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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

木獣

これは、とある人から聞いた物語。


その語り部と内容に関する、記録の一篇。


あなたも共にこの場へ居合わせて、耳を傾けているかのように読んでくださったら、幸いである。

 おおっと、ここもいよいよ解体工事が始まるのか。

 こうかっちりと壁で遮られちゃうと、本格的に変わっていくんだな、といやでも感じさせられる。人工的な香りが嫌でもしてくるな。

 姿を包んでドレスアップ、というのはマユなりサナギなりのかっこうで自然界にないこともない。しかし、誰かに見られない状況を整えるというのは、相応の理由があると考えちゃうだろう。

 粉塵、飛沫のたぐいがあたりに飛び散らないようにするためとか、あるいは外からの影響を受けづらくするためとか。特に、空気にさらされるだけでも悪い影響が出てしまう恐れというのは想像しやすい。

 当然、皆の目を浴びないようにする……という意図もあるだろう。私たちは目隠しされた向こうで何が起きているのか、想像するしかない。古来より、このように何かを立てて遮るかのような行為には意味が持たされてきた。

 最近、家族から聞いた話なのだが、耳に入れてみないか?


 たまたま家に帰ってきていた兄が話してくれたものだ。

 兄の友人に、とある山の中の盆地の出身であると語る人がいるらしい。どうも、ご先祖様がやらかしたことだかが原因で、その手のスジの人に知られると、少しやっかいなことになるかもしれない、とのこと。

 なので村自体の詳細は伏せさせてもらったらしいが、そこではとある不思議な風習があったそうだ。


 ――ん? 特徴的な風習だったら、それいってもバレるんじゃないか?


 ああ、兄もそう思ったらしいが、どうやら教わった時点でフェイク入り。そして兄もフェイクを入れたという二段構えとのことだ。私に伝わった時点で二回もいじられているのだから、どこが合致するかとかはもはやわかんないんじゃないか?

 ま、ご心配はありがたいがご無用よ。肝心の中身に入ろう。


 植木、だとその友人は話していたらしい。

 そう聞くと、庭とか鉢に植えてある植物なイメージになるが、友人の話してくれたのは別だ。

 どうやら家々に、切り出した木が保存されているそうだ。木材へ加工しておらず、ほぼ切ったままの状態で、人が抱えられる太さのものを三本。

 そして各家の敷地の南東の角っこには、これらの丸太を差し込むための穴が三つ分、儲けられているんだ。

 有事の際には、その丸太を運び出してかの三点に植えこむためにね。


 ――風よけのためとかか?


 確かに夏の季節風は南東から吹き寄せることが多いが、山の中だとどうなのだろうな。

 いずれにせよ、この植木は風対策のためじゃない。ありていにいうと、足場づくりなのだそうだ。


 かの地域だと二か月に一度、木獣もくじゅうが訪れることになっているという。

 木獣は他の獣と違い、他の世界を行き来する存在とされている。いくつもの世界を渡り歩き、こちらの世界でいう二か月に一度、ここへやってきてしばらく飛び回るのだそうだ。

 その際、木獣が停まることのできる足場として、用意されるのがその三本の丸太たちというわけだ。もし、運よく足を下ろしたのならば、その丸太の表面に三又に分かれた足跡が残されるらしいんだ。

 が、姿まで見てしまうことは推奨されない。かの丸太を設置しているときは、指定された期間が終わるまでそちらには近づかず、視線も向けないように注意が成されるようだ。


 木獣は恥ずかしがりや、というと可愛げがあるが、見られるとたちどころに木を抜け出して、宙を突っ走っていってしまうんだ。南東から北西へ向けて、一直線にな。

 友人が聞いた話だと、そのケースがあったのは数百年前の江戸時代。

 木獣のための木を植えていたところ、とある一家のものに落雷し、たちまち火に包まれてしまったらしい。

 そして折あしく、そこへ木獣が現れてしまった。

 木獣の通り道にいなかった目撃者によると、木の上に立つかっこうではなく、木の幹へ溶け込むような形だったと。その姿は影のように黒かったが、あえて表わすなら虎やヒョウに似たものを思わせたとか。


 しかし、それも一瞬のこと。

 ぱっとそこから影が消えたかと思うと、北西へ向けて長い長い「大穴」が空いた。

 すぐそばにあった家の壁がまるくえぐられたかと思うと、次の瞬間には家全体を通り抜け、反対側の壁に至るまで一気に消失していたんだ。

 その通り道には家の者たちの居間もあり、そこのちゃぶ台もろとも家族の姿もなくなっていたらしい。そばには飯をよそった茶碗などが転がっており、ちょうど木獣の通り道にいたことで消されてしまったと見られているとか

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