眠っていたかったのに
海辺で少年が2人遊んでいる。地面は黒い泥で蔽われており、2人とも泥だらけで遊んでいる。空は高く、強い日差しが照りつけている。
2人の子供は岸に流れ着いたゴミや貝殻を積み上げた。高く、もっと高く。
風が吹き、子供達のタワーは、どさっと崩れた。
「あ~あ。壊れちゃった」
「これ見て!泥でぐちゃぐちゃ」
綺麗だった白い貝殻も、すりガラスのようになったガラスビンも黒い泥で汚れてしまっていた。
「もう、やめる? 汚いし、すぐ崩れちゃうし。もう飽きたよ」
少年は汚くなった手から泥をこすり落とした。
「ううん。 やめない。 かっこいい塔をここに造るんだ」
顔を手でこすると、鼻の頭に泥がついた。
賛成してもらえなかった少年は立ち上がった。
「ねえ、他の遊びをしよ!魚を捕ろう!」
むくっとふくれっ面をした少年は、短く、
「嫌だ。これをやる」
と答えた。
誘っても応じてもらえなかった少年は、ふくれっ面の少年を泥の中に突き倒した。
「も~バカ!」
少年達は倒れて殴りあった。乱闘で塔は完全にゴミ屑の塊になった。
「あ~!どうしてくれるんだ!」
「もういいじゃんか!こんなゴミの山」
塔を壊された少年は、再び塔をつくるためにゴミを積み重ねはじめる。
「僕の塔はゴミなんかじゃないっ」
強い日差しが2人を照りつける。
…
◆
◇
まぶしい光が目を刺す。眼球の奥まで刺すような強い光。
「へんやな~。マニュアルではこうすれば瞳孔がきゅーと小さなるはずなんやが。」
声がする。頭が朦朧とする。何が起きているんだ。
「ゲンっ。やり方がちがうんじゃないのっ。瞳孔の場所間違えて無いっ?」
甲高い声が、頭に響く。
「生きている反応が無い場合。心臓マッサージ」
小さなもごもごした声がした。
「もう一度、心臓マッサージやな。ちょっと、みなはん、どいといてね。さっきのやるから」
視野に入っている人間どもが離れていく。
ガン!!
腹部から物がぶつかる音がするって攻撃されてないか!
急いで動作系と感覚系の回路を作動させる。動ける状態になったらすぐに反撃することを決めた。
「堅い体やな~。 ん、ちょっと動いてまへんか?」
「あ!ほんとだ! 生きてるわ!」
白髪の少女が手を打って喜び飛び上がった。
もう十分行動できる。殺るか?いや、手を打って喜んだ者もいる。状況が掴めない。敵意が自分に向いていないなら、ゆっくり起きて様子をみよう。
ゴフレードはゆっくりと体を起こす。
惨劇と自分の罪は、昨日の事のように鮮明で、長い眠りも癒してはくれていなかった。眠ったままなら良かったのに。起きても苦痛しかないならば。