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プレゼント

作者: 林代音臣
掲載日:2026/06/18


 プレゼント交換をしよう。

 どういう話の流れだったかは忘れたけど。君と僕の二人で、プレゼント交換をすることになった。

 予算は三千円。一週間後に渡し合う。

 楽しみだねと笑い合って、僕たちはお互いの帰路についた。


 何にしようかな。

 出かけていても部屋で遊んでいても、そんなことばかりが頭を回る。

 そうだ、君はあのお菓子が好きだったよな。それじゃあ、三千円の内の一部はあのお菓子にしよう。

 あの漫画も好きだよな。じゃああのキャラの柄がついた文房具にしよう。

 いろんなお店を回って、たくさんたくさん悩んだ。

 週末出かけて、歩き回って、一日中考えて。

 あーでもないこーでもない。

 ラッピングも考えないと。君は青が好きだから、青いリボンにしよう。包装紙も同じ青。

 いろんなところで集めた、いろんな……君の好きなものばかりを、少し大きな箱にたっぷり詰めて。

 やっと出来た。絶対喜んでくれる。

 もうこんな時間だ。前日の夜までかかってしまった。

 明日が楽しみだ、ワクワクして寝付けない。


 翌日、君と待ち合わせた公園へ急ぐ。

 大きめのトートバッグに、君へのプレゼントを大事に入れて。潰れないように。

 君はベンチに座っていた。手を軽く上げて、僕に挨拶する。

 

 ウキウキとした胸の高鳴りがおさまらない。

 僕たちはプレゼントを見せ合った。

 君は僕のプレゼントの包装を見て、目を輝かせた。すごい!ありがとう!と。


 君がくれたプレゼントは……小さな小さな、封筒一つだった。

 中身は……何だろう、とにかく薄い。

 君は、すごくいいものを入れたよと嬉しそうに言う……それならこれは、きっとすごく価値の高いものに違いない。

 薄くて価値が高いもの……あ、もしかしてあのレアなトレーディングカードかも!


 プレゼントはお互い、家で開けようという話になって。僕らは公園で別れた。

 僕は、大きなトートバッグに入れた小さな封筒がカサカサ音を立てるのを聞きながら歩いた。

 薄くていいもの、何だろう……いろんな考えが頭を巡る。

 ……本当は不安だった。これは、本当にいいものなんだろうか。こんなに薄いのに、こんなに軽いのに?

 でも君が、これはいいものだと言った。それを信じないなんて最低だ。

 そう、疑う心を持ってしまった自分を責めながら。なんてこと無い帰り道を、僕は足早に駆け抜けた。


 家に着いて、僕は封筒を机の上に出した。

 ドキドキしながら封を開けると……


 中身は、三千円分のギフトカードだった。

 有名な、通販サイトの。


 いいもの。これがいいもの。

 確かに、何でも買える。僕の欲しいものを、僕の欲しいように。


 ああでも。君は……ああ、そっか。

 僕がお店を転々と巡って、プレゼントを考え抜いていたあのとき。

 丁寧にシワの無いようにプレゼントを包んでいた、あのとき。君は……。


 何にも、悩んでくれなかったんだな。

 僕が何が好きとか、何をあげれば喜ぶとか。

 何にも……僕に、時間すら、割いてくれなかったんだな。

 僕のことに君の時間を使うことを、楽しいと、思ってくれなかったんだな。

 君にそう伝えたらきっと、考えたけど浮かばなかった、なんて笑って言うんだろ。

 ……「浮かばない」で、流せてしまったんだろ。


 これが君のいいものなんだな。

 自分が僕に割いた気持ちも、手間も、わかりきった上で……君はこれを、いいものだと言って僕に渡したんだな。


 そうか。そうか。ああ……


 馬鹿みたいだ。



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