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宇宙の卵(ソラノタマゴ)  作者: しゃくとりむし
第四章戦いの終わり
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エピローグ 鳥達は飛ぶ

 今日はゲンとゴフレードの死んだ日。宇宙船をこの手で殺した日。そして、今の宇宙船が生まれた日だ。私はあの時、船長としてはあまりに未熟だった。あの時と同じ失敗をしないために、ゲンとゴフレードのために今日は祈ろう。

「早く準備しなよ、ラノミナ。船長が待っている」

「もう! まだ準備が終わって無いからちょっと待って!」

 ラノミナはすっかり元気になった。セノアーの忍耐強い介抱があったお陰だ。時々、寂しい顔をしていることがあるが、それもいつしか消えるだろう。


 ゲンの使っていた道場らしき空間。そこを私達は墓地に改造した。ゴフレードに教えてもらったイメージで作ってみたが、これで良かったのだろうか。もし、形や埋葬の仕方が間違っていても、弔う気持ちが込められているならばそれで良いのだろうが。

「リィリス船長~ やっと来ましたね。遅いですよ」

 ミュエネは相変わらず優しい。あれだけ酷いことがあったのに、皆立ち直れたのはミュエネのお陰だ。一時期、ナタークがご執心だったが、柔らかい言葉で手厳しく拒絶しているのを何度も見たので、おそらくは振ったのだろう。

 そのナタークは…

「やめて! 止めてくれよ! 髪が痛い! 痛いから」

 コリュがナタークの髪の毛を弄ろうと触る。振り払うと一秒くらいは止めるが、すぐに手を伸ばす。

「ふふっ。コリュちゃんが懐いちゃったみたいですね。いいのですか? コリュを盗られてしまって」

「駄目っ。なんであんなへなちょこに懐くのよっ! 私もくしゃくしゃする!」

 リィリスは駆け出す。ナタークの髪をぐしゃぐしゃにしてやる。二人だけで楽しそうにするなんて許せない。コリュとは私が遊ぶんだから。

「船長は子供だなぁ」

 セノアーが呆れて呟く。その声を聞き逃しはしなかった。

「だれが子供だってっ!」


 ゴフレードとゲンの死体は見つからなかった。だから、ゲンの方は部屋に残されていた木刀、ゴフレードの方はラノミナが貰っていた前の宇宙船のネームプレート、を墓標の下に入れた。

 全員集まって手を合わせる。ピンクのユニコーンはもういない。コアニーも一緒に居なくなった。データの断片からコリュが作り直そうと試みたが、駄目だったらしい。コリュはまだ諦めていないそうだ。人工子宮の制御プログラムをコリュが作ったから、来年くらいには新メンバーが完成するかもしれない。メンテナンス装置が復旧するまで、人はいくらいても居すぎることは無い。

「さあ、行こうっ!」

 墓標を背にして叫ぶ。後ろばかり見ていられない。私達は、自分の足で立つのに忙しいのだから。


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