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宇宙の卵(ソラノタマゴ)  作者: しゃくとりむし
第2章 船長の風格 ~ リィリス ~
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靴下泥棒の原罪 4

コリュとゲンが部屋を出ていき、皆、顔を見合わせた。


ミュエネがリィリスの方を見てに問いかける。


「どうする?」



「う~ん。ゲンも言うことにも一理あるしっ、このままだと、宇宙船自体のエネルギーが枯渇しちゃうしっ。でも、でもっ、ユニを消したりなんてできないっ。」


ユニは無邪気にセノアーの服で遊んでいる。

リィリスの方を見て、ニッコリと笑った。


「そうよね。ゲンの言うことはわかるんだけど。」


ミュエネもため息をついた。


ラノミナも下を向いたまま話し出す。


「ユニがいることで、宇宙船自体、やばいんでしょう。エネルギーが枯渇したら終わりよ。そりゃあ、明日のうちに無くなる訳じゃないんだけど。やっぱり、仕方無いのかなぁ。」



リィリスはセノアーの方を見た。ユニはセノアーにべったりだ。ユニが傍らにいるこの状況で、セノアーにユニのことについて質問するのは酷だろう。


「まあっ、ゲンも言うことは正しいとしてっ、どうやって、『それ』を進めていくかが問題だと思うのっ。ゲンとコリュはもう動きだしちゃったっ。でも、私はっ、みんなが後悔しないやり方で進めたいっ。」



「ちょっと待った。ユニを『消す』のには、私は反対だ。」


ナタークが立ち上がる。


「だって!可哀そうじゃないか!どう繕ったって殺すことだろ、それって。それに、このピンクの髪、我らが神、見えざるピンクのユニコーン様に似せたお姿なんだ。殺すなんてとんでもないことです。」



「何を言っているのっ。ナタークもわかっているでしょ。エネルギーの維持が宇宙船では第一優先。第一優先よっ。宗教みたいな頭の中の絵空事や、プログラムの見せる幻影ごときに、そんなにエネルギーは割けないのっ。」


リィリスは声を絞り出して訴えた。自分だってユニを助けたい。

でも手段なんて他にないじゃないっ。



ガタン。




ラノミナが下を見つめたままの姿勢で、急に立ち上がった。



「わたしは、わたしは! ユニのことをただのプログラムとか! 幻影とか! そんな風には全然思えないの!…確かに居る!体温を感じるの。…だから、… 私は… ユニを守るわ!」


リィリスは、状況が掴めなかった。なぜ、ラノミナが急にそんなことを言い出したのか。


「なぜっ、ラノミナもわかっているでしょっ!そんなことをしたらっ!」



「全部わかってる! わかっているけどこうするしかないのっ!」


ラノミナは震える手でセノアーにへばりついているユニを引き剥がし、その腕に抱き抱えた。


「ユニをどうするつもりっ。」


「守るの!… 絶対、殺させたりなんてしない。」



ラノミナはユニを抱き、みんなから数歩距離を取った。



「ナターク! セノアー! あなた達も一緒にくるんでしょう?!ユニが消されてもいいの!」


ナタークはラノミナの方へ歩いて行った。


「セノアー! あなたも来るでしょ!」


しかし、セノアーは動かなかった。手を組んで、何か一点を見つめている。


「いいわ!セノアーは敵ね! リィリス船長、ミュエネも、ユニを消すなんて絶対に認めないから!」



ラノミナとナタークが部屋を足早に出て行った。












深い沈黙が3人を襲う。



セノアーが訥々と呟く。



「僕は…、ユニが… あんなになついていたのに、裏切ってしまった。」



「だって、、、仕方ないじゃないか、、宇宙船全体とプログラム一つ、、重みが違うんだ。」



「ユニなんて、、、、、無ければよかったんだ。」




ミュエネは首を振る。


「違う。… 違う。セノアー。」



セノアーはテーブルをドンッ!と叩いた。その白い髪を震わせて叫んだ。


「何が違うんだ! そうだろ! あいつがいなければこんな苦しくはなかったんだ!」



ミュエネは首を再び振った。 しかし、声を出そうとするが言葉が出てこず、下を向き空気を飲み込んだ。



セノアーは、沈黙に耐え切れず泣き崩れ、テーブルに突っ伏した。

「っ…うう…っ。 僕は最低の人間だ。助けることもしないで、、、見捨てるなんて。 僕はなんて馬鹿なんだ!… … 。 」



ミュエネはゆっくり目を閉じた。




リィリスは2人を交互に見つめる。このままじゃ、ダメ。みんなバラバラになっちゃう。ユニを消して元に戻っても、皆の傷は深い溝に変わってしまう。今までの生活には戻れない。… 嫌。そんなの嫌!!




「理屈はわかったわっ。… みんなが葛藤を抱えて苦しんでいることも。でもっ、今この時に必要なのは理屈じゃないっ。 まして、感情なんてもっとゴミ屑よっ。 今は泣きながらでも、自己嫌悪になっても動き出すしかないのっ。 だからっ、二人ともっ、私の話を聞いてっ! 」




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