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おはようのキス

"偽の恋人"生活が始まります。


ただイチャついてるだけの2人です。

 昨日、クロードと"偽の恋人"になったジゼルは早起きをした。

 

 緊張して寝付きがよくなかったのもあってまだ眠い。


 朝、出勤前に顔を見に行くと言っていたクロードが来る前に、せめてベッドから下りて髪くらいは梳かしておきたい。そう思うのにとにかく眠い。上体を起こしていても眠すぎて座位のまま動かないジゼルの様子に、アンが見兼ねて髪を梳かしてくれた。


「着替えが済みましたら結い上げますので、今はこれで」

 ゆるく三つ編みにしてサイドに流す。とりあえずボサボサじゃないだけいいか、と思った時、ノックの音と同時に扉が開いた。


 キラキラしたクロードが1日目の朝、やって来た。


 夜露の水滴をその葉に湛えたまま朝日を浴びて輝く新緑のように、とても爽やかで煌びやかな様は寝起きの目に眩しすぎだ。


「おはよう、ジゼル」

 ベッドまで近づいてそっと肩を抱き寄せ、額に口づけを落とす。その甘ったるい事ったらなかった。


「おおおおはよう、クロード……」

「まだ眠そうだね、昨夜は眠れなかったの?」

 頬を撫でられる。三つ編みの毛束を持ち上げられそこにクロードが口づけを落とせば、たちまちジゼルは真っ赤になった。ベッドの端に腰掛けたクロードはとても満足気で、職場で冷徹だなどと言われているはずもないくらいに蕩けた笑顔をしていた。


 ――クロード坊っちゃまは世間では"冷徹"だなんて言われてるらしいけど、あのお顔、冷徹のれの字もないわ。


 アンが、少し開けてある扉横に立ち、目を細めて二人の様子を見ていた。


 ――御婚約者でもない坊っちゃまをお嬢様の寝室に招き入れるなどしてはならないのだけど、"恋人"を装うらしいしので仕方ありません……旦那様、お赦しください、扉は閉め切っておりませんから。けどそうなるのも時間の問題ですよね? きっと。


 心の中で主人に手を合わせる。こういう事を思っていないと、イチャつく二人を目の当たりにして耐えられそうもなかった。


 ――坊っちゃまの計画は、まずお嬢様に恋人との距離感というものに慣れてもらう。そうして外に出かけ見せつけ、最終的には旦那様方にお付き合いのご報告と許しを得る、と。お嬢様はこういう事は鈍い方なので十日で何とかなるものなのか……それにしても、"偽"とは到底……。


「ではアン、昼間はジゼルをよろしく頼むよ。まだ少し寝かせてあげて」

「かしこまりました」

 クロードはベッドから扉へ向かった。ノブに手を掛け開けたところでジゼルが声をかけた。


「行ってらっしゃい、クロード。がんばってね」

 言いながら手を小さく振る。

 クロードは「クッ」と呻いてツカツカとベッドまで大股で戻ってきた。


「忘れ物?」

「――ああ」

 背を屈め、ジゼルの頬を両手で包んで唇に口づけた。


「行ってきますの口づけを忘れていた。また夕方くる」

 顔を上に向けたまま固まるジゼル。クロードが笑顔で部屋を出ていくのは見えていたが、まともに見ていなかった。気づいたら扉が閉まっており、我に返って急激に襲ってきたときめきに耐えられず布団に顔を埋めて唸った。


「なっなになになに〜!」

「恋人の朝ですからね、あれくらいは普通です」

「あれが普通なの?!」

 

 ――だって、キ、キ、キスとか、偽の恋人に必要?! そう、"偽"なのに。


「もう少しお休みになりますか?」

「ううん……もう目が覚めたから着替えて庭を歩いてくるわ。ところでその花はどうしたの? アンが摘んできてくれたの?」

 アンが両手で抱える小さな白い陶器製の花瓶には、赤い薔薇の花が一本活けてある。


「クロード様がくださいました、これから毎朝届けると仰って……」

 毎朝の訪問に口づけと花……! ジゼルは初日でこんなに甘い"偽"を十日……溺れてしまわないか不安も過ぎる。 


「これだけでお父様達はわかるんじゃないかしら、十日も要らなさそうじゃない?」

「十日かけて恋人らしさを出していく計画なんでしょうから、やはり必要かと。ただ、お二人の気持ちが固まれば旦那様へのご報告はいつでも構わないのではないでしょうか」

 アンはニコッとそう答えた。


 ――気持ちは固まっても、か。とにかくお見合いを回避すべく恋人の存在をお父様に知らしめられたらいいのだから、慣れていかなければ。



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