侮蔑
ゲンは椅子を振り回し、ゴフレードを近づけまいとする。
ゴフレードは躱しつつ、少しづつ距離を詰める。
「たああああっ」
先に仕掛けたのはゲンだった。大きな木製の椅子を頭上から振り下ろす。
ゴフレードはこの強烈な一撃を避けること無く受け止めた。
ドンっという鈍い音が部屋に響いた。
「嘘やろ… そないなことが」
ゴフレードは気持ちの悪い笑みを浮かべながら、壊れかけた椅子をゲンの手から払い落とした。
防御を失ったゲンに向かって、一歩づつ詰め寄った。
「お前ら人間など所詮はこんなものだ。どんなに上手く道具を振り回しても、できることなど限られている。ははっ! なんと無力だ」
ゲンは部屋の壁に追い詰めれ、逃げ場を求めて、視線を盛んに動かした。
「反則的な強さやな。せやけど、負けるわけにもいかんし、どないしよ」
みんな震えてしまって、ゴフレードに立ち向かう勇気は無いだろう。助けがなければここでゴフレードに殺されてしまうのだろう。
ゲンの脳裏には、最悪の状態ばかりが投影された。
「あかん。あかん。死ぬまでは諦めへんで!」
「威勢だけはいいようだな。絶望するといい。人間であることを恥じろ」
ゴフレードは、ついさっき自分に振り下ろされた椅子を手にとった。
「強度の違いでも確かめてみるか。」
壊れそうなほど、ねじまがった形状になったその椅子を、大きく振り上げた。
「くっ」
振り上げた椅子を、人間ではできない高速で振り下ろす!
バンッ!
!?
ゲンは頭上に木の破片が飛び散るのを感じた。床に落ちたのは大きな木片の塊だった。
思わず頭部を手で撫でて確認する。…傷は 無い。
「勢いが強すぎて木組みが抜けたか。命拾いしたな。まあ、すぐに消すけどな」
ゲンは振り返り椅子の壁を仰ぎ見た。
そこには脆くも崩れ、椅子の一部が突き刺さった壁があった。
「馬鹿力めっ。宇宙船の壁を壊すなんて」
「今度はお前の体にぶつけてやる」
ゴフレードは、新たな椅子を掴むと、ゲンに近づいた。
「もう、終わりやろか」
ゲンはそう呟いた。
「そうだ!!終わりだ!!」
ゴフレードは再び椅子を大きく振り上げた。
!?
「止めて!!!」
ゴフレードの目の前に飛び込んできたのはコリュだった。
コリュは、振り上げた椅子をブロックするように大きく腕を伸ばし、手を広げ、真っ直ぐな目でゴフレードを見つめた。
前回から間が空きすぎてしまった。
何も解決していない。何もかもだ。僕はどうすれば…いい?