中編
もともと前後編にする予定でしたが、急遽中編を作ることにしました!
その夜、わたしが憶えているのは枕元で何かが燃えている音と、それをはるかに超える眠気だった。
*
朝、目が覚めるとそこは廃墟と化していた。
あたり一面に充満している煙の匂い。そして圧倒的な視界の悪さ。
私は一瞬唖然としてしまったが、正気に戻った。とりあえず、スマホで母親に電話する。
え?私はじゃあ廃墟で寝ていたの?狐に化かされた?いやいや。そんなことはないだろう…。
「もしもし、つむぎ?!、今どこ?」
「多分、おばあちゃんち。ねえ、私昨日までおばあちゃんちに行っていたよね?」
「え?何言ってるの…?」
沈黙の時が流れた。なんでだろう、私は昨日まで祖母の家にいたはずなのに、どうして?
ここはどこなの?え? しばらくして母親の声が聞こえた。
「とりあえず、まだ濃雨村なの?」
「うん」
「すぐ帰ってきなさい、バス停の場所、わかるわよね?」
「まあ、うん」
「じゃあ、駅まで行って電車で帰ってきなさい。◯✕駅のロータリーで待ってるから」
「あ、うん。じゃね。」
私今の今までどこにいたんだろう。とりあえず廃墟(?)を出てみた。
外はむさ苦しい暑さだった。濃雨村で雨が降っていないことなんて、初めてだ。
そしてさっきまで冬だったはず。なんでこんなに…異常気象にしてはやけに極端すぎる。
私は駆け足で駅へ向かった。
駅へ向かう途中の田んぼでのぶえお婆ちゃんに声をかけられた。
町内会のボスの のぶえおばあちゃんはトマト農家を営んでいる。80過ぎているのに元気ハツラツしている、ハイカラな(これは小説とかでしか聞いたことないけど多分死語)人だ。
「あ、つむぎちゃん?」
「あ、のぶえおばあちゃん」
「夏に来るなんて珍しいわねぇ」
「今…何月ですか?」
「何月って。冗談きついわよ」
「いや冗談抜きで。何月ですか?できれば何日かも。」
「今は…7月25日だけど。」
「え?」
私は一晩寝ただけで、半年もの間過ごしたの?
うそ、うそうそ。
私は何故かここにいてはいけないような気がして、一目散に走り出した。
いや、そんなことはない。昨日のは夢で今も夢の中にいる。目覚めたら自分の部屋で…
いや、これ以上妄想を膨らませるのはよしたほうがいい。そう頭の中で考えても、
考えてしまう。やめてやめてやめて。
気づいたら私は、駅に着いていた。その時、電車がすぐ来るということで、
私はホームへ行った。取り乱していたのも、もうすっかりおさまっていて、ただ息をすることだけに
集中していた。
家に帰り着くと母と父が勢いよく玄関の前に出てきて私を抱きしめた。
「馬鹿っ!心配したのよ!」母が私をはたいた。父はただ無言で…、でも滂沱の涙を流していた。
その日はふかふかのベッドに寝かされ、事の顛末を話すのは明日でいいからと言われ私は眠りについた。
翌朝、目が覚め朝食の席で事の顛末を話した。濃雨村に母に連れて行かれたこと、でもそこで目が覚めたら朝だったこと、死んだはずの祖父がそこにいた事。
二人は顔を見合わせそれから自家用車に乗せられた。両親に理由を聞いても何も答えてくれなかった。
いつもは乗らない高速に乗る。なにかを予感していた。
「久城さんのところへいくぞ」父は私にぽつりと言った。