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木漏れ日交番物語  作者:


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第2話 迷子のギター

朝の 井の頭公園 は、薄い霧が木々の間をゆっくり流れていた。

三枝賢は公園そばの交番を出て、巡回中だった。

公園を訪れる人々に軽く会釈しながら歩く。


ベンチでしゃがみ込む女の子を見つける。

手には“ギター探してます”と書かれた紙。

目には涙がにじんでいた。


「どうしたの? 何か探してるのかな」


女の子は小さくうなずき、声を震わせながら言う。


「お兄ちゃんのギターが、なくなっちゃったの」


張り紙には手描きのギターの絵と説明文が添えてある。


「よし、一緒に探そう。まずは落とし物センターと管理事務所を回ってみよう」


女の子は少しほっとした表情で、賢の後ろをちょこちょこ付いていく。


管理事務所や落とし物センターにも届出はなし。

女の子は不安げな顔になる。


その時、公園の奥からかすかにギターの音が聞こえた。


「ねぇ、聞こえる? ギターの音」


女の子がぱっと顔を上げる。

二人は音のする方へ向かうと、大学生くらいの男の子がギターを抱えていた。


「あの、そのギター……」


大学生は驚いたように振り返る。


「あ、これ……。拾ったんです。ベンチの横に置かれてて」


賢が歩み寄る。


「君が拾ったんだね。ありがとう。でもこれは、この子のお兄さんの大事なギターなんだ」


大学生は恐縮しながらギターを返す。

女の子はギターを抱きしめ、何度も「ありがとう」と言った。


夕方。

交番に戻った賢は、入り口から二人の影を見る。

女の子とお兄さんらしき高校生だ。


「本当にありがとうございました。こいつ、勝手に探しに行って……」


賢は笑う。


「大切なギター、戻ってよかったね。次は名前のストラップでもつけると安心かも」


女の子が賢を見上げて言った。


「けんさんって、やさしいね」


賢は少し頬をかき、静かに答える。


「困ってる人を助けただけさ」


井の頭公園の木々が夕日に染まり、町に少しだけ笑顔が増えた。

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