表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宇宙の卵(ソラノタマゴ)  作者: しゃくとりむし
第3章 心を求めて [後編]~コリュ~
71/85

疑念

ゴフレードは少しだけ壁にもたれかかった。その状態で、ゲンに対して言葉を発した。


「まわりくどいのはあまり好きじゃない。ラノミナから聞いた。ユニと呼ばれていた特殊なプログラム。それについてもっと教えて欲しい」



ゲンは機械の点検をしながら答える。



「ユニ…か。もう終わったことや」



「そうかな。本当に?」


ゴフレードはにやりと笑った。



「勘がええやっちゃな。かなわんわ~」


機械の点検をする手を止めてゴフレードの方に向き直った。困惑気味に頭を掻いていた。


「他にもいろいろ聞きたいことがあるんだ。この宇宙船は非合理的にできている。無駄が多いと思う。クルーの人数はどうやって決めてるんだ?こんなに少ない人数なのになぜこんなに部屋が多いんだ。そもそもこの宇宙船に人間は必要か?それにこの宇宙船は綺麗すぎる。何百年も使われてきた筈ならもっと汚れていていいはずだ」



「まあまあ。とりあえず、何から説明せなあかんかな? あんさんはえらく頭がいいみたいやね。う~ん…どうしよか。 ひょっとしたら謎を解いてくれるかもしれへんし。 でもコリュには黙っとけと言われてしまってるし、悩むわ。」



「別に無理にとは言わない。答えられる質問に一つづつ答えて貰えれば十分だ」


「… よっしゃ。じゃあ、まず、質問に答える前に約束して欲しいんや。コリュちゃんの希望でね。今から話すことは、ラノミナにもミュエネにもセノアーにも内緒や。コリュちゃんとうちとあんさんだけの秘密や。ええか?」



「問題無い。約束は守ろう」


ゲンは頷いた。そして話はじめた。



「まずな。この宇宙船のこと、どう感じた?」


ゲンは壁を手のひらでポンポンと叩いた。


「どうって、そんな抽象的な質問されても。困る。 まあ、奇妙だな、そう思った」



「そうか。やっぱり勘がええ人やね。実はうちらもまだよくわからんのや。神秘の領域、そう言ってもいいのかもしれへん」


「なぜ、何年も住んでいるはずの宇宙船のことがわからないんだ?」


「つい最近まで、この宇宙船はロードロックシステムっちゅう、人と情報の移動を妨げるシステムがあったんや。そのせいでっていうことが一つの理由やな。」


「ロードロックシステムについてはラノミナからも聞いた。なんでも、この宇宙船の乗り組み員は隔離された状態で教育プログラムによって育てられたことも聞いた。それ以外に原因があるみたいな言い方だな?]



「まあな。少し気になることがあるんや。突然やけど、実は、ウチだけは父親が居ったんよ。大分前に死んでしもうてコールドスリープ装置の中で眠ってるわ。… それでな。小さい頃によく聞かされてきた話があるんよ」


ゴフレードは頷いて、話を促した。


「ひと仕事を終えた後、時々、静かな口調でこう言うんや…『この船では人間より宇宙船が偉いんや。いらない人間は宇宙に捨てられてしまうんや。ピンクと黒の監視者がいつも見てる。だれも抗うことなんてできへん』…」


「それはどういう意味なんだ?」


「わからん。でも、怖い話やろ? 小さい時はちびりそうになったわ~。意味深な言葉だからなんか意味のある言葉じゃないかって考えておったんよ。で、ユニが現れた時、ピンときたんや、ピンクの髪の毛だったから。ピンクの監視者やないのか、と」


ゴフレードは首を傾げながら口元に手を当てた。


「よくわからんな。初耳な話ばかりで理解に苦しむし、連想や空想では…」


「わかってる。ウチが話したいのは、一つの仮説なんやけど。… 宇宙船が人間を監視するプログラムを持っていて、その監視プログラムがユニだった。監視プログラムと戦うためにロードロックシステムを構築したけれど、結局負けてご先祖様たちは宇宙に破棄されていない。… もし、そうならうちらが前の世代のことや宇宙船のことを何にも知らんのも説明がつくやろ?」



「ちょっと待って。話が飛躍しすぎている」



「それコリュちゃんにも言われたんやわ~。でもな、こう考えるといろいろ説明がつくんよ。たとえば、この船にはお墓っちゅうものが無い。ウチの親が眠っているのはコールドスリープ装置を代用しただけのものでお墓ではないんよ。」



「でも、情報が足りない。情報を集めなきゃ判断はできない」



「せやね。そうだ! 君も手伝ってみいへん? 君、頭ええみたいやし、手伝ってもらえると助かるんよ」



そう言って、ゲンは笑顔で手をゴフレードに差し出した。


「わかった。協力しよう」


2人はしっかりと握手を交わした。



◆◇◆




コリュは部屋に戻ってゲンからもらったデータの解析を初めてみた。


「辛抱強く…」



何度も何度も考えつく全てのアプローチで解析を試みた。



特に意味のある情報はでてこない。当たり前の情報か、解析不能な情報、自然な変動、ノイズ。無駄なものしかコリュには見えてこなかった。


「7日はやってみる…」



各個人の個体データ、ロードロックシステムが解除されてからの各種機械の使用頻度の変動、無意味に思える情報まで、少しでも傾向が掴めそうな要素については徹底的に調べた。




「あれ?おかしい」



コリュがおもわず声をあげた。その視線の先には、ゴフレードの部屋への水供給、食物供給、電力供給を示す数字の羅列が映っていた。




ここはもっと時間をかけてゆっくり説明すべきだったかも。まあいいや。ちなみに仮説はあってるとこもあるし足りないところもあったりするものです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