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宇宙の卵(ソラノタマゴ)  作者: しゃくとりむし
序章 何かが欠けた宇宙船
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ハイイロタマゴ 4

風が吹かない「ソラノタマゴ」の中では、木の幹は曲がりくねり弱弱しくしか育たない。植物には自然の力強い風が必要なのだ。時には枝が折れてしまうほどの荒々しい風が。私は、この宇宙船の中に自然の風が吹かないことをもっとも憎む。

                ~ ミュエネ・ハッシュ ~



 林の中に、ミストが降りてくる。この宇宙船の中で唯一の土の上に寝転び、朝のミストを浴び輝く木々を見上げている。私はこの時間が一番好きだ。木から落ちてくる水滴が顔に当たるとちょっとうれしい。


 おそらく、「ソラノタマゴ」の中で一番広い占有スペースを、私は持っている。林を模したこの「休憩談話ルーム」。この部屋は、昔は文字通りクルー達が集まって休む休憩室だったらしい。でも、「ロードロックシステム」が今はあるせいで、植物を管理する私しか入れない。私が入れる部屋はもっとある。今は無人で稼動している「植物性食糧生産ユニット」、テラフォーミングに使う植物について研究する「植物研究ルーム」。植物に関係する部屋は、大体私しか入れないようになっている。私は、植物が無いと生きていける気がしないんだけれど、他のクルー達は大丈夫なのかな?


「さあてと。今日は剪定でもしてあげようかな。」


 この部屋の木々は痛々しいほど曲がり、折れているものもある。宇宙船に保管されているデータを見ると、木の姿は本当はこんな風ではないらしい。真っ直ぐと空に向かって伸びる、というのが本当なのだ。こんな痛々しい姿になってしまうのは、この「ソラノタマゴ」の中では自然な風が吹かないからだ。この部屋を作った人は、植物にとって一番良い環境にしようと思ったのだろう。害虫も無く、枝を折る風も無く、水分と光、養分は定期的に補給される。確かに、それは植物にとって夢のような環境だろう。でもそれでは駄目なんだ。強い風を受けない枝や幹は弱弱しく、すぐに折れてしまう。乾燥を知らない根は大きく広がることができない。


 満たされているのにボロボロな植物達をなんとかしなければと思う。自分ももしかしたら、この植物達と同じ状態なのかもしれない。


「よし!さあ、やるぞ!」


そう。言って、作業に取り掛かった。



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