ハイイロタマゴ 7
宇宙船の船長なんてつまんない。なるなら、フリゲート艦の船長ね。風を受けて出航して、その快速を活かして敵を木っ端微塵にするの。宇宙船の船長じゃ敵も見つからないでしょ。大砲を撃ってみたいっ!!楽しいんだろうなっ!!
~ リィリス・インビシブル・ユニコーン ~
「それ!!撃て!! まわり込め~~!」
大航海時代を描いた戦争映画を見ながら叫ぶ。
「行け! ボライソー提督!!」
大声で応援する。ボライソー提督の旗艦は緒戦で大破したが、快速のフリゲート艦に乗り換えて敵艦船に奇襲を仕掛けている。敵艦に突撃し、白兵戦で攻め落として船ごと乗っ取る作戦を遂行しているのだ。
「そうだ!制圧しろ!いけー」
提督は抜刀して敵船へ飛び移り、白兵戦を繰り広げた。
「殺せ!殺せ!殺せ!」
物騒なことを連呼している背の小さな少女は、宇宙船の船長であるリィリス・インビシブル・ユニコーン、その人である。彼女は退屈していた。この宇宙船に。この世界に。
そのせいか帆船の船長に強い憧れを持っていた。多くの苦難を乗り越え、船旅を続けるその姿は彼女の夢だった。苦難も無い船長に、何の魅力があるのだろう。
船長といってもやるべきことは何にもなかった。朝から映画を見ているだけだ。退屈だった。心から、何かしたかった。
映画を見終わると、彼女は「ピョン」と飛び跳ねながらソファーから立ち上がった。
「あの、ロードロックシステムさえ、何とかならないかしら。」
ダストボックスの蓋を開ける。データにある設計図が正しければ、このダストボックスにある通気口は、別の部屋にも通じているはずだ。
大声で叫ぶ!!
「誰か~。誰かいないの~。返事してっ!!」
深呼吸をして、もう一度叫ぶ
「お願いっ!!返事して~~っ。」