靴下泥棒の原罪 3
「今日は私の番ねっ。ユニっ、こっちおいでっ。」
ユニを発見してから数日が経った。
世話は、各クルーの当番制に決まった。
夕方、今日のミュエネの部屋には、リィリスとラノミナ、ミュエネとセノアーがいた。
「私の番は終わりか~。ユニ、ばいばい。」
ラノミナが手を振ると、ユニも手を振った。
「本当にかわいい。」
ミュエネがそうつぶやいた。
そんな平和な時間が流れていた。
この時までは、、、。
◆◇◆
いつも笑顔のゲンが、珍しく眉間に皺を寄せて、部屋に入ってきた。
「リィリス船長。今すぐ、みんな全員集めてくれまへんか?めっちゃ重要な話がおてますんや。」
「いいけどっ。話って何っ?」
「後からみんなと一緒にまとめて話したいんや。」
ゲンの表情からして、重要なことなのだろう。
「いいわっ。館内全域に召集を呼びかけるっ。」
…
…
全員揃った。いつものようにテーブルを囲み輪になって座った。ユニはセノアーの膝の上で遊んでいる。コリュは眠たいようで、テーブルに肩肘をつきながら体を前後に揺らしていた。
「じゃあっ。ゲンっ。話って何っ。」
頷いて、ゲンは持参した端末の電源を入れて、グラフを投影した。
「これは、先月の資源の利用、特に赤線で強調した部分が電力の使用量や。そして、これが今週。」
別物ではないかと疑うほど、今週の電力消費量は格段に伸びていた。
「ざっと100倍やで。この調子で使い続ければ、当然船内の資源は枯渇する。」
ナタークが質問をする。
「理由は? なぜ、そんなに電気使用が伸びたのか?」
「それはもうわかっているんや。ロードロックシステムが解除されてからすぐ、使用量が増加している。その原因がわてにも分からず、探っておったんやけど、コリュちゃんに聞いてみて、わかったんや。言いたくはないんやが、、… ユニ、そのピンクの女の子が原因なんや!」
場の空気が静まり返る。資源が枯渇することが何を意味するか。そのことは、小さいころからコアニーによる教育によってよ~く知っていた。
「コリュっ。ほんとなのっ。」
リィリス船長の不安気な問に、コリュは薄目を開けて、コクリと頷き、小さな声で呟いた。
「ユニのプログラム。消費電力多過ぎ。」
…
「みんな、うちの言いたいことは、わかりますやろか。ユニは、ここに居てはいかん。存在することはできないんや。今すぐ、情が湧く前に、消してしまいたい。」
誰も返事をしなかった。互いの顔色を窺う。
「そうか。じゃあ、仕方あれへん。うちの仕事はこの船を守ることやから、みんなが反対してもそうさせて貰うで。」
そう言ってゲンが立ち上がった。
「コリュちゃんも、来うへんか?」
そうゲンが言うと、コリュも立ち上がった。
「コリュ? あなたはゲンの意見に賛成なの?」
ラノミナが不安そうに問うと、コリュは頷いた。
「どちらが重要かを考えればわかる。」
「そういうことや。コリュ。邪魔が入るかもしれへんから、ちゃっちゃとやってしまうで!」
ゲンとコリュが部屋から部屋から出ていく。
「コリュっ!行っちゃうの?」
コリュはリリィスの声に少しだけ振り返ったが、そのまま部屋を出て行った。