鉄の冷たさ…
ゴフレードは、名前の刻まれた鉄のプレートを見つめた。
… 私を造ってくれたあいつも、年老いて、終に死んでしまった。。
コールドルームでアクリル越しに見る死者の顔は無表情で、ゴフレードの気持ちを乾燥させた。
人は老いて死ぬ。
この事実は、元から知ってした。自分の親しい者だけが例外なんて思ってはいなかった… 知っていたはずなのに、心に抱く感情は初めてのものだった。
ゴフレードは顔を上げた。
目の前には無数のカプセルがあった。これから死ぬ者、これまでに死んだ者。葬られて名前を刻まれた無数の人間達。
生きていた時には、自分と同じように、考え、悩み、傷ついたり笑ったりして暮らしていたのだろう。
… 死者達が持っていたはずの大切な思い出や感情はどこに行ったのだろう。
ゴフレードは自分の人間臭い感傷を自嘲した。
◆◇
ゴフレードは共同墓地から出て、ブリッジまで出てきた。ブリッジの真ん中からは、何人もの人が働いている姿が見通せる。
良く顔を見知った同僚が大きく手を振ったので、ゴフレードは小さく手を振って返した。
… この十年間で何人もの仲の良かった仲間を失った。
ヒトは老いるもの。手を振ったあいつもいつか、老いて死ぬのだろう。そして、世界は更新されてきたのだろう。
自分だけが取り残されて…
「自分は世界から嫌われているのかな。」
誰にも聞こえないくらいの小さな声で呻くことしか、ゴフレードにはできなかった。
古き想い出の感傷に浸りながら