表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ダンジョン探索者兼中学担任の教え

作者: リース

「お前らー 以前配った『将来の職業希望書』 ちゃんと書いてきたかー?」


教室内で ぶっきらぼうに私の担任の先生が声をかける


俺はもちろん「ダンジョン配信者」と書いて提出した


俺だけじゃない 俺の友達はみんなダンジョン配信者になるのが夢だ


10年前に突然この世界に現れた大きな洞窟 通称「ダンジョン」


最初は軍隊が突入していたが 人手が足りないと言うのと ダンジョン内では超人的な力に目覚めると言う2つの理由により次第に一般開放がされていった


最初の内は腕に自慢のある実力者がこぞってダンジョン内に入っていったが そのうちダンジョン内を攻略する配信を始めた人が居た


それがダンジョン配信ブームの始まりだ


ダンジョンに入れば超人的な力に目覚める上に 配信で人気者になり お金も稼げるという 一石三鳥と言う美味し過ぎる職業だ


「ほう・・・ダンジョン配信者ねぇ・・・ こいつも こいつもか」


先生はぶつぶつと集められた希望書をペラペラと見ていた


そして見終わったと思ったら


「はい注目ー まさかこのクラス全員が『ダンジョン配信者』を希望しているという衝撃な事実が発覚しましたー」


なんと!ダンジョン配信が人気のある職業だとは言え まさかウチのクラス全員がとは・・・


「まさかお前達がこんなダンジョン配信を希望してるとは 先生思ってなかったぞ


そこでだ 先生が特別授業をしてやろうと思う お前らー ついてこいー」


そう言うと先生はどこかに歩いていく


「なんだろうな?」


「どこに行くんだろう・・・?」


「もしかしてダンジョンに連れて行ってくれるのかな?」


「バーカ そんな都合よくダンジョンがある訳ないっての」


そんな雑談をしながら俺達は先生についていくと 次第に学校の近くにある森の中に入っていった


そして・・・


「これを見ろー」


先生が手を伸ばした方向 そこにはぽっかりと大きな穴が口を開けていた


「先生・・・!?これってまさか!!」


「ああ 正真正銘 ダンジョンの入口だ

昨日できたばかりだからまだニュースにもなってない」


「おおおおおおお!!!」


「先生!まさかここに入って授業ですか!?」


「ああ その通りだ 実際にダンジョンを経験した方がいいと思ってな」


「うおおおおおおおおおおっ!!!!」


マジか! まさかこんなに早くダンジョンに入れるとは思わなかった!


初めてのダンジョン・・・わくわくする!


「じゃあダンジョンに入るからな そこの剣を取ったら入ってこい 足元に気を付けろよなー」


そうして俺達は剣を取り ダンジョンの中に入っていった


・・・


ダンジョンの中は意外と暗く 配信動画でみるよりも遥かに見通しが悪かった


そしてなんとなく肌寒い


だけど それを吹き飛ばす事があった それは


「おお?なんか 力がみなぎってくる気がするぞ!」


「私も!」


「すげぇ!これが超人的な力か!これならモンスターなんて楽勝だぜ!」


そう 俺も感じていたが 体の中から力が膨れ上がるのを抑えられない


今すぐにでもこの力を試してみたい!


そう思っていたら すぐにでもチャンスはやってきた


「グルル・・・」


オオカミが1匹 丁度いい!


「俺が倒してやるぜ!」


先頭に居た俺の友人の1人が勢いよくオオカミに向かって戦いに行った


それに気が付いたオオカミは大きく飛び掛かる


グチュッ!!!


「えっ・・・?」


ブシュウウウウウウッ!!!


俺の友人はその動きに反応できず 首元を食い破られた


そこから血が噴水のように大量に噴き出す


「き・・・きゃああああああああっ!!!」


パニックになったクラスメイト達が一斉にダンジョンの出口に向かって走り出そうとする


しかし


「グルルル・・・!」


「な なんでこっちにもオオカミが居るんだよ!」


いつの間にか入口の方にもオオカミが居た


一体いつの間に回り込まれたのか・・・!


