船長は誰のために 2
リィリスは部屋のライトを点けると、コリュの端末を机の上に置いた。
「コリュ。」
深い呼吸をする。
腕に力が入っていたことに気が付き、力を抜いてだらりと重力のままに垂らす。
いつもは気にならない人工の照明が、なんだか刺々しい気がする。
一日の事を振り返った。
気持ちが甦り、胸が苦しくなった。
体も心も疲れている。
リィリスは照明を点けたまま、ベッドに潜り込んだ。
ベッドに入っても胸の苦しみは無くならなかった。
この重い気持ちのために、寝むることはできなかった。
寝つけなかったリィリスは、端末の電源を入れて映画を見ることにした。
布団に包まったまま、虚ろな目で画面を見つめた。
◇◆
「航路の行方」映画のタイトルだ。
ライナスは貴族の家系に生まれた青年だったが、放蕩の限りを尽して、父親から戦艦の艦長として乗船するよう命令を受ける。
やる気も船乗りの経験も無いライナスは、部下達の笑いものにされてしまう。彼らを罰しようとするが、逆に苛めを受けて遂には海に突き落とされてしまう。
溺れて、沈みかけたライナスを、一人の老水兵が海から救いあげる。
「お前さん、船の上で意地を張りなさんな。」
ライナスは老水兵のアドバイスのもと、徐々に信頼を取り戻していく。
そんな折、戦争が起き、ライナス達の戦艦も駆り出される。
戦争を甘くみていたライナスは無茶な作戦を敢行し、老水兵をはじめとする仲間の多くを失ってしまった。
自身も深い傷を負い、病室に寝かされていたライナスは、死んだ乗り組み員たちの夢をみる。
「ヲォー!! ヲォー!!」
ライナスは頭を抱え、叫んだ。
国に戻り療養を終えたライナスは、足を引き摺りながら、真っ直ぐと前方を睨みつけて歩き出す。
「大事なものは、もう戻らない。」
そう呟いて、新たな戦艦に乗り込むのであった。
…
◇◇