ハイイロタマゴ 8
別に一人でも大丈夫。もし、この宇宙船に乗っているのが私だけでも何も問題無い。世界に居るのが私だけでも同じこと。寂しいなんて感じたことなんて無かった。私はこの宇宙を一人だけで進んでいける。 ~ コリュ・シェアシエ ~
今日も一晩中、「都市成長モデル」のシミュレーションプログラムを組んで遊んでしまった。人間の消費行動等の変数を変化させるとこれが面白いのだ。
「あ~。眠い。。ううっ。」
このまま机の上で寝ちゃいそうだ。でも、教育プログラムの「コアニー」が起しに来るんだろうな。薄ぼんやりと目を少しだけ開いてみる。
「コアニー。嫌い。」
不快だ。人の生活に干渉しないで欲しいな。私には、そんなプログラム必要無いのに。
「消しちゃうか。よしっ。消しちゃおう。」
コリュは、コアニーを消去することにした。
背筋を伸ばし、コードを組む。コアニーのプログラム自体は既に調査済みだ。
「いけっ。消去。」
これで消去できるはずだ。安心安心。
寝息を立ててコリュは眠りについた。。
◇■◇◆
「こらっ!! コリュ! 私を消そうとしたでしょ!」
コリュはけたたましい声で目を覚ました。この声はコアニーの声だ。
「あれ、まだ消えてない?探査できてないバックアップがあったのかな…消去しなきゃ。」
話を聞かず、コリュはプログラムをつくるために端末の電源を入れた。
「くうううううっ。消されてたまるもんですかっ!」
そう、コアニーが叫んだ。そして、部屋中の電源が一瞬で消えた。
こんなことは初めてだった。見るもの全てが真っ暗だ。ただ、非常用の塗料が薄緑の蛍光を発している。いつもと世界が違って見える。なんだか世界に私一人がいるようだ。
コリュはドサリとベットに倒れこんだ。
もし、このままコアニーが電源を付けなかったら?空調もOFFにされているようだし。少しづつ温度が下がるだろう。死ぬのかなぁ。まあ、それはそれでいいかな。
コリュは再びまどろみの世界に堕ちようとしていた。
「誰かっ!!誰かいないのっ!!お願いっ!!返事して~」
ん。誰かの声が聞こえた気がした。ダストボックスからだ。
… そう。 その声が、全ての始まりだったんだ。