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SNB(シノビ)

 クラスメイトとの紹介を兼ねた訓練を終えた優雅は教員棟へと来ていた。

 失礼します。と扉を開けて中へ入る。すると、こっちだ相沢!と霧島先生が呼んだ。

 霧島先生のそばまで行くと、かけたまえ。と言われ用意された椅子へと腰を下ろす。

「ようこそ相沢優雅君。よくこの学園に来てくれた。

 私はきみに会うのを楽しみにしていたんだ」

 優雅が腰を下ろした直後、霧島先生はこう言った。

「どういう意味でしょうか?」

 優雅は言葉の意味が分からず尋ねる。

「私は以前からきみのことを知っていたのだよ」

「……それは叔母からということですか?」

 優雅の叔母である瑞希はこの中央学園の卒業生だ。霧島先生がそのころからここで教員をやっていたのなら聞いている可能性があった。ただ瑞希は学園の寮に入っていたため、そのころはあまり顔を合わせたことはなかった。だが優雅の問いに霧島先生は首を横へ振った。

「いや、瑞希君ではない。たしかに一年だけではあったが彼女は私の教え子だ。

 瑞希君が卒業する年に私はここの教員となった。

 しかし私がきみを知ったのはここへ来る三か月ほど前だ。

 君はSNBシノビを知っているかね?」

 ……なるほど。優雅は霧島先生のその問いで自分のことを話した相手を明確に理解した。

「もちろんです。日本に存在する全、七つの忍学、ならびに卒業後に忍術者の多くが勤める日本警察特殊課、自衛隊特殊課の根源、いわば頂点である最高忍術機関。通称SNBです。つまり霧島先生はおれのことを親父から聞いたということですね?」

「するどいな。さすがは雅斐さんの息子といったところか」

 やはり親父からか、まったく。いつも個人情報の管理は怠るな!情報が洩れれば最悪命にもつながる。とか言っておきながら自分で息子の情報を話しやがって。と優雅は呆れた。

「私は忍学をトップで卒業してね、それが評価され、ごく一部の上級忍術者しか入れないSNBに就職することができた。そして数々の任務をこなした」

 優雅はまじめな表情で話の続きを聞く。

「そのころの私は自分こそが最強だと思っていた。ただある年、毎年開かれるSNB内でのランキング戦に私は気まぐれで参加した。ランキングは任務をこなせばある程度は上がるし、自分が最強だと信じていた私はこれまでランキング戦に興味を示さなかった。

 ただその年は丁度任務から帰ってきているところだったので暇つぶしに参加することにしたんだ。

 私は当然のように勝ち上がった。そして準決勝までコマを進めた。

 だが準決勝の相手というのが想像を絶する強さだった。私は相手に一撃も入れられることなく敗北した。その相手こそが君の父親、雅斐さんだった。雅斐さんも、もともと大会に参加されることはなかったらしいのだが上の頼みで仕方なく参加したと言っていた。

 敗北した私は以外にもすっきりしていた。おそらく自分より上がいることを知りうれしかったのだろうな。それも二人も同時に見つかった」

 は?ふたり?と優雅は少々驚き、尋ねた。

「ふたり……ですか?」

「ああ。準決勝と言ったろう?

