タマゴ達の邂逅 17 ~ セノアー ~
ゆっくりと目を開ける。
ん。移動している!
台車に思いっきり乗せられちゃっている!!
「ちょっと、止めて!!」
思わす声をあげた。台車は止まった。
見上げるとそこにはコリュがいた。
「もう、大丈夫だから。立てるし、歩けるから!」
コリュは残念そうにしていたが、急いで立ち上がる。
… 意識が遠のき、足元がふらついた…
「大丈夫か。肩を貸してやる。。」
ナタークが支え、何とか倒れずに済んだ。
「ありがとう。助かる。」
「暴力を振るわれた時はお互い様じゃないか~。」
なんだか今の返事は心がこもってたぞ。
「ちっ。鳩尾よりもこめかみの方が良かったかな。」
ラノミナさんが物騒な事を言っている。… 怖い。
「お~いっ。はやくセノアーの部屋にいくよっ。」
え。僕の部屋なのか。。
◆◆◆
「ふつうの部屋だねっ。おもしろくないっ。」
「まあ、居住スペースは似たようなものだから。」
リリィス船長はご不満のご様子だ。もう一人の問題児。コリュに気を付けなければ。
何か、いじっているけれど。
「コリュさん。何をしているの?」
「日記を見てる。」
それは僕の端末じゃないか!勝手に見ちゃっているし、この短時間で日記を見つけ出すなんて!
コリュは、目を細かく動かしながら、日記のページをどんどん進めて行く。
「ちょっと!止めてって!」
なんとかコリュを止めた。
「こりゃあ、難儀なことやナア。コリュちゃんが素直な子やからまだええけど。」
ゲンさんが人ごとのように呟く。
「そうだね。無口な子だし。。でも。もう、立ち直れない。。じゃあ、そろそろ次の場所に移ろうか。」
ふふふっ。次はゲンが餌食になる番だ。せいぜい泣くがいい。
「あ。ちなみに僕は、 セノアー・ケンピス 。ナタークよりは背が高いけれど船長よりは背が高いかな。銀色の髪だけれど、ラノミナほど白くない。目はどちらかというと青いかも。… はっ。何を僕は言っているんだ。」
「おかしなセノアーっ。容姿なんてみればわかるでしょっ。さあ、次いくよっ~。」
◆◆◆◇
「おお~~」
みんな感嘆の声をあげる。
宇宙船の裏側、今は作動していない駆動装置やエネルギー循環装置、コールドスリープルームを見て回る。
「絶対、触ったらいけまへんよ!」
この独特の口調の男は、「ゲン・アカツ」と名乗った。機器の管理を一手に引き受けている。この男なくして、日々の生活はありえない。
コールドスリープルームはコリュのお気に召したようだ。
「… ここで寝る。。」
「あきまへんて。ちょっと。電源入れたらダメっ!」
みんなでコリュを説得し、コールドスリープルームの外に出た。
「この近くにとっておきの部屋があるんや。」
ゲンはそう言った。
「おお~~」
「こんなに広い部屋があったのっ?」
船長が驚くのも無理は無い。
何も無い広い空間。機器も何一つ置いていない。部屋の隅に棚があるくらいだ。
「ここって、重力きつくない?」
ラノミナはゲンの方をみて尋ねた。
「そうなんや。大体、居住空間の6倍やね、惑星ザルミナくらいの重力や。」
「なんだか、体に悪そうよね。」
ミュエネもこの厳しい重力は好きではないようだ。
「ここは、訓練用の部屋なんや。」
そう言って、木刀を取り出した。
「その棒っきれで何をするの?」
「おう。これで、世界も変えれるんやで。」
リィリスとコリュが追いかけっこをして遊び始めた。
それから、みんなで「鬼ごっこ」なるものをすることになり、
遊び疲れた僕らは、今日は解散することにした。