ゴフレード
機械が乱雑に置かれた研究室-
白色のライトの光が部屋のごちゃごちゃをより際立たせていた。この研究室の主の嗜好なのだろう。機械一つ一つに、その機械の手作りの簡易マニュアルがぶらさがっている。
「よし。できた。あとは、人工筋肉の出力調整をしてから起動をしよう」
機械の山の中から、ひげ面の分厚いメガネをかけた白衣の男がむっくりと起き上った。
彼の足もとには一つのほぼ完成したアンドロイドが横たわっていた。
数十もの端子を接続して、パソコンを操作する。
「う~ん。感覚器との連携はうまくいってないようだが…。まあ、多少欠陥があるくらいで良しとしよう。センサーをまたいじるのは大変だしな~」
白衣の男はそう言って大きく背伸びをした。
「よしっ。じゃあ、いよいよ起動してみるか。。」
デスクトップから起動プログラムを呼び出す。
「さあ、起きろっ! ゴフレード!」
アンドロイドは、ゆっくりと目を開ける。
その瞬間、白衣の男はガッツポーズをした。
「をおおおっ。俺はやったぞっ。」
起動されたアンドロイドはその姿をぼんやりと見ていた。
「ああ。すまんすまん。驚かせてすまなかった。といっても状況が掴めていないって感じかな。まあ、いや、順を追って説明せんといかんな」
白衣の男は説明した。アンドロイドだといいうこと。作成に4年を費やし、心まで完全に人間を再現した苦労と涙の結晶だということ。
プログラムの言語そのものから自らの手で作り上げた話では、男はボロボロと涙を流し、語った。
自分の失敗にまつわる笑い話、研究室に籠って彼女に振られた話などを、延々と語った。
その話を聞きつづけていたアンドロイドは、両手の手のひらをしげしげと見つめ、ポツリと呟いた。
「私は…」
白衣の男は、しゃべるのをやめて、満面の笑顔でこういった。
「お前の名前はゴフレード。アンドロイドだ」
「ゴ…フレード…」
男は大きく頷いた。
「ああ。そうだ。その名前が相応しいように私が作り上げた。君が気に入らなくてもその名前は絶対に変えないからね」