闇を進む船長の冒険 3
やっと見えたっ。
光が射しこむ通気口が一つ。通気管の奥にはっきりと見えた。光が射しているのなら人がいる可能性が高い。コリュとゲンがいるかもしれない。
コリュは気づかれないように音がでないように気を付けながら前に進んだ。―
光に近づく。暗闇に慣れた目には眩しい。
部屋からは声が漏れ聴こえる。
「… ほんまにえらいこっちゃな。まさか、あの話がほんまのことやったとは。」
「事実。…対処しなきゃ。」
いったい何の話をしているんだろう。コリュの声は小さく聞き取りにくい。リィリスは、光には触れないように耳を通気口の傍に近づけた。
「あないに可愛い姿ではほんまにやりにくいなぁ。」
「みんな死んじゃう。嫌がっては駄目。… 私がやらないと。」
「せやな。まあ、コリュちゃん。そないに気張らんと気楽にやりまひょか。」
何?何をするつもりなの。コリュ。何を知っているの?コリュの顔を見たくて少しだけ換気口に顔を寄せる。
「できるかどうか。私、、知らない。もし、失敗したら。」
「大丈夫や。できる。成功する。コリュちゃんがすべきなのは心配することやなくて、より良い選択をするだけや。コリュちゃんなら心配あれへん。」
「うん。私は分析して評価して体を動かすだけ。」
「せや。いつものコリュちゃんらしく、集中してやればいいんやで。」
二人の声は割と明るいようにも思えた。どんな顔して何の話をしているんだろう。気になる…
「物理的なプロテクトが弱い。足りない。不安。」
「よっしゃ、よっしゃ!わてが、ネットワークで管理されていないロックも操作して閉めちゃるで。これで完璧やろ?」
「まだダメ。通気口も危ない。全てを厳重に閉じなきゃだめ。。」
通気口も閉じる。そんなことをされたら… 折角ここまで来れたのに。
リィリスは思わず通気口から部屋を覗き込んだ。
コリュの静かな顔が見えた。
目が合う。
どうしていいか解らず、人差し指を鼻先でまっすぐに立てた。
(… コリュ。とりあえず黙ってて。…)
驚いて叫んだりしないで。… とりあえず。
ジェスチャーで意思を伝えようと試みる。
そして、
リィリスはコリュに向けて笑顔を送った。
…
「リィリス船長。」
コリュはジェスチャーがわかっていないのか、首を傾げながら通気口を指さした。
「もおおっ。コリュっ! なんで言っちゃうのっ??」
鉄格子の向こう側のコリュに向かってリィリスは叫んだ。