タマゴ達の邂逅 1 ~ コリュ ~
「誰かっ!!誰かいないのっ!!お願いっ!!返事して~」
ん。誰かの声が聞こえた気がした。ダストボックスからだ。
少し冷えた暗闇に包まれたベッドの上からコリュは跳ね起きた。
確かに聞こえた。人の声だ。日頃出さない大きな声を張り上げて、ダストボックスからの声に返事した。
「ここにいる~! わたしはここに居る!」
声がかすれて、喉も痛いが構わない。人間と会話している。非日常的な出来事で体が震えた。
ダストボックスからの声は続いた。
「ロードロックシステムを破壊してっ!私やってるけどできないのっ!こんなつまんないのはもう嫌なのっ!」
その言葉が途切れたすぐ後、部屋のライトが着いた。部屋の電源が戻った後は、もう声はせず、只々静寂の音がするだけだった。
「コアニーも流石に命を奪うようなことはしない…」
コリュは再び点灯したライトを見つめそうつぶやくと、「それよりも。」と思考を巡らせ始めた。
あの声の主は、ロードロックシステムの破壊をご希望のようだった。何の目的かわからない。あのシステムの破壊自体は、不可能じゃない。現に、電源が停止した今日のようなケースで、他の乗組員と会話することができた。これは、ロードロックシステムが可逆的な、それも電気的な仕組みで制御されていることを示している。
「めんどくさい。」
頑張れば、それは可能だろう。でも、ロードロックシステムを破壊すれば、自分の世界も崩れてしまう。あの声の主が、どんなことを考えているかわからない。でも、私の世界が変わってしまう。それは、とても面倒なことに感じた。
コリュは、仰向けにごろんとベットに横たわった。
常に変わらない人工のライトからの光がコリュを照らしている。
「まあ、いいか。壊しちゃえ。」
コリュは、起き上がると机に座り、ロードロックシステム破壊プログラムを組み始めた。
初めて人間と会話して興奮していたからなのかもしれない。なんとなく日頃退屈していたのが理由なのかもしれない。どんな理由だったかなんてわからなくても、もたらす結果は明白で、おそらくどんな形であれ自己完結した退屈な日常を壊してくれるものだと思った。