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神出鬼没

「やっぱりいないですかね…。」


朝、まだ肌寒い時間に家を出て、走って屋上に向かい待機しました。しかし考えてみれば、一番高いとはいえ5%の確率です。東雲さんはやはり女性らしく、冷える季節には外にいらっしゃらないのでは?


「はぁ…寒い…。」


朝起きると孝介から、寒いから無理しないで探してね!という念押しメールが来ていたので、できる事なら今日中に…と思ったのですが、やはりいないようです。

そろそろ朝のホームルームが始まってしまいますから、戻らなければなりません。


「あ、そこ使いたいからドア開けといてくれないかな?」


外に出て入り口に施錠しようとすると、そこに見知らぬ男性が立っていました。


「了解です。鍵はお持ちですか?」

「うん。」


指先に掛けたキーリングをかざして見せる男性。あれが屋上の鍵ですね。

きっとサボろうとしているのでしょう。制服が着崩れているので、先輩だと思います。ちゃんと施錠して頂けるなら問題はありません。




…あれ?どうして屋上の鍵がいくつもあるのでしょう。確か私が持っている鍵が唯一の正式な鍵であったように記憶しているのですが…


ちょっと待って下さい。東雲さんがもし屋上で目撃されているなら、その都度鍵も貸し出しされている筈です。


しかし私が鍵を借りた時に見た貸出名簿には、東雲さんの名前はありませんでした。(東雲ファンクラブ名義はありましたが。)

東雲さんは無断で借りている?いや、私が借りに行った時にあったし、逐一職員の方が確認するのであり得ません。

また、よじ登って入れるような柵の高さではありません。



ではつまり。合鍵を持っているという事では?


そしてさっき入って行った男性。鍵らしき物を持っていました。一つしか無いのに。


東雲さんは……東雲君なんですね!すなわち先ほどの人物は東雲君です!




大急ぎでドアを開けて東雲君捕獲に動こうとしました。

過去形なのは失敗したからです。東雲君は、屋上の鍵を閉めて、しかも何かやりました。全くわからないのですが、こちらからは鍵を使っても開けられないのです。


「東雲君!東雲君ですよね!ちょっとお話があるんですけど!」


ドアを叩きながら叫びます。ああ、もうホームルームが始まってしまいます。入学早々問題ばかり起こしていられません。


「東雲くーん!!」

「ああ、ファンクラブの仔猫ちゃんかい?ごめんね、相手してあげたいんだけど今はちょっと休ませてくれるかい?」


ドアの向こうから気持ち悪い声が帰って来ました。仔猫ちゃん…。しかし、ここが頑張りどころです!


「違います!生徒会でお願いがあって!」

「あーん…?なんやそっちかー。生徒会なんて入りたないって言うたのに、あのおっちゃん全っ然聞いてくれへんねん。せやから俺には関係ないっちゅー事で。あー上辺取り繕って損したわー!」


生徒会を話に出すと、がらっと声の雰囲気が変わりました。あれで取り繕っていたつもりでしょうか。気持ち悪…いやいやこれ以上言うのは失礼なのでやめましょう。


「一緒に校長先生の所に行って欲しいんです!」

「いーやーや。何が楽しくてあんなオッちゃんの顔見に行かなあかんねん!あんた大体誰や?」

「裏生徒会の会長やってます空井遊と申します!少し付き合って貰うのもダメですか…?」

「だからいややって。あ、あんたあの食えないオッちゃんに俺を追えって言われたクチか。俺もそない分かりやすい動きなんかしてへんのによく見つけたな。はぁ偉い偉い。っちゅー事で、そろそろホームルーム行かんでええのか?」


言われて気づくと、階下から聞こえていた話し声がすっかり消え失せています。マズい、もう時間です。折角東雲君を見つけたと言うのに!

