船長は誰のために 3
目を開けると、白い光が輝いている。
電灯を点けたまま眠ってしまったようだ。
端末から投影されたスクリーンは、黒い画面になっている。
あんなに苦しかったのに、寝て起きてみるとすっきりとした気持ちになっている。
部屋はいつも通り、静かだった。リィリスは、独り言を呟いた。
「気分は落ち着いた。でも、何か解決できたわけじゃない…」
ベッドから降りリィリスは体をぐっと伸ばした。
「解決したいなら、コリュのところに行かなきゃっ。」
眠い目を擦りながら、夕食を抜いて空腹のお腹を満たし、シャワーを浴びて服も整えた。
「よし、これでいいかなっ。」
気合を入れて服は全部新しい物に交換し、髪も整えた。鏡を覗き込む。
全部新品でお気に入りの色の物を着たはずなのに、何だか落ち着かない。
これから謝りに行くんだから、落ち着かないのは仕方ないことなのかもしれない。
靴を履こうとして、手を止めた。
「靴も、新品に交換しようかなっ?」
この靴にしてからもう、3年くらいは使った気がする。表面は手垢で汚れ、中敷きは破れているし、靴底はすり減って滑り止めは無くなっていた。
「お気に入りの靴だし、もうちょっと履いていたいかも。」
少し迷いつつも、古ぼけた窮屈な靴に、足を無理やり押し込んだ。新しい服に、古ぼけたこの靴は似合わないかもしれない。
不安を抱きつつも、コリュの端末を手に、リィリスは部屋を出て、コリュの処に向かった。
◇◇◆
コリュの居住スペースの前に着いた。おそらく、この中にいるはず。
扉に触るのが凄く怖い。何と言って話かければいいっ?許してくれるかな…
何度も開けたはずの扉だけれど、…今日は、怖くて入れない。
もし、扉がロックされていたらどうしよう。話すこともできなかったら。コアニーでも呼ぶ?一人だと不安だし、ミュエネを呼んで一緒に…
リィリスは頭を振り、妄念を一掃した。
「私がやらなきゃっ。逃げちゃいけないっ。船長なんだもんっ。」
気持ちを昂らせて、扉に手をかける。
ゆっくりと扉は開いた。
…ロックはされていなかった。
扉から続く通路は、照明が消され、真っ暗な道が続いている。
「よしっ。行こうっ。」
リィリスは真っ暗な通路に入り、不安な気持ちを押し殺して一歩を踏み出した。