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第27話 二人の従者

謁見の間を出ると、廊下の先にリゼとクローネの姿が見えた。

二人とも、緊張した面持ちで僕を待っていた。


「ルカ様」


リゼが、真っ先に駆け寄ってきた。


「いかがでしたか」


「……うまくいった。レグナス殿下は、軍を出してくれる」


「本当ですか……!」


クローネが、胸に手を当てて安堵の息を吐いた。


「よかった……正直、断られるのではないかと……」


「僕もそう思ってた。でも、殿下にとっても利益のある話だったみたいだ」


「利益ですか?」


「ああ。詳しいことは、場所を変えて話そう。ここでは人目がある」


僕たちは王城を出て、王都の外れにある宿へと戻った。



宿の一室。

テーブルを囲んで、僕は二人に作戦の概要を説明した。


「まず、僕たちの役割は潜入だ」


シルフィーネから受け取った地図を広げる。


「この監獄には、強力な魔法障壁が張られている。外からの魔法攻撃は全て弾かれるし、物理的に壁を破るにも時間がかかりすぎる」


「では、どうやって……」


「障壁の核になっている魔導機器がある。ここだ」


僕は、地図の中央を指差した。


「これを破壊すれば、障壁は消える」


「なるほど……」


リゼが、地図を覗き込んだ。


「つまり、少数で潜入し、この魔導機器を破壊する。それが私たちの任務ですね」


「そうだ。外壁の死角、警備の巡回ルート……シルフィーネ王女が全部、この地図に書き込んでくれた」


「シルフィーネ王女殿下が、そんなに詳細な地図を……」


クローネが、驚いたように目を見開いた。


「なぜ、そこまで……」


「さあ。パフェのお礼だって言ってたけど」


「パフェの……?」


クローネが、きょとんとした顔をした。


「まあ、本当の理由は分からない。でも、彼女が偽の情報を渡す理由もない、だからこの地図は信頼できるはずだ」


僕は、話を続けた。


「僕たちが魔導機器を破壊したら、合図を出す。それと同時に、レグナス殿下の軍が突入する」


「殿下の軍が……」


「ああ。障壁さえ消えれば、あとは数の勝負だ。殿下の軍なら、監獄の警備くらい蹴散らせる」


「そして、囚われた亜人たちを解放する……」


リゼが、静かに呟いた。


「それが成功すれば、ドミニク公爵の亜人部隊は——」


「戦う理由を失う。家族が自由になれば、もう公爵のために命を懸ける必要はないからね」


「……見事な作戦です」


リゼが、感心したように頷いた。


「正面からぶつかれば苦戦必至だった亜人部隊を、戦わずして無力化できる」


「ただ——」


僕は、二人の顔を見た。


「潜入は危険だ。失敗すれば、僕たちは敵地の真ん中で孤立する。命の保証はない」


「……」


「だから、改めて聞いておきたい。本当に、ついてきてくれるか?」


沈黙が落ちた。

リゼが、最初に口を開いた。


「愚問です、ルカ様」


彼女は、真っ直ぐに僕を見つめた。


「私は、主の剣。どこへでもお供すると、誓ったはずです」


「リゼ……」


「例え地獄であろうと、主の傍を離れるつもりはありません」


その青い瞳には、一点の迷いもなかった。


「……私も」


クローネが、小さく、でも確かな声で言った。


「私も、行きます」


「クローネ……」


「アリア様のためです。それに——」


彼女は、少しだけ頬を赤らめた。


「お二人だけに、危険な目に遭わせるわけにはいきません」


——お二人。

その言葉に、どこか引っかかるものを感じた。

でも、今はそれを追及する時ではない。


「……ありがとう。二人とも」


僕は、深く頭を下げた。


「必ず、成功させよう。全員で、生きて帰る」


「はい」


「はい……!」


二人の声が、重なった。

窓の外では、夕日が沈みかけていた。

作戦決行の日が、近づいている。

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