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怪誕不経


「もうだめ…ご…ご…食べよう…。お金貸して、ご飯買ってくる…。」


結局孝介を人前では加賀君と呼べという為だけに呼び出された私の胃袋は、悲壮感溢れる様子でエネルギー切れを伝えて来ました。


「ああ、すまない、失念していた。ほら、サンドイッチ買っておいたからこれ食べろ。」

「そーだ俺も忘れてたわ!東雲、どうなった?」


太郎君から渡されたサンドイッチをありがたく押し戴いて会長席に座り、必死に食べている所に、孝介が話しかけて来ました。待って!


(おい、今しなくてもいいだろう。)

(え?だって見込み有るんしょ?)

(どうだかな。会長としての、ある意味初仕事だぞ?東雲なんかに関わって失敗に終わった思い出なんか残したくないだろう。)

(やっぱ無理っぽいのかー。あーあ。)


小声で何やらヒソヒソと話していますが、良く聞こえません、多分東雲君についての報告をすればいいのでしょうね。


「今日東雲君とお会いしました。」

「「えぇ!」」

「ちょい待て、遊ちゃん、どんな奴だった?」

「どんな奴って、知ってるんじゃないの?見た目は素敵な人だよ。『僕の子猫ちゃん』とか何とか最初言ってたんだけど、すぐ関西弁みたいな言葉に替わってたなぁ。うー、思い出したらちょっと照れる。」

「それは…東雲だ。間違いない。」

「え、照れる?さぶいぼ立つの間違いだろ。あいつ本当見境ねぇ。ってかよく遊ちゃんが女って気づいたな。」

「ああ、それは確かに。さっき孝介に引きずられていた時も一部の人間が禁断の愛がどうのとか言ってたしな。」


禁断の…?……!男同士だと思われたんですね!?


「失礼な!…やっぱりスカート履いた方がいいのかな?もう少し暖かくなったらスカートにしよう…。」

「いや、俺はそのままの遊ちゃんが好きだよ?」

「そう?じゃあ別にこのままでいいね。」

「え、告白スルー!?」

「俺もスカートを履かれると悪い奴(女装系の)が来そうで不安だ。」

「え…そう…?」

「なんで遊ちゃん照れてんの!俺にもっと愛をって言ってるよね!太郎も、俺に被せて美味しいとこ持ってくな!」

「好い加減黙ったらどうだ。」

「お前が言うか!」

「東雲はどうだったんだ?」


脱線しかけた話を引き戻す太郎君。孝介捌きが鮮やかです。


「実は朝のホームルームの時間が迫ってたから、追い詰められなかったんだよね。でも屋上にたまに来る事は分かったよ。合鍵持ってたから。」

「合鍵!?あいつはとことん自分の好きなようにやりやがる。念の為に、屋上の鍵は付け替え申請出しておこう。」

「あ、もう少し放置して。来た所捕まえたいの。」

「うーん。ちょっと防犯的にはNGかな。目撃されたら一週間中には来ないだろうし。東雲が鍵捨てたりしたらアウトだからさ。」

「学校の鍵なのに気軽に捨てたりなんてしないでしょ?」

「ところがどっこい捨てちまうのが東雲なんだなー。むしろ学校のだから余計に。」

「せや、俺ん家やあらへんしなー。」

「!!!」


東雲君がまさかの登場です。音も気配もありませんでした。しかし孝介は気づいていたようです。自然な口調で話しかけます。


「なあ東雲、なんで遊ちゃん女だって分かった?」

「孝介、馬鹿、最初に聞く事はそれか!」

「こんな可愛い子、分からんかったら男失格やで?」


やっぱり私が男になんて見える訳ありません。良かった。隣で静かに落ち込む太郎君は見えないふりです。


「後、鍵。返せ、面倒だから。」

「ん、返す返す。付け替えられたら処理に困るわ。」

「よし。帰れ。」

「ははっ、帰ってええの?」


太郎君は心底東雲君が嫌いなようです。が、用事はまだ済んでいません。


「駄目です。裏の人呼ぶか、校長の所に行きましょう。」

「会長ちゃん、俺は嫌やって一回言うたやろ?あー、でも。」


一度言葉を区切ってあたりを見回す東雲君。


「この生徒会の漫才めっちゃオモロかったで。またまぜてくれるっちゅうんなら裏の奴指名しといたる。」

「この部屋に来る事は許す。だが歓迎はしない。」

「はーっ、太郎ちゃんお堅いな!そこはてけとーに頷いとこうや?まぁええ、優也でどうや?」

「苗字は?」

「えー…忘れた。ホラ、見てくれ嫌味な奴で、あとチャラくて。ほんで女好きで…。」

「それはお前の事だろう!」


太郎君のツッコミに、確かに!と思って頷いてしまったら、東雲君が嫌そうな顔で首を振りました。


「ちゃうちゃう、阿呆言いなさんな。優也程ウザい奴世界におらんでホンマ。」

「本人の了解は取りましたか?」

「要るのん?そんなん。」


一瞬東雲君に光貴の面影が重なり、殴りかかりそうになりました。太郎君がこちらを見て頷いています。


「いるに決まってんだろ?こんな泥臭い仕事押し付けられたら寿命が10年は縮まるぞ!?」


孝介のまさかの言葉に仰天です。10年?ですと?


「聞いてないよ!」

「遊ちゃんは俺がフォローするから大丈夫!」

「分かった!ありがとう!」

「はは、大丈夫や。あんたらみたいに面白い人間がいるとこなら優也は呼ばんでも来るで。あんなんでも優秀やからその辺も大丈夫。さて、とー。じゃあね、僕の子猫ちゃん?また会おうね?」



いきなり表生徒会の仮面をつけて囁いてきます。ああ、さぶいぼの意味が良く分かりました。ビジュアルと声で攻められると、中身はどうあれちょっとクるものがあります。美形とは恐ろしい武器ですね。

2人とも顔に「うわぁ引くわ…」と書いてありました。


怪誕不経かいたんふけい

意 味:言動がでたらめで、あやしくて信用できない。筋道が通らず根拠がないこと




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