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【異世界ユーモア短編集】サラスパシリーズ

【異世界ユーモア短編】師匠の異世界転生【サラスパ外伝】

作者: AKTY
掲載日:2026/03/06

※本作は「【異世界ユーモア短編】サラダスパゲッティはサラダじゃない、スパゲッティだ。」の外伝であり、連載中の長編「空手バカ一代と行く、JDまどかの心霊探索ツアー」とのコラボ短編です。先にその両方、特にバカまどかの方は第4話までお読みいただいていたほうがより楽しめるでしょうが、まあどうせしょうもない話なんで、別に単品でもいけるんじゃないッスかね。

 魔人グレートマッスルはなおかとユカリ嬢の結婚式を翌日に控えたその日、力強く ”師匠“ と刻まれた墓石の前で熱心に祈る青年がいた。


 彼こそはユカリ嬢の兄、そして明日からはこの世界の支配者・グレートマッスルはなおかの義兄となる ”俺くん“ である。彼は小洒落た身なりで手を合わせている。その手首には高級ブランドに特注した、18K+ダイヤモンドが散りばめられた腕時計が輝いていた。


(師匠、明日はいよいよグレートマッスルはなおか様と我が妹ユカリの結婚式です。師匠が亡くなられてからもふたりの交際は順調で、ついにここまでやってきました)


 ”俺くん“ は顔を上げ、 ”師匠“ の文字をそっと撫でた。


(俺もグレートマッスルはなおか様の未来の義兄として、ずいぶんブイブイいわせてきましたが、明日からはいよいよ、真の上級国民になります。もっと重要な役職につけてもらう予定です)


 脳裏に師匠との辛く厳しい修行の日々がよぎった。彼の瞳から一粒の涙が零れ落ちる。


(師匠と修行に明け暮れたあの頃が懐かしい⋯⋯でも、やはり無職はダメでしたね。やっぱ男のステータスは地位と金ですよ。いまではもうきれいなチャンネー抱きまくりです。俺ひとりの身体じゃ足りねーっつーの)


 フッと空を見上げる。雲ひとつない澄んだ青空。


(師匠、見てますか?俺、いま幸せです。拾い食いで腹壊して死んだ師匠の分まで、もっと幸せになります)



 魔法陣から青白い光がほとばしる。一瞬部屋中の空気がその一点に集まり、一気に爆ぜた。衝撃が周囲へ広がっていく。そして光が拡散し、元の静けさへ戻った。たったひとつの変化だけを残して。そこに跪くようにして現れたのは⋯⋯


 師匠はあたりを見回した。ろうそくの明かりだけで薄暗い部屋。ここがどこだかわからなかったが、少なくとも自分が見知った場所ではないと直感した。


「ちょ、ちょっと先輩、なんか急に出てきましたよ、このコ」


 声が聞こえ師匠はそちらへ頭を巡らす。暗くて見えにくいが⋯⋯女?まだ若い、地味な顔の女が困惑した表情をしている。


「このコ、なんですかね !? これも心霊現象ってことでいいんですか?」地味な女は隣にいるやけに大柄な、こちらも女か?に話しかけている。


「なんだか可愛らしい女の子が出てきたわね」大柄な女は落ち着いた様子で応えた。


(ん?女の子?)師匠はキョロキョロと周囲を確認するが、あとは二人の謎の女の後ろで身構えている白い服の男しかいない。とすると⋯⋯


「えっ !? ワシぃ?」甲高い声が喉から飛び出た。ちょうど10代前半の頃のユカリ嬢のような。師匠は自分の身体をまさぐった。あの、60年以上鍛え抜いた鋼鉄の肉体とは違う、まだ幼いが柔らかい――女の肉体。


(ワ、ワシは一体どうしてしまったんじゃ⋯⋯)


 その時、師匠の頭に直接声が響いてきた。


(⋯えますか?師匠よ。聞こえますか?)


「ハッ、ハイッ!聞こえます。聞こえます。あなたはいったい⋯⋯」


(私はペロペペロペペペロリンです)


「おおっ、ペロペペロペペペロリン様ッ!もしかしてこれはあなた様の⋯⋯」


(そうです。私がやりました。お饅頭を拾い食いして腹を壊して亡くなったあなたの魂を、なんとなく仲間内の戯れでそちらの世界へ送ってみました)


「そ、それはつまり異世界転生というやつでしょうか?」


(そうです。そのついでに私があなたをTSさせ、お友だちの "時の神" が若返らせました。どうですか?いまどんな気持ちですか)


「いや、どんな気持ちと言われても⋯⋯なんか股のあたりがムズムズしています。尿意を我慢できない感じというか⋯⋯」


(YES !! そうそう、そういうの、そういうのがいいんですよ。あなたはこれからその世界でいろいろな体験をしていくことでしょう。男性にモテますよ、可愛らしく作り替えましたからね。ウフフフフ)


「えぇ⋯⋯ワシ、男には興味ない⋯⋯」


(ガンバッ♡あなたの今後を見守っていますよ。それでは私はこのへんで⋯⋯)


「そ、そんなぁ⋯⋯ペロペペロペペペロリン様ぁ⋯⋯」


 そんな師匠の様子を部屋にいた3人は怪訝な様子で見守っていた。


「ねえ、有明くん、あれたぶん妖怪かなんかだと思うんだけど、どうする?ぶっ飛ばしとく?」地味な顔の女が尋ねる


「いえ、別に攻撃されたわけじゃないですから⋯⋯でもなんとなく闘ってみたい気はしますね」有明と呼ばれた青年は少しだけ目を輝かせながら答えた。


「先輩、これどうしましょうか?」地味女は今度は大柄な女に向けて問いかけた。


「ん~、そうね、遊びで悪魔召喚やってみたら変なの出ちゃったわね」


 しばらく考えるような素振りをしたあと、大柄な女はなにやら荷物をゴソゴソと探りだした。そして取り出した黒い髪の毛の束のようなものを、右の拳に巻きつけた。


「めんどくさいから送り返しましょう」


 そう言うと大柄な女はおもむろに前に出た。まっすぐ間合いを詰め、右ストレートを師匠の顔面に叩き込む。昏倒する師匠。すると足元に黒い穴のようなものが開き、師匠の肉体を呑み込んでいく。抵抗する間もなく、その姿は部屋から消え去っていた。



 掃除を終え、立ち去ろうとして墓石に背を向ける ”俺くん“ 。すると背後からドサッという音がした。なんだろうと振り返る――するとそこには、なんとも儚げで可愛らしい女の子が倒れていた。


 了



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