でももう担任の先生に目をつけられるような事は出来ません。ただでさえ入学式、オリエンテーションとサボってしまっているのですから。


「また絶対お会いしますから!」

「おぅおぅ、何や素敵な告白やなー。ええで、いつでも待ってるでー。ほなな!」


東雲君はホームルームに出ないのでしょうか?さすが内部進学のブルジョワは一味違うと実感致しました。

庶民の私はきちんとクラスに出なければ、特待取り消し処分になるかもしれないというのに…。少し遠い目になってしまいます。








今日の授業は殆ど先生方の自己紹介で終わりました。特待クラスはなかなか皆さん真面目で、仲良くなれそうです。嬉しいことに、休み時間に隣の女の子が声を掛けてくれました。


「空井さんはどうしてここに入学したのかしら?」


草壁に入ろうとしたら寮費を払い忘れて落とされちゃったのが事実ですが、落ちたから聖クラウディアに来たなんて言ったら気分を害してしまうかもしれません。


「友人が勧めてくれたので。えぇと…」

「私は桐生真由。マユとお呼びになって?」

「はい。じゃあ私も遊と呼んでください。まゆさんはどうしてここに?」

「それは勿論生徒会の方々の為よ!特に華頂様!この世の物とも思えぬ麗しい姿っ…!私がこの学年の華頂様のファンクラブリーダーとなってあの方をお支えするのよ!」


何やら華頂とかファンクラブとか空耳めいたものが聞こえた気がします。幻聴でしょうか?


「…華頂?」

「ほら、入学式のスピーチをなさった方よ。本来なら次席としてこのクラスに在籍する筈でしたのに、どなたかの為にお譲りになったんだとか聞きましたわ。」


折角受験し直してこのクラスに入りましたのに…と首を振るまゆさん。

光貴はこのクラスの予定だったとは。今会ったらそっと忍び寄って致命傷負わせる位はしかねないので他クラスで良かったです。…え、次点!?


「待って下さい、華頂光貴ですか?あの光輝いちゃってる痛々しい人?」

「失礼ね?確かに光輝いてかつ高貴でいらっしゃいますけども。そうね、名が体を表すというのはああいったお方の事を指すのですわ。」

「ああ、そうですか…。」


逐一単語のスペルだの計算問題だのとくだらない事で私に質問しに来ていた光貴が、まさか次席!?という事は私よりも頭が良いということで…騙されました。

あんな痛々しい人に負けたんですね。負けるのは別に構わないけどせめてあんな人間じゃなくても良いのに!


「分かりましたわ!遊さんもあの完璧な現人神に悔しさを覚えているのですね。大丈夫、まだファンクラブの副リーダーの座は空いていましてよ!」

「ははは、えぇ悔しいですね。何もかも負けてて。」

「そういう事だと思いましたの!はい、会員証。」


手渡されたのは会員証と書かれたカードでした。

裏を見ると、恐ろしい程に細々と規約が書いてあります。

一つ、華頂様のお邪魔はしない。

一つ、華頂様のご意見を尊重する。

一つ、華頂様に愛を捧げ他の方を見てはいけない。

一つ、…


見ていくと、会員番号が上の者に逆らってはいけないなんていうのもあります。怖い!あれ、私まゆさんに従わなくてはならないんですね…別に構いませんが。多分メンバーは私とまゆさんだけでしょうし。


「会員No.が4桁ありますね。」


私は2番ですが、その横に3つの0が並んでいるのです。千人規模のファンクラブを作るのですか。一学年500人程だったと記憶しているのですが。


「えぇ、他校の方もいらっしゃいますのよ?入れなかったら可哀相でしょう?」

「なるほど。頑張ってくださいね!」

「あら、副リーダーが逃げるなんて許さなくってよ?一緒に華頂様の素晴らしさを布教するのよ!」

「え!」

「と言っても貴方は根回しも何もないのだから、これだけ渡しておくわ。10名分のカードね。」

「は、はぃ。」

「恐らく今の時期はファンクラブが乱立しているわ。公式争いよ!」


目の中に炎が見えます。ごっこ遊びのつもりが何やら新設ファンクラブの覇権争いに巻き込まれたようです。100〜110番のカードを持ちながら、少し途方にくれました。

東雲は男だってようやく気づいたみたいです。随分前に田中が言ってたのに…。


さくさく登場していきます。

新しい人が現れるたびに主人公のヘタレっぷりが際立っていて可哀相なような。

早く活躍の場を書こうと思います!



追記・信じられない失態を犯しました。メインの華頂君の名前の漢字を間違えるという(笑)

ぶっちゃけ凡人に似合わないなら何でも良かったんです…。よく忘れてしまう。

興毅とか幸希とかなら普通なのに敢えて光貴。みつきと読めば普通かも?と思いつつ、キラキラネームの難しさに悩んでいます。

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