受容
コリュとゲンは正体を知っている。他のメンバーは誰も知らない。この2人に受け入れられたからといって他のメンバーに受け入れられるとは限らない。特にラノミナはどんな顔をするのだろう。
ゴフレードは想像してみた。自分が機械であることを告げた時のラノミナを。
どんなに想像しても、なぜか泣く姿しか思いつかなかった。
「… ゴフレード。ゴフレードっ!」
肩を揺すられて我に返った。どうやら物思いに沈みすぎていたようだ。
「ん。すまない。」
ふくれっつらのリィリスの顔がそこにあった。
「ちょっとしっかりしてよっ!」
「それで、なんの話だった?」
ミュエネ、ナターク、セノアー、ミュエネがミュエネの部屋に集まっている。ミュエネはセノアーに何かの相談をされているようで、ずっとゼノアーの話を聴いていた。ナタークと私は、リィリス船長に捕まってしまい、いろいろと餌食になっていたのだ。
「ナタークの講義の話よっ。一度みんなで知識や情報の共有をしたほうがいいと思うのねっ。特に新しいメンバーとしてゴフレードが来たんだし、そういうことやった方がいいと思うのっ」
ナタークは頷いて、話を補足した。
「別にやらなくてもいいんだけれど。まあ、知っておいても悪くは無いと思うよ。知りたいなら協力する。それに、メンバー全員、一度はこの船の宗教について学んでおいても悪くないと思うんだ」
宗教か。機械の自分にとってはどれほど意味を持つものなのだろうか。人間ならば必ず何かを信じている。たとえ無宗教と名乗っていても、世界観は必ず持っている。人はそれから逃れられない。
「そうだな。一度知っておくのも悪くないな」
「じゃあ、決まりねっ」
リィリス船長はにっこりと笑った。船長としての仕事をしたという満足感を感じているようだ。
「講義の形式はなんでもいいかな?僕も初めてだから、上手くできないかもしれないけれど、よろしく」
「ああ。いいよ。気にせずにつくってくれればいい。教えてもらう立場だしね」
ゴフレードは静かに頷いた。
◆◇◆
暗い暗いコリュの部屋。
そこには薄笑いを浮かべたユニが立つ。
コリュの端末からは途切れ途切れにコアニーの声がする。
宇宙船の見えない場所で漆黒の機械が蠢く。赤い目を光らせて。
機械整備士は明日を知らずに汗を拭き。
恋人達は憧れと悲嘆を目に浮かべ、真実を見失う。
何気ない取決め。苦しみと別れはそこから始まったのだ。
誰もが正しい選択をしようとも、駄目な時がある。
ようこそ。逃れられない悲しみの世界へ。
1週間ぶりに投稿できた。この1週間は激動だった。おそらく、人生を変えるくらいの変化率だった。1年後の未来を描ける人って尊敬するな。僕は数か月後さえも見えない。キャリアビジョンとか描いている人は都市伝説じゃないかと思ったりする。
さて、小説の方ですが、今回から物語が(主に暗い方向に)進んで行きます。現実の生活が荒れているので、更新が遅れるかもしれませんが、頑張って書いていきます!最終局面が近い。