかけたが、寝ぼけた表情で目の前に立つ優雅を見た雅は普段の口調からは想像もつかない可愛い悲鳴を上げた。
「なっ!なななななぜ優雅がここにいる!」
そして雅はあわてながら枕元の方へと後ずさる。そこへ雅の悲鳴で起きたのであろう優が欠伸をしながら状態を起こした。
「ふわぁ……どうしたの雅~?」
優はそう言い、雅を見て、次に雅が指差す方向へと顔を向けた。
「おはよう、優」
優雅は優にも同じように挨拶した。そして雅に続いて優も可愛い悲鳴を上げた。
どちらかというとやっぱり優の方が女の子らしい悲鳴であった。
「どどどどどうして優雅君が私たちの部屋にいるの!」
2人して同じようなことを言う。さすが双子だ。
「いや、ここおれが使ってる部屋だから。覚えてないのか?」
優雅にそう言われて2人は「え……?あ……!」とどうやら昨晩の状況を思い出したようだった。まさか2人して覚えてないとは。
「……優雅君もここで寝たの?」
「ん?ああ。そこのソファーでな」
そういってソファーを指さす優雅。
「そ、それはすまなかったな。ベッドを占領してしまって。
それで、だな、優雅。そ、その、きみは何もしていないよな?」
いきなり雅が恥ずかしそうな口調で言う。隣で優ももじもじしながら頬を赤らめていた。
「ん?起きてシャワーを浴びたけど?」
「い、いやそうじゃなくてだな!その……寝ている間に、私たちにだな、何かしたりしていない…よな?」
雅はさらに赤くなって言った。それに対して優雅は。
「ああ、なんだ。安心しろよ。何もしちゃいないよ」
と言った。確かに雅が思っているような恥ずかしくなることは優雅はしていないが、何もしていないというのは嘘だった。だが優雅は2人がまったく別のことを気にしていたのでそのまま誤魔化した。
「ほ、ほんとに?」
「ああ」
「そ、そうかそうか。ならいいのだ。せっかくきみの実力が見れて、この先、信頼しようと思っていたのに万が一にも手を出されていたら逆に信頼できなくなるところだ。
寝込みを襲うなど男らしくないと思うからな!男なら堂々とするべきだ!」
「……雅?それだと手を出すなら起きている時にっていう意味に聞こえるよ?」
「な!ちち違うぞ優!私はそんなふうに言ったつもりはない!
くっ!も、もうこの話はいいだろう!早く部屋に戻るぞ!」
そう言って雅は優の手を取って慌てて部屋を出て行った。
優雅は雅の行動があまりにも速かったのでポカンとした表情で、何をそんなに慌てているんだ?と思いながらも2人を見送った。
2人が部屋から出て行ったあと部屋に戻った優から電話があって朝食を一緒に食べようということで一時間ほど2人が呼びに来るのを待った。
そして3人はレストランルームへと行き、先に来ていた華音と会い、一緒に朝食をとる。
「ふふふ、ずいぶん来るのが遅かったわね。昨夜はそんなに楽しかったのかしら?
どうなの優雅?」
華音がいきなり意味深な笑みを浮かべて言う。
「どうってなにがだ?」
優雅は意味が分からんと言った表情で聞き返した。
「あら?せっかく私が気を利かせてこんな美少女2人と同じ部屋で寝れるようにしたのよ?まさか何もしなかったわけではないでしょう?」
雅が華音の言葉を聞いて突然むせた。そして優は。
「そういえば、なんか今日はいつもより体の調子がいい気がする……」
といって疑いの目を優雅へと向ける。
優雅は慌てて否定した。
「す、するわけないだろ!というよりあれは華音が他の部屋はお客さんの準備をしたっていうから仕方なく同じ部屋で寝ただけだろ!」
そして優に対して心の中で(それはおれが忍術で電気マッサージ的なものをしたからだ!あくまで忍術であって、直接触れたわけじゃないぞ!)と否定していた。
そう、優雅が2人に対して行ったのは優雅の本来の忍術である雷遁を使ったいわゆる電気マッサージだった。それによって優、おそらく雅の身体もいつもより調子が良くなっているのであろう。しかし優雅はまだ2人の前で雷遁を使っていないので説明のしようがなく心で叫ぶしかなかった。
それならいっそ雷遁を使うことを話せばいいのではと思うが、優雅は風遁忍術を使えるようになってからはむやみに雷遁忍術を使ったりはしないようにしている。今回のように敵が存在している以上、なおさら不用意に見せたりはしない。隠していればそれだけでこちらの有利になるのだから。
しかしいずれは見せる、あるいは話す機会があるだろうが今は必要ないと判断した。
そんな考えがあって優雅は誤魔化すしかなかったのである。
「あら?そんなこと言ったかしら?ふふふ」
華音のとぼけたような言葉に、な!まさか嘘か!くそやられた!と優雅は内心そう思って……しかしあきらめたかのように溜息をついた。
「うふ、可愛いわね優雅。まぁ優雅をからかうのはこの辺にしときましょう。
それより今日も買い物へ行くのかしら?」
「いえ。さすがに今の状況ではのんびり買い物をしている余裕はありませんから」
「うん。残念だけど今日は昨日の訓練で分かったこととかいろいろ話し合うの」
優は本当に残念そうな表情で言う。どんだけ買い物に行きたかったんだ。
「優、おれでよかったら買い物くらいいつでも付き合うから我慢してくれ」
優雅は優しくそう言った。
「ほんとにっ?なら我慢する!えへへ、やった!」
優は死人が突如生き返ったような、如何にも嬉しそうな表情で笑った。
しかし優雅は自分で言ったのもかかわらず、しまった!と言った感じに苦笑した。
「優雅……、いいのか?」
雅がなんだか悪いといった表情で聞いてくる。
「まあ……しかたないだろ……」
優雅はあきらめた。