 もう一人とは雅斐さんの決勝の相手だ。きみもよく知っているはずだが?」

 そういわれ優雅は顎に手を当て少し考えたがすぐに、あ!と思い出したように霧島先生の顔を見る。

「そうだ。雅斐さんの決勝の相手はきみの母親、優菜さんだ」

 ははは、まぁ考えてみればすぐわかることだ。親父がいるのにその場に母さんがいないのはおかしいからな。と優雅は呆れ笑いで納得した。

「決勝戦は凄まじかった。私は到底この二人を超えることは無理だろうと悟った。

 そして大会が終わった後、私は雅斐さんの下を訪ねた。そこできみのことを聞くことになるのだが……」

 ここで突然霧島先生の言葉が止まる。

 優雅は何かあったのかというような疑問符を浮かべる。

「雅斐さんはきみの話を出すとき私に何と言ったと思う?」

 そう聞かれたが、さすがにあの親父の考える言葉まではわかるはずもなかったため、無言で応答した。

「私はそのとき雅斐さんに自分の力を褒められた。しかしその後こう言ったのだよ。

 おれの息子といい勝負だ。と」

 ……はぁ?と優雅は思わず声を漏らす。

「いやさすがにそれはないでしょう。そのころのおれはまだ十歳かそこらですよ?

 いくらなんでも言い過ぎですよ」

 優雅は慌てて否定した。それはそうだろう。誰もがそう思うはずだ。優雅自身もそう思っているのだから。

「だろうな。だがそのころの私はきみの正確な年齢を知らなかったため多少、年の差があっても雅斐さんと優菜さんの息子なら十分あり得るだろうと思った。

 そして私はきみをどうしても見てみたくなった。

 あの最強コンビと言われた二人の息子に」

「え?じゃあおれを見るために霧島先生は忍学の教員になったんですか?」

「その通りだ。幸いこの学園の近くに住んでいるということは確認が取れたからな。

 すでにいるなら、もしくは入学するならここだろうと中央学園の教員となった。

 そしてここへ来た年は雅斐さんの妹である瑞希君がいた。

 彼女は学園トップでね、私も何度か相手をしたことがある。そして私は瑞希君にきみのことを尋ね、そこでようやくきみの年齢を知ることができた。

 確かにその時は驚愕したものだ。まさか十歳の子供と同等と言われたとは思ってもみなかったからな。はっはっは」

 優雅は苦笑いをする。

 当然だ。いくらなんでも言い過ぎだろう。

「だがいまさらSNBへ戻りまた来るのも面倒だったからな。私はきみを待つことにした。

 しかし六年後、きみは入学してこなかった。まさかと思いほかの学園も調べたが、きみはいなかった。そしてその年、残念で仕方なかった私の下へ瑞希君から連絡が入った。

 きみを編入させてほしいとな」

 なるほど。瑞希さんが言っていた知り合いの先生とは霧島先生だったのか。と優雅は遅まきながらも納得した。

「しかし……まさか一般の高校へ通っているとは思わなかったぞ」

「ははは、すいません」

優雅は笑いながら軽く謝罪した。

「まぁいい。きみが来た理由は瑞希君から多少聞いている。私もあの二人が揃って同時に死んだとは思いたくはない。が、連絡してこない以上、任務失敗は事実だ。

それをふまえてきみの納得いくまで調べてみるといい」

「はい。ありがとうございます」

 本来、SNBによる任務について調べることができるのは同じくSNBのものだけだ。

 しかし、現最強コンビと言われていた二人が失敗した任務だ。SNBといえども容易に手出しできなくなってしまったのである。

 優雅は独自で調べることを見逃してくれた霧島先生に素直にお礼を言った。


「ところで話は変わるが相沢、きみは先ほどの実技訓練で風遁忍術を使ったそうだな?」

「へ?あ!す、すみません!受けるだけと言われていたのに。女子があまりにもお願いしてくるもので。 でもちゃんと加減はしましたから」

 優雅はあわてて謝った。しかし霧島先生は別にそんなことを聞いているのではなかった。

「いや、そんなことはどうでもいいさ。それより私はきみの動きを見て、私と同じ雷遁忍術を使うと思っていたのだが?」

 あっやっぱり霧島先生も一緒でしたか、と思いつつ、これは優雅も確信していたことだった。

 なぜ確信していたのか。それは霧島先生が使った体術にあった。


 本来、体術には内気を使うのだが、それだけではまずあの驚異的スピードで戦うことはできない。あれは雷遁忍術によって外気を微力な電気へと変え、自信の身体に内気と合わせるように流すことによって細胞を活性化させているからこそ出せるスピードなのだ。

