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宇宙の卵(ソラノタマゴ)  作者: しゃくとりむし
第2章 船長の風格 ~ リィリス ~
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闇を進む船長の冒険 4

レンチが目の前でくるくると回る。鉄格子が音を立てて床に落ちた。


ゲンが腕を出す。


「よいしょっ!!」


リィリスはゲンに引っ張られ、部屋の中に転がり込んだ。


「いったっ~。」


通気口はそれほど高い位置にあった訳ではなかったが、リィリスは背中から落ちて床に強く打ちつけられてしまった。


「大丈夫?」


コリュが心配そうに覗き込む。


「大丈夫じゃないっ!すっごく痛かったっ!」


にやにやしながらゲンが手を伸ばす。


「それだけしゃべれれば、大丈夫やな。それで、船長さん、何の用や。こんなところからわざわざでてきおって。」



◆◇◆



「皆思っていること、正しいと信じていること。それぞれ違うことを私は知っているっ。でも、、この願いだけは共通だと思わないっ? みんな仲良く幸せに暮らしたいって願っているでしょっ?」


リィリスは身振り手振りを入れて力を込めて語る。


「そのためには、皆で一つの行動をとるべきだと思うのっ。ユニを消す罪をあなた達だけに背負わせたりなんてしたくないっ。」


けれども、ゲンとコリュの表情はあまり変わらない。


「これはみんな、全員の問題なのっ。意思決定も、行動も、議論もっ、みんなでやって、傷を背負っても全員で分かち合うのっ。そうしなきゃだめなのっ。そうしないと皆バラバラになっちゃう。」


ゲンは難しそうな顔をして腕を組んだ。


「いいたいことは把握できたんや。でも、そんなことはわかっちょる。わし等にしてみれば、そんな面倒で予測できないものに、宇宙船の将来を預けることはできんのや。…だから、悪いけどもう部屋から出て行ってくれまへんか。」


しかし、リィリスは動かなかった。


「出て行かないっ。同意してもらうまでっ。そんなに宇宙船を守ることが大事っ!?みんなバラバラになって互いに憎み合って、そんな状況になってまでする価値があることって何?」


「リィリス船長。あんたは何も知らへんからそんなことが言えるんや。この宇宙船はあんたらが思っているよりずっと怖いものなんやで!」



「ゲン!!!」


ゲンがそこまで言った時、コリュが叫んだ。




「ゲン。それ以上は言っちゃだめ。私が…許さない。」




リィリスはコリュの突然の叫びに驚いた。

コリュの無表情な顔からは情報を読み取ることはできない。


「何っ。この宇宙船に何があるっていうのっ?」



「まあ、船長には関係のないことや。気にせんでくれ。」



言いたくない何かがあるってことね。…それならそれでもいい。それでもみんなが元のように楽しく居られることが重要なことは変わらない。



「わかったわっ。何か私の知らないことを知っていて、考えがあってやっているということなんだねっ。」


リィリスはありったけの力でコリュに抱き着いた。感情が高ぶって涙が溢れた。


「だけど、コリュやみんなと離ればなれ に なるのは もっと嫌なのっ…。。そんなことになたら 私 死んじゃうっ。」


突然抱き着かれてコリュの目は大きく開いた。



リィリスの泣き声だけが部屋にこだました。



見開いた目はゆっくりと宙を見たまま閉じた。



「…。私は船長の意見に同意する。」


リィリスは驚いて声も出なかった。


!!


「なんやて!? 事の重大さはコリュちゃんもよ~くわかっておるんやろ?なんでそんな甘っちょろい意見に従うんや!」


コリュは泣いているリィリスを引き離して、ポツリと話し出す。


「一緒にいたい。だからやるの。」


コリュは、振り向き、意思の強い目をゲンに向けた。


その目にたじろぎながらもゲンは問いただした。


「みんなで集まったところでどうにかなるもんでもないんやろ。いまさら、仲良しごっこかっ!コリュ。どういうつもりや!」


コリュの目はゲンを見つめたまま動かない。


「一つ、試したいことがある。それに、宇宙船のエネルギーもある程度は余裕がある。すぐに枯渇なんてしない。」


ゲンは怪訝そうな顔をした。


「みんなの目の前で、やるだけやって手立てが無くなってからユニを破壊すればいい。そうすれば、リィリスの望み通り、みんなバラバラになんてならない。」



リィリスは涙を拭いて、コリュの手を握った。


「ありがとう。それに、何か手立てを思いついたのねっ?」


コリュはコクリと頷いた。リィリスには一筋の光が見えた気がした。




ゲンはくるりと2人に背を向けて、ポリポリと頭を掻いた。



「も~。コリュちゃんには敵わんな~。せやな。1日。1日だけや。それだけ待って何もできなかったら諦めてユニを消すんや。それでええか?」


「わかったっ。」


リィリスとコリュの2人は同時に頷いた。





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