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宇宙の卵(ソラノタマゴ)  作者: しゃくとりむし
第3章 心を求めて [前編]~ゴフレード~
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覗き見

今日はミュエネの部屋に、コリュとゲンが先に居た。珍しい。いつものことだが、コリュは無表情で端末から投影させた画面ばかり見つめ、手は何かせわしなく動かし続けている。ゲンは椅子に座って腕を組みながら気持ちよさそうに寝ていた。


「コリュ。早いね」


顔を覗き込むようにしてあいさつしてみる。こうでもしないと、コリュに無視されてしまう。何度悲しい気分になったことか。


「あ。セノアー」


手を止めて目をあげてくれた。よかったよかった。




「あれ、来てたの。セノアー」


ミュエネが部屋に入って来た。


「うん。今来たところ。ゲンが寝ているから大きな声はやめて静かに…」



ミュエネとコリュがゲンの方を見た。気持ちよさそうに眠っている。半開きになった口からは涎が。。


コリュの魔の手が静かに伸びる。


そして、ゲンの鼻をとらえた。


「うぐgっがああ。。ケホッ。 」


ゲンがもがいてコリュの手が外れた。


「やめれ!やめれっちゅうに! 」


「コリュの前で寝ている方が悪いのよ」


ミュエネはコリュの味方だった。


「理不尽や。。」


ゲンはそう呟いて情けない表情をした。


セノアーとミュエネは思わず笑った。



「そうそう。前から気になってたんだけど、コリュはいったい何を見てるの?」


セノアーは思い切って訊いてみた。


「確かにきになるわね。一体何をみているの?」


ミュエネも興味深々のようだ。



「わいは知っておるんやが、知らない方がいいかもしれへんよ。」


ゲンは、首を小さく振った。


「そんなこと言われると余計に気になるよ」


知らなくていいことを気にするのは人間の本性だ。


「傷ついてもしれへんで~」




「コリュ。いいでしょ。見せて」




◇◆



コリュの端末から大きく投射された映像が白い壁に映る。


「これはどこかの部屋のようだね」



「切り替えるよ」



コリュはそういうと端末を操作した。映像は切り替わった。



「これは…ラノミナとゴフレード?」


廊下で立ち話をしている2人の姿がしっかりと映っている。


「何これ?!最初のは個人の部屋?カメラか何かで撮っているの?」


ミュエネは少し動揺しているようだ。


その質問に、コリュがコクリと頷いた。



「カメラなんてどこにあったんだ…もしかして、普段の生活全てコリュにみられているのか?」



コリュは首を振った。


「全部じゃない。四分の一くらい」


ショックだ。。秘密にしたいこともコリュが全部見ていたかもしれない。コリュを見ても全く罪悪感は感じてなさそうだ。…確かにやりそうだ。


「なぁ、だから見いへん方がええって忠告したんやけどな」


「コリュ。これは悪いことなんだよ」


ミュエネが優しく諭す。コリュは首を少し傾げる。


「だめやろ。効果あらへん。」



◆◇




4人で画面をしばらくみていた。ラノミナとゴフレードは楽しそうに会話をしていた。


「あの2人、付き合っているのかなぁ?」


ミュエネが不意に呟く。


「さあ。でも仲がいいのはそうなんだろうな」


セノアーが答えた。


「セノアー。そないな寂しそうな顔したらあかんて。元気ださな」



「いや、寂しくなんてないよ。これでも嬉しいんだ。ゴフレードが来てからラノミナは明るくなった。それで十分だ」


「ホンマか…? 今のままだとゴフレードに盗られてしまうで?それでもええんか?」


ゲン少し笑みを浮かべたまま、セノアーの方に顔を向けた。思わずつられてセノアーも笑顔をつくった。


「盗るとか盗られるじゃないよ。幸せになればそれでいいんだ」



「あ。」



ミュエネが思わず声を漏らした。画面には抱き合ったゴフレードとラノミナの姿があった。


ゴフレードとラノミナは体を離すと手を振って別れた。


「あのな~昔、地球におった頃の風習の一つにさよならの挨拶に抱き合う国があってだな~」


ゲンが変な解説をし始める。


「いいよ。そんなフォローしなくても。僕は大丈夫だから」


「でも、ちょっと衝撃的で疲れたかもしれないな。…いや衝撃的というのはコリュがカメラで見ていたということの方で…そうだ。僕の部屋のどこにカメラあるんだろう探さなきゃ」


セノアーは平常心をどうやら失っている。目が少し泳いでいる。


ゲンとミュエネはセノアーに自室に戻って休むように勧めた。



「そうするよ。確かにびっくりしすぎた。帰って休むよ」


そう言ってセノアーはミュエネの部屋を後にした。




残された3人。




コリュが呟く。



「青年は背中を丸めて部屋へと帰っていきました」



ゲンも呟く。



「その頃、何も知らないお姫様は、王子様の傍で顔を赤らめて俯いたいたのでした。青年が飲み込んだ言葉も知らずに」



「も~!変なナレーション入れるのは止めなさい!セノアーは真剣なの。コリュもこれからはカメラで遊んじゃ駄目だからね!」



「いや、コリュがナレーションみたいなことを言うたもんやから、つい、つられてしもうたわ。すまん。ちょっと雰囲気に耐えきれんくて、面白いこと言わんときつかったんや。」


ゲンは苦笑を浮かべた。


「でも面白がることじゃないわ」


「そうやな」














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