 だからこそ雷遁忍術者以外では瞬間的には匹敵することはできるかもしれないが、常にあの速度で戦闘を行うことは絶対にできない。故にこれが雷遁忍術の使い手が忍術者の間で最強の類と言われている1つだった。もちろんこれだけが理由ではない。

 以前にも話したように忍術者は風、火、水、土といったものに目覚めることがほとんどだ。それらはもっとも身近に存在し、あるいは実際に活用していることからして目覚め安いということだった。そしてそれら以外のものを特殊系忍術と総称している。

 そのなかでも優雅や霧島先生が使う雷遁はもっとも数が少ない忍術だった。

 理由は簡単だ。身近にないから。いや、地域によっては雷の発生頻度が高いところもあるが、たとえそうであっても雷の日に好んで外を出歩く人間は普通いない。せいぜい危ないからと室内から眺める程度であろう。間違っても基本忍術である4つと同じように触ってみたいなどと思うものはいない。風や火を触るというのはおかしいかもしれないが感覚的に感じることはできるので問題ないだろう。

 他にも特殊系には音や木といったものがある。これは一見身近なものでは?と思うかもしれない。確かにそうだが、これには基本の4つとは大きな違いがある。

 火や水は料理をする際、あるいは喉を潤す際に皆が意識して自然に使うものである。

 対して音や木は専門、音楽家や大工といった者以外で興味を示すものはあまりいない。それゆえ趣味として音楽や木材を活用しているものに目覚め安いが、やはり火や水に比べて皆が意識しているものではないだろう。

 そして雷遁はそういった可能性がまずないことからもっとも数が少ないとされている。

 では雷遁忍術者はどのようにして目覚めるかというと、優雅の場合は身近に雷遁忍術を使う父親がいたのが理由の一つだ。

 もちろん身近にあるだけで使えるようになるものではないが優雅の場合目覚めてしまったのだから仕方がない。

 一方、父親や霧島先生が目覚めることができた理由は雷を強く望んだからだろう。

 これももちろんそんなことで使えるようになるものではないが、何かきっかけさえあれば可能性はある。

 父親の場合あえて落雷が危険視される日に目覚めようと努力したらしい。

 そしてウソかホントかそんな時落雷の一つが父親に落ちたというのだ。それによって目覚めたとかなんとかいっていた。……まぁ普通は奇跡でも起きない限り死ぬので、この場合奇跡が起きたと考えるしかないだろう。自らが雷遁に目覚め、耐性がつくことにより命を落とすことがなかったのだと。

 そんなことから雷遁忍術に目覚めるのは並大抵ではないということで、奇跡的に目覚めたものは大抵が相当名のあるの忍術者となることもあり最強の類と言われている。

 優雅はそんな最強などということは聞いていなかったので自分が最強だとは思っていないのであった。


「はい。おれは雷遁がメインです」

 と答えた。

「……つまりきみは二つの忍術を使えるのか?」

 霧島先生は少々驚いた様子で優雅に問う。

「はい。風遁は瑞希さんに教えてもらいました。あ、でも正確には三つですね。

 水遁も使えます。これは母親に習いました」

 またしても霧島先生は驚いた表情をする。

「……ちなみにどの程度使える?忍術は本来、最初に自然と身に着いたもの以外、覚えるのは困難だ。たとえ出来てもオリジナルに比べて精度は落ちるはずだ」

「はい、もちろんその通りです。ですがおれの場合、雷遁と水遁はほぼ同時に身に付きました。ですのでこの二つはそれほど大差はありません。

 問題は風遁ですが、これは忍学を卒業した瑞希さんが家へ顔を出すようになって教わったものなので、二つに比べて、精度は若干落ちます。ただあえて精度の落ちる風遁を普段からメインとして使うことでカバーできるようになりました。三年かかりましたけど」

