タマゴ達の邂逅 3 ~ セノアー ~
「おお。こんな方に通路ができてる。」
セノアーは感嘆の声を上げた。
「ハイです。至る所に新たな通路ができてイマス。」
この宇宙船「ソラノタマゴ」は、元々は何十人、多い時には60人以上もの乗組員が乗り込んでいたという。確かに、閉まっていて誰も使用していない部屋だらけのようだ。この広い船内を数人の乗り組み員を探すのはちょっと大変かもしれない。
足音だけが妙に響く。
コアニーは、端末のモニター上に映っている。上機嫌の時の表示になっている。よっぽど、この状況が楽しいらしい。僕の方は…ちょっと不安もある。
「コアニー。これじゃ、他のクルーに会う前に迷子になっちゃうよ。クルーの場所とか把握してないの? 船内の地図とかわからないかなぁ。」
「ソウデスね~。地図は、ロードロックシステムができた際に破壊されてマス。クルーのいる区画は大体わかるのデスが、日頃、通路を通ることは無いのでよくわからないのデス。」
「そうか~。じゃあ、一番近くにいるクルーはどの区画にいるかわかる?」
「一番近いのは、宇宙測定ルームにいるラノミナ・フサリューですが、あまり近寄らない方がいいかもしれないです。次に近いミュエネの所に行きましょう。ハイ。そうシマショウ。」
「ちょっと。勝手に目的地を決めないでよ。もしかして、ラノミナさんは、前コアニーが怒っていた人?どんな人か、僕は興味あるなぁ」
「セノアーに悪影響があるといけないから会わない方がいいと思うのです。ラノミナは、ワタシをいつも困らせマス。コリュはいつもワタシの消去法を探しているし…(ブツブツ)」
(わあ。なんかスイッチ入っちゃった。)
「まあまあ、怒らない、怒らない。折角だし、クルー全員に会っておきたいんだ。ラノミナさんを連れて、ミュエネさん?の所に行こうよ。」
「モウ、シラナイデスヨ~。」
「そうだ!コアニーは皆の所に行けるんだから、連絡してどこかに皆を集めてよ。それなら探す手間が省ける。」
「ソレナラ、ミュエネの所がいいと思います。あそこは宇宙船の真ん中で、スペースも広いから。」
「じゃあ、そこに、集まるように連絡お願い。ラノミナさんは僕が連れて行くよ。」
「ハイ!じゃあ。行ってくるデス!」
コアニーは、くるくる回るアニメーションを映し、画面上から消えた。
誰もいない長い通路が続く迷路のような船内。一人で歩いていると、ちょっとだけ怖い気がする。足音の度に心が不安定になる。そんな感じだ。
「宇宙測定ルーム??あった! こっち、で正解だよね?」
通路上に宇宙測定ルームの文字と矢印がでかでかと書かれている。
さて、どんな人か。
「ともかく会ってみよう。」
セノアーはそう思った。