4.アクアリア遺跡
ディーンはアクアリア遺跡の入り口で待つことにした。
ランディアス王国のいわゆる本土のランディアス島からからかなれたリタリカ大陸にあるアクアリア遺跡は一種の観光地として有名で、
ディーンが待ち合わせしている入り口には観光客らしき人物がちらほらと見ることができた。
ディーンは一応、任務ということで王国騎士団員とわかるように支給されたロングソードを腰に帯びて首から証票をぶら下げていた。
制服でと思ったが、騎士学校に制服は置きっぱなしにしていることに気がつき私服で出かけるようにしていた。
久々に持つ剣は少しばかり重たく感じたが、
柄を触りながら感覚を思い出すようにしていた。
まだ、怪我をした時の記憶を思い出して少しばかり嫌悪感や恐怖を思い出すが今回は抜くような任務でない事もあって自分に言い聞かせる事で心を落ち着けていたーーー
まだ、リズ一行が見えないので、ぼうっと遺跡とそれを包むようにある木々を見つめながら....
心を落ち着かせていた。
一瞬、魔物に傷つけられる仲間の記憶を思い出してしまったーーー
怖くて、動けなかった自分が本当に嫌で仕方がなかった。
どれだけ剣が優秀だと言われても実戦で仲間や自分を守れなかったら意味はない。
昔、ロイヤルポートを襲った海賊を撃退する頼りになった騎士としての兄デイブと父アランのことを思い出してその距離を感じてしまうーーー
街で気に入らない奴がいれば力でねじ伏せて、威張り散らしてただけの不良の自分がいざ、戦いとなった時に何もできなかったのを嫌だと感じてーー
必死になって騎士になることに邁進した。
でも、結局。
初めての任務では剣を抜いて、戦ったけど何もできなかったーー
強くなったつもりでいたのかもしれない
そんな自分が嫌で嫌で仕方がなかった。
ディーンはそう思い始めたので息を吸って、呼吸を意識して心を落ち着けることに集中した。
するとそこにやってきた二人の少女を見てディーンは渡されていた写真を確認して彼女達が、リズとアラベルだと分かった。
同い年ぐらいの少女は茶髪のセミロングの少女でどこか、ディーンは見惚れてしまっていた。
理由は分からなかったが、どこか心に止まったと言うのが正解に近いかもしれない。
彼女の服装は白いローブを身に纏っていて手には魔術で使用するような杖が握られていたーー
明らかに巫女というのに相応しいような格好をしていた。
もう一人の少し年上そうな人はぱっと見では背も高く麗人といいう言葉が似合いそうな男性に見えたが....
ディーンはその人が女性であるのを知っていたので性別はわかることができた。
彼女は桃色の髪を後ろで束ねていて腰に細身の剣を帯びていて羽のついた帽子を被り服装も青色の国民銃士隊の制服を身につけていた。
ちょっと遠目で見れば、可愛い聖職者とイケメンの武人という感じに見ることもできるような気がした。
ディーンは王国騎士である証である証票を二人に見せるようにして声をかけた。
「あの。リズさんとアラベルさんですよね?俺、王国騎士のディーン・フォルグレンって言います。よろしく」
それを聞いて驚いた表情をしたのは、アラベルの方だった。
それもそのはずだ、フォルグレンという名字は武人なら誰でも知っているような名前だからだーーー
名前負けしてしまうのがいつも辛いと感じるディーンだったが、父や兄の功績がすごいことは誇らしかった。
でもーーー
「デイヴィッド・フォルグレンの歳の離れた弟のディーンか...
どことなく似てるな....
申し遅れた、私はアラベル。よろしく」
そうどきとなく、男性らしいというべきかハキハキとしたアラベルはそう言って手を出してきた。
ディーンはそれに応じて握手をした。
「リズ...です」
リズはそう言って、どこか怯えてるのか恥ずかしいのかわからないが、アラベルの背中に隠れるようにして顔だけを覗かせながらディーンにそう言った。
ディーンはリズと目を合わせて軽く会釈をした。
リズは人見知りなのかなとディーンは感じ取ったが、どこか違う理由もあるように感じられた。
「リズ。ディーン君は大丈夫...敵じゃないから」
「う....うん。わかってるけど、なんか...違うんです」
思わずディーンはそれを聞いてこう言った。
「え、何が!?」
ちょっと初対面なのにそんなこと言われるのもなんかショックだなとディーンは思った。
笑みを見せてとりあえず、友好的であることは示しておきたかったーーー
少しばかり空気が重たくなったのを見越してか、アラベルが話を切り出してきた。
「フォルグレン騎士団総長からは任務の内容はなんと聞いているんだい?」
「あ、えー。リズをリンドロンドへ送れって言われてます」
「それだけ?」
「はい...」
ディーンがそういうとリズがこう言ってきた。
「まだ、帰りたくない。やるべきことがあるの」
ディーンはそれを聞いて頷いてこう言った。
どことなくではあったが、彼女自身何か大切な用事があるようでそれを止めてまで連れて帰るというのをしないでもいい気がしたからだった。
「オッケー。じゃあ、それをしに行こうか」
「いいんですか...?」
そうリズはそうディーンの顔を覗き込むように凝視して聞いてきた。
可愛いい女の子にそうされるのはディーン離れておらず思わず顔を赤らめた。
「じゃあ。早速行こう。急ぐんでしょリズ?」
アラベルはそう言いながらもどこか周りを警戒しながら、リズにそう言った。
リズはそれを聞いて頷いて歩き始めた。
その横に着くようにアラベルも歩き始めたーーー
アラベル着いてきたディーンにこう聞いてきた。
「ディーンは縦のフォーメーションはわかる?」
「あ、はい。騎士学校でやりました。ポイントマンやります...