 はははと優雅は笑う。しかし霧島先生は今度こそ驚愕していた。

「……相沢、きみはいつ忍術に目覚めた?」

「ええと、たしか六つの時だったと思いますけど。親父に自分の忍術見せられて試しにやってみろって言われて……」

「……恐ろしいな」

「そう……なんですか?ちなみに平均どのくらいで目覚めるものなんでしょう?」

 優雅は両親と瑞希以外の忍術者との交流などなかったのでいまいちそういった知識には疎かった。知っていることといえば忍術者との戦闘技術。あるいは忍術の系統や相性などであって、そのほかのことなど両親は教えてくれることはなかった。というより、必要ないだろ?だそうだ。

「十二だ。早いものでも十くらいだ。一桁なんぞまずいないだろう。

 少なくとも私は知らんな」

 ……ははは。と優雅は笑うしかなかった。


「あの霧島先生、おれからも一ついいですか?」

「なんだ?」

 優雅は先ほどの霧島先生との一戦で疑問に思っていたことを聞いた。

「霧島先生とやりあう前、おれ怖い顔してました?」

「ははは、あぁ、もちろんだとも。きみはあの時、笑みを浮かべたろう?

 君ほどの実力者のものが戦闘前に笑みを見せるほど怖いものはないさ。違うかな?」

 優雅はそれを聞いて、あぁ確かに!と納得した。

 そういや親父とやるときも、意味わからず二ヤついた時ほど面倒なことはなかったなぁ、と思い出していた。


「さて、きみをここへ呼んだのは今の話をするためでもあるが…。

 もう一つある」

「もう一つ?」

「ああ。先ほどの会話はあくまで私の個人的なものだからな。

 もう一つというのは、知っての通り、この学園には任務が存在する。

 たとえきみがなにかしらの目的があるにしてもここへ編入してきたからには当然任務についてもらはねばならん」

「はい」

 まぁ当然だろう。父親について調べるという目的はあくまで優雅個人の理由に過ぎない。

 当然、学園には何の関係もないことだ。

「うむ、でだ。今日の夕刻から早速任務についてもらいたい」

「えっ?今日ですか?まだ初日ですけど?」

「きみなら問題ないだろう?」

 確かに問題はない、がとりあえず今日は学園についていろいろ情報を集めようと思っていたのだが。と優雅はため息交じりの表情で霧島先生が取り出した書類を手に取る。

「それからきみと共に二人ほど同行してもらう。いや実際はきみが同行する側だがな」

「わかりました。それで任務内容は?」

「それはもう少し待て。先ほど同行するものから連絡があってな。

 そろそろ任務から帰還してくるはずだ」

 優雅はそうですか。と言いかけたが、同じくして入口の扉が勢いよく開かれ同時に霧島先生!と叫ぶ女子生徒の声が耳に響き渡った。

 そして声の主であろう女子生徒と、その後ろからもう一人の女子生徒がこちらの方へ歩み寄ってきた。

「任務ご苦労。少々時間がかかったな」

 霧島先生が女子生徒二人にねぎらいの言葉をかけるが大声の主である女子生徒が、それが聞いてくださいよ!と再び大声を発する。

「確かに出発前に見た猫ちゃんの写真はそれはもうかわいかったですよ!

 だ・け・ど!脱走中に何を食べたのかその猫ちゃんはとんでもない姿に変貌してるじゃないですか!おかげで探すのに苦労するは、唯一面影のある猫ちゃんとは到底思えない思えない生き物を飼い主の下へ届けたら、こんな生き物と家のマリアンヌちゃんを一緒にしないでちょうだい!って怒鳴られるはで。

