タマゴ達の邂逅 4 ~ ラノミナ ~
今日もいつもと変わらない。いつものように測定モニターを見ながら机の上で眠ってしまった。服は1か月前から着替えて無いけれど、まあ、別に大丈夫よね。でも最近汚れが目立ってきたかも、シャワー浴びた時に着替えておけばよかった。今日も一日中、この測定ルームの中。自分の部屋に帰るのは面倒だし、もういいや。
ラノミナはぐっと背伸びをして、伸ばした腕をパタパタさせた。
「さあ、今日もはじめますか!」
測定機器類のスイッチをONにする。
簡単なものだ。これらの機器を使えば、見えないものだって解析することができる。宇宙船の外のものだって何だって。まあ、確かに、触れることや感じることはできないけどね。
適当に作った歌を歌いながら、データの解析作業を始める。
「今日は♪コアニー♪来ない♪ 望遠鏡は♪ 絶好調♪ よく寝て私も元気♪ 」
ガシャ。
扉が開く音と同時に、空気に流れができるのがわかった。
思わず、歌を止めて後ろを振り返った。
そこには、「人間」が立っていた。
「や、やあ。あなたがラノミナさんですか?私はセノアーといいます。」
セノアーと名乗る青年は様子を伺いながら、愛想笑いをした。
誰?この人?とりあえず。ど、どうしよう。
「あれ? ロードロックシステムは?それに、ご用件は何ですか?」
そう問いかけながら、ラノミナは銀色の髪を靡かせながら立ち上がった。
「ロードロックシステムは、今朝、壊れたようです。コアニーがそう言っていました。ここに来たのは、せっかく皆会えるようになったのだから、一度皆で集まらないかな~って思いまして。皆集まるように伝えてありますので、一緒に行きませんか?」
ラノミナがジッと睨むと、セノアーは視線をずらした。
「まあ、いいわ。今日は機嫌がいいし、行ってあげる。で、どこに行けばいいの?」
バツが悪そうに、セノアーは答えた。
「ミュエネさんの所です。場所は~。これから歩き回って探します。」
「歩き廻って探すって、場所知らないの? 歩くのイヤだな。」
そうつぶやきながら、セナアーの方に近寄った。
「コホッ。コホッ。クシュンッ!コホッ。ゲホッ。」
その時、セノアーは、顔を手で覆い、倒れこんだ。
「大丈夫!?どうしたの!」
「ゲボッ。ラノミナさん。ちょっと匂います。この部屋もあなたも。」
!!!!!!!
ちょっと気になる袖の部分を嗅いでみる。
ツンとした匂いがした。
体中の血管が締まる感じがした。汗がとめどなく滲みでてくる。
急いで弱っているセノアーを部屋の外に出して、扉を閉める。あれ?ロックってどうすればいいんだろう?これかな?こんな状態で部屋なんて出たくない!
「ラノミナさん~。ごめんなさい。だから、出てきてくださいよ~。」
しばらく、呼ぶ声が聞こえていた。でも、どうすればいいかなんてわからなかった。部屋の隅に頭を押しつけて、耳を塞いでじっとしていることしかできなかった。そして、いつしか呼ぶ声も無くなっていた。