「ぐああっ!」


「いやあああっ!!!」


そんな事を考えてるうちに クラスメイトが前から 後ろから次々と食い破られていく


周りに立ち込める血の匂いと血だまり


怖い・・・怖い・・・! そんな こんなハズじゃなかったのに・・・


ダンジョンに行けば超人的な力が手に入って それでモンスターを楽々と倒して 人気になれるはずだったのに


「おーい お前ら ビビッて無いでちゃんと戦えー」


どこからか先生の声が聞こえてきた


そうだ!探索者である先生なら きっとこの状況を何とかしてくれるはず!


「せ 先生!助けてください!俺死にたくないです!」


誰かが俺より先に声を上げた しかし・・・


「何言ってんだ?これがお前らの望んだ探索者だぞ?お前ら自身で何とかしろ」


「そ そんな!」


え・・・何言ってるんだ?何で先生は俺達を助けてくれないんだ・・・?


「ち 畜生!」


クラスメイト達が必死に剣を振り回す


しかしオオカミはひょいひょいとその隙間を縫い 的確にクラスメイトの腕や首 動を狙い 食らいつく


・・・ そして クラスメイトの声は誰も聞こえなくなった


残ったのは俺だけだ


「グルル・・・」


2匹のオオカミがゆっくりと俺に迫ってくる


どうしてこんな事に・・・嫌だ 死にたくない 死にたく・・・


「グルアアアアアッ!!!」


そんな事を考えていると 2匹のオオカミが俺に向かって飛び掛かり・・・


俺の意識はそこで途絶えた







「はい そこまで!」


「!!?」


先生の声が聞こえると同時に俺は飛び起きた


ここは・・・教室?夢だったのか?


でも あまりにもリアルすぎる夢だった・・・


きょろきょろと教室を見渡すと みんな真っ青な顔で滝のような汗を流していた


「実はお前らに幻覚を見せた ダンジョンに行ったと言う幻覚をだ

お前達が得た力はダンジョン素人の平均的なもので

お前達が戦ったオオカミは ダンジョン1回に出現するポピュラーなモンスターの1種だ

だが いくら超人的な力があろうと それを扱う人間に実力が無きゃ ただの役立たずだ

ましてや!」


先生はドォンと教壇をへし割れるほど強く叩く


「ダン ジョン 配 信なんて舐めた精神でダンジョンに入ったら死んでも当たり前だ

いいか ダンジョン探索って言うのは命がけだ いつ死ぬかわからんし 取返しのつかないケガを負うことだってある

だから俺はこうして幻覚とは言えダンジョン探索を経験させたんだ どれだけ危険な事か わからせるためにな」


その声には強い怒りが込められていた

確かに実感した ダンジョンが モンスターが あれだけ恐ろしいものだとは思わなかった・・・


「金を稼ぎたいなら普通に社会人なりコンビニ店員になればいい

人気者になりたいなら歌でも歌ってればいい

それでもなお『ダンジョン配信者』になりたいと思うなら言ってくれ 俺が死んだ方がマシだと思うぐらいの稽古をつけてやろう」


「ヒイイッ!大丈夫です!」


もうこりごりだ!もうダンジョンなんかには関わりたくない!


みんなも同じ気持ちだったのか 一斉に首を横にふる


それを見た先生は 普通に授業をし始めた





ある日 俺がよく見ていたダンジョン配信者が モンスターに襲われて死んだらしい


やはりダンジョンは危険な場所だ 決して配信なんてやるような所では無い


先生に教えてもらったことを 俺は忘れないでおこうと思った

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 成功するのはどこの世界でもごく一部の特殊な才能を持つ人だけなのだ。 [気になる点] 先生って何者? [一言] 現実は辛い。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