 それで頭にきて、だったらDNA鑑定でもしてくださいっ!て言ったらその生き物本当に探してた猫ちゃんだったんですよ!」

 優雅は霧島先生に対してまるでマシンガンのように愚痴を言う女子生徒をただ呆然と見ていた。後ろの女子生徒はガクッと頭を落とし額に手を当てやれやれといった感じだ。

「そうか、それは災難だったな」

 霧島先生のその一言でその女子生徒は、はぁ~ほんとですよ。といってようやく静かになった。どうやらこの女子生徒は猫に対してなにかしらの執着があるようだ。

「ところで帰還して早々悪いがお前たちには夕刻から別の任務についてもらいたい」

「ええ~。私いま結構落ち込んでるんですけどぉ」

「優、文句を言うものじゃない。私たちの帰還が遅かったのが悪い」

「だって雅~」

「ちなみに依頼主は九峰院のお嬢様だ」

「え?行きます行きます!ってか行かせてください」

 帰還早々で任務に行きたくなさそうだった女子生徒が、霧島先生が告げた依頼主の名前を聞いた瞬間、180度意見を変えた。 

「そうか。では任務の詳細を伝える。がその前に、彼もお前たちに同行してもらうが構わないな?」

 霧島先生がそういうと、女子生徒が揃って優雅の方を見る。

「あれ?この子いつからいたの?ってかかわいい!女の子みたい!」

 最初からその場にいた優雅に対していきなり失礼なことを瞳を輝かせながら口にする女子生徒。そしてそれを後ろから再びやれやれといった感じで見つめる女子生徒を優雅はなにこれ?といった表情で見ている。

 そしてようやく後ろの女子生徒が優雅に対して声をかけながら一人あり得ないほどテンションの上がった女子生徒の頭をひっぱたいた。

「すまない。うちの姉はかわいいものに目がなくてな。気を悪くしたなら謝る」

「いや、気にしてないよ」

「痛いよ、みやび~」

「うるさい。初対面の方に失礼なことを言った優が悪い」

「ごめんなさい。うう」

 かなり痛そうだな、と優雅は頭を抱えてうずくまった女子生徒をみている。

「気にしないでくれ。いつものことだ。 私は遠山雅とおやまみやび

 こっちは姉のゆう。見ての通り双子だ。きみは?」

 なるほど、確かに似ている。というより瓜二つだ。それもかなりの美少女。

 性格はあまり似ていないようだが、姉の方は整った顔立ちに肩下まで伸びたオレンジ色の鮮やかな髪で、みれば一目瞭然の見事なスタイルをしている。服装は若干派手な気がするが動きやすそうではある。

 そして妹の方もまったく同じ顔立ち、スタイルだ。違うところと言えば、妹は下ろせば腰のあたりまで届きそうな黒髪をポニテしていることと、姉と違い清楚な感じではあるがこちらも動くには問題ないだろう服装だ、ということくらいだろう。