ところで、どこに向かうんですか?」
「彼女に聞いてくれ。私も詳しくは聞いてないんだ。
庶民院の命を受けて、顔馴染みだからってことで私が付き添いになっているんだ....」
「なるほど...リズさん?どこに向かうんです?」
ディーンはそう振り返り、リズの方を向いて話しかけるとひゅっとアラベルの影に隠れてこう言った。
「リズさんはやめてください。なんか....いやです....。
あと、秘密ですーーー」
どことなく恥ずかしそうな雰囲気だったので、
「あーうん。わかった....」
と答えて歩き始めたーーー
もしかして人見知りなのだろうかとふと思えた。
とりあえず遺跡は何度か観光で来たことはあったので、とある祭壇の場所までは一直線の道だったので迷うことなく進むことができた。
祭壇付近は、
ちょっとした名所で高台にあって青い花が咲く綺麗な場所として人気を博しているところだ。
見物客も時間が遅かったのもあって誰もいなかった。
祭壇に登って、アラベルがこうリズに聞いた。
「目的地はここ?」
「うん。ここ...」
リズはそういうとしゃがみ込んで地面に掘られた彫刻を手でなぞってこう呟いた。
「ここのはずなんだけど...水の精霊がいない」
リズは持っていた杖を石板のとある模様の溝に刺して目を瞑った。
それを見たアラベルはディーンの手を掴んで、祭壇から降りるようにした。
リズは目を瞑りなのかぶつぶつと呪文のようなものを唱え始めていた。
すると、風が吹き始めて青い色の光の線が現れてリズを中心に魔法陣へと変化して行くのが見えた。
幻想的な雰囲気の中で、リズは集中して呪文を唱え続けていたーー
風が吹き矢に魔法陣が消えた時だった。
祭壇から一人の若い女性が光と共に現れたーーー
「水の精霊....」
ディーンはそう歴史の授業の教科書で見た絵を思い出してそう呟いた。
水の精霊はリズに近づいてこう言った。
「我は、水を司る者。我がいるのは、ランサムネルの社。そこで封印の巫女を待つーーー我が身を捕らえるものもそこに....」
「巫女はそこに向い、汝を救う」
リズはそう呟くようにいうと、水の精霊は光と共に消えて行ったーー
ディーンは初めて見る光景に驚きと感動を覚えていた。
目の前で、話に聞いていた封印の巫女が行う精霊術を見ることになったからだ。
唖然とただ見ていた、ディーンとアラベルにリズはこう言った。
「ランサムネルってところに行きたい」
アラン「ところでさ、デイブちゃんと準備できてるのか?」
デイビッド「え!親父なんでこんなところにいるんだよ!?」
アラン「まーいいじゃんいいじゃん。弟が頑張って家を出たぞ。デイブもそろそろ帰ってこいよ」
デイビッド「いや。まだやることがあるんだ...」
アラン「えーと何何...このページにあるかな。お、これはまだ家に帰れないな」
デイビッド「何みて言ってるんだよ親父...」
アラン「とりあえず、リズがこの物語のキーパーソンなんだろ?」
デイビッド「ああ、ランサムネルに無事に行ってもらわないと困るんだ...」
アラン「デイブはそこで初登場予定...だろう?」
デイビッド「あ、あー多分な。作者がまだそこまで描いてないから予定だな」
アラン「うん。まぁーいいか。とりあえず、頑張れよ息子ども」
ディーン「え!?呼んだ!?」
アラン「ほい。ディーン告知して」
ディーン「え、はい。次回、銃士アラベルの実力。乞うご期待!」
デイビッド「ディーンはいつからここにいたんだ...」