影
暗闇の中で輪郭だけが感じとれた。
「誰だ!」
ゴフレードは短くそう声を発した。ラノミナ…?だろうか。
影は揺らめくように動くと瞬く間に間合いを詰めた。暗闇の中で、そいつと目が会う。
ラノミナじゃ…無い。知らない奴だ。
そう考えた瞬間、ゴフレードの腕が火花を散らして床に落ちた。
「な、何が起きてる…?!」
影は振り上げるような動作から、腕を一気に振り下ろした。ゴフレードは反射的に避け、床に倒れ込んだ。
目の前には切り落とされた腕、そこに脚の付いた気味の悪い機械が群がっていた。
「避けたか。次は仕留める」
頭上から、そんな声が聞こえた。中性的な人間味の無い声だった。ゴフレードは必死に起き上り、逃げようとした。
「まるで、人間のようだな」
胸から、刀のようなものの切っ先が飛び出ていた。わからない。何をされているのか。確かなのは、襲われているということだ。動く部位を、全力で動かしながら逃れようと試みた。
「助けてくれっ!… そ、そうだ。ゲン、ラノミナ、コリュ達は! うぐっ」
思い浮かぶのは人間の顔だった。機能を維持できなくなった身体は、次々に自分の制御下を離れて、只の”モノ”へと化していく。
傷ついた電子脳は最後の思考を巡らせて機能を止めた。
そこにはゴフレードの姿は無かった。黒い蟲のような機械の群れが、異物を排除するために密集しているだけだった。
オフィスで自分の前任者のつくった資料を見ていたら、「何が***(仕事の名前)だ!バカヤロー!」と書かれた付箋が出てきた。更に調べてみると、ボールペンで意味不明に狂気を感じるくらいに書きなぐった紙が数枚でてきた。僕はその前任者を良く知っている。穏やかな優しいおっさんで、色々お世話になった人だ。辞めちゃったけど。
苦しさや憤りがその紙から滲みでていて、心の底から泣けてきた。世界は常に腐っている。魔法の弾丸は存在しない。それでも日々を生きていかなきゃならない。
愚痴るのは、このくらいにしよう。こんなの後書きじゃないし、ここは呟く場所でもないからね。。それにしても、僕の勤めている会社はブラックなのかな?