「相沢優雅だ。今日から二年のAクラスに編入してきた。よろしくな」

「え?Aクラス?きゃぁ!私たちと一緒じゃん!これからよろしくね!」

「あ、ああ」

 それまでうずくまっていた優が突如起き上がり、優雅の手を取ってぶんぶんと上下させる。

「あれ?でも今日来たばっかで私たちと一緒の任務?大丈夫?」

 優が優雅に問いかけるがその答えは霧島先生が答えた。

「問題ない、彼の力は確認済みだ。

 相沢、彼女たちはきみのクラスの第一位と二位であり、学年第三位と四位でもある」

 は?Aクラスなのに学年三位と四位?とやや疑問に思ったがその答えはすぐに霧島先生から返ってくる。

「彼女たちは特殊でな。自ら望んでAクラスに残っている」

「いえ、先生。私は優に巻き込まれただけですから」

「ええ~雅ひどいぃ。私らほとんど行動するの一緒なんだから同じクラスのがいいじゃん。それにSクラスはいると猫ちゃん捜索任務にいけなくなっちゃうし」

 いやいや、そんな理由でAクラスに残っているのか、と優雅は思ったが口には出さない。

「それで先生、今回の任務というのは?」

 雅が霧島先生に尋ねる。

「うむ。今回の任務のランクはAだ。依頼主は九峰院財閥のご令嬢であり、現在の社長だ。

 依頼内容は明日、明後日の二日間の護衛だ。詳しい日程は本人から聞いてくれ。

 それから、夕刻にここから一番近い駅に迎えをよこしてくれるそうだ。

 なにか質問は?」

 「「「いえ、ありません」」」

 三人とも声をそろえて返事をする。

「では、相沢は一度教室へ戻り、このことを桜井先生に伝えてきなさい。

 それから二人は少し残ってくれ」

「わかりました、失礼します」

 優雅は軽くお辞儀をして教室へと向かった。

「お前たち、聞きたいことがあるのではないか?」

 優雅が部屋から出た後で霧島先生は残った二人へ問いかける。

 それに答えたのは雅だ。

「一点だけ。彼は本当に大丈夫なんですか?

見たところそこまで腕が立つようには見えません。

Aランク任務は私たち二年生にとって二番目に高い難度です。

いくらAクラスとはいえ編入初日ですよ?」

 雅の意見はもっともだ。任務には特SランクからDランクまであるが、ここでは二年生のみにSランク以上の任務を命じることはなかった。つまりAランク任務は彼女たちにとって特Aランクの次に高い難度である。そんな任務に編入初日の実力も見ていないものを連れて行かなければならないのだ。

「うむ。もっともだ。だが先ほども言ったように力は確認済みだ。

 彼はお前たちと同じクラスの水谷を一瞬で倒した。

 そしてその後、私とも互角にやりあったぞ?」

「あはは、先生でも冗談ゆうんだね。

 先生と互角だったら、私ら二年生どころか三年生の一位にだって負けないってことですよ?この学園の最強は霧島先生なんですから」

「優の言うとおりです。そんな二年生がいるはずありません」

「別に冗談で言ったわけではないんだがな。それどころか彼は私より遥かに上だと私は観ているくらいだ。まぁ今はどうやら本調子ではないようだがな。

 話はそれだけだな?ならばお前らも教室へ戻り、相沢と合流したのち任務へ向かえ」

 雅はまだ何か言いたそうだったが、優が、はぁい、と霧島先生に返事をして部屋を出て行ったのでやむなく雅も部屋を後にした。



 教室へ戻ってきた優雅は、教員棟でのいきさつを桜井先生に説明し終えたところで、遅れてやってきた遠山姉妹、優の方に呼ばれ任務に向かうため教室を出ようとしたところだった。しかしそこで不意に教室内から、相沢優雅!と叫ぶ声が聞こえ振り返ると一人の男子生徒が優雅の前へと歩み寄ってきた。その男子生徒とは水谷だ。

「遠山姉妹と任務へ行くそうだな?」

「ああ」

 優雅はどうせ、お前程度のやつが。というようなことを言われるのかと思った。

 しかし以外にも水谷の言葉は優雅を認めるものだった。

「そうか。まぁお前なら問題ないだろうな。

 認めるよ。これでもAクラスの第四位だ。実際に相手をして実力の違いが分からないほど自惚れてはいない。だが負けっぱなしにするつもりもない。

 正直言ってお前がどの程度上にいるのかは今のおれにはわからないが、すぐにとは言わん。卒業までに必ず追いついて見せる。その時は、もう一度相手をしてもらいたい」

 優雅は水谷の変わりように驚いていた。正直ここまで素直なやつだとは思っていなかった。そして優雅は水谷にこう答えた。

「ああ、楽しみにしている。

 その時は卒業前のイベントとして盛大にやろう、水谷」

 優雅の返事に水谷は盛大に笑ってから言った。

しんだ。これからはそう呼んでくれ。おれの名だ」

「わかった、心。おれのことも優雅でいい」

「ああ、では優雅、お前の初任務だ。健闘を祈ってる」

 そういうと心は自分の席へと戻っていった。


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