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旅の記録を冒険の書に書きますか?  作者: 春夏秋冬 暦
2/3

見知らぬ草原

更新何年ぶりだよということで、久しぶりに書き起こしたものを完結させようと、再び筆を執り始めました。最近、何も小説を書いていなかったので、地の文とか会話のテンポ感とかを完全に忘れています。書いているうちに上手くなりたいなあ。

ということで、前書きはこの辺にして、本編どうぞ!

 風が吹いていた。


 草の匂いがする。


 それに――土の匂い。


「……ん」


 俺はゆっくりと目を開けた。


 視界いっぱいに広がったのは、青い空だった。


 雲がゆっくりと流れている。


「……空?」


 寝転がったまま呟く。


 おかしい。


 さっきまで、図書室にいたはずだ。


 春姫(るな)時雨(しぐれ)と一緒に、本を見ていて――


 それで、本が光って。


 それから。


「……あれ?」


 体を起こす。


 周囲を見渡す。


 そこは、広い草原だった。


 どこまでも緑が広がっている。


 遠くには森が見える。


 さらに遠くには、山のような影も見えた。


 学校どころか、町すら見当たらない。


「ここは……どこだ?」


(つばめ)!」


 聞きなれた声が聞こえた。


 振り向くと、少し離れた場所に春姫が立っていた。


 自慢の黒い長髪が風に揺れている。そんないつもの光景に、目に映る非日常な景色が、否応にも現実を突き付けてくる。


「無事だったのね」


「春姫!」


 その隣では、時雨が頭を押さえながら起き上がっていた。


「いてて……」


「時雨も大丈夫か?」


「いやー、頭がガンガンするよ……」


 まだ頭が痛いのか、頭を押さえながら時雨は周囲を見回す。


 そして固まってしまった。


「……え?なにこれ?ここどこ?」


「それは……」


「俺たちが聞きてえよな……」


 全員が同じ疑問を抱いた。


 当たり前だ。さっきまで本に囲まれた図書室に居たはずなのに、気付けば図書室でも教室でも、ましてや学校でもない、ただの草原に放り出されているからだ。


 春姫も辺りを見渡している。


「どう考えても、日本じゃないわね」


「だよなぁ」


 俺はため息をついた。


 右に草原。


 目の前に森。


 かなり遠くの方に山。


 建物は一つもない。


 まるでゲームの世界みたいだ。


「夢……じゃないよな」


 俺は自分の頬を強くつねる。


「痛っ!」


「その反応を見る限り、夢じゃなさそうね……」


 春姫が冷静に言った。


「じゃあ、つまり……」


 時雨が言う。


「ぼくたち、異世界に来たってこと?」


「いやいやいや」


 俺は思わず笑う。


「そんな最近のラノベみたいな話あるわけ――」


 俺が言葉を言いかけたその時、手の中で、何かが光った。


「ん?」


 視線を落とし、手の方を見る。


 そこには、いつの間にか握っていた一冊の本があった。


 赤い装飾の表紙。


 革のような質感。


 さっき図書室で見つけた本とまるで同じだ。


「……あ」


 俺は呟く。


「これ」


「図書室の本じゃん!」


 時雨が叫んだ。


「なんで持ってきてんの!?」


「いや、勝手に……」


 俺が答えようとした瞬間だった。


 本が、再び光る。


「うわっ!?」


 ページがひとりでに開いた。


 ぱらぱらと音を立ててめくれていく。


 そして。


 途中のページで止まった。


 そこに、文字が浮かび上がった。さっきまで白紙だったはずのページに。


「……え?」


 俺は本を覗き込む。


 そこにはこう書かれていた。


 


 第一章 旅立ち

 

 


 その下に、さらに文字が現れる。


 


 第二章 見知らぬ草原


 


「……なにこれ」


 時雨と春姫が本を覗き込む。


「俺たちのことが書かれているよな?」


 そうだ。


 さっきの出来事そのままだ。


 終業式のこと。


 図書室で話したこと。


 本に名前を書いたこと。


 そして――


 ここに至るまでの今日の出来事が全部書いてある。


「ちょっと貸して」


 春姫が本を受け取ろうとするが……


 バチッッ!


 何かの力によって弾かれてしまう。


「……っ」


「大丈夫か!?」


「大丈夫よ。それより……どうやらあなた以外が本に触ると何らかの力が働いて、拒絶されるみたいね」


「まじか……」


 本に目を落とし、他に何か書かれていないかページをめくってみる。


 ほとんどが白紙であったが、何ページか埋まっていた。

 


 現在地

 ヴァルディア中央平原


 


「ヴァルディア?」


「聞いたことない地名だねー」


「そこのページは、地図のようね」


 まだ、空白で溢れている地図。


 それは地図と呼ぶには、あまりにも心許ないものでった。


 他のページにもないか確認している、その時だった。


 森の方から、何か音がした。


 ガサッ。


 三人同時に振り向く。


「……今、なんか音がしなかった?」


 時雨が小声で言う。


 森の入り口。


 草が揺れている。


 そして。


 低い唸り声が聞こえてきた。


「グルルル……」


 ゆっくりと、影が姿を現す。


 白い体毛に包まれた狼だった。


 だが。


 普通の狼じゃない。


 大きい。


 明らかに大きすぎる。


 体長は一メートル以上ある。


「……え」


 時雨が固まる。


「なにあれ」


「狼……だよな?」


「いや、サイズおかしくない!?いくら何でも、大きすぎるよね!?」


「そうね。あんなに大きな狼見たことないわ」


 狼はこちらをじっと見ている。


 そして。


 一歩、近づいてきた。


「ちょっと待って」


 時雨が言う。


「これ……ヤバくない?」


「ヤバイな」


「逃げた方がいいわね」


 だが、その瞬間。


 狼が走り始めた。


「来たよ!」


 俺はとっさに地面に落ちていた枝を拾い、狼に飛びかかる。


 ただの木の枝でないかができるわけない。


 ただ飛び出しただけの犬死になるかもしれない。

 

 けど、飛び出すしかなかったんだ。


「うおおおおお!」


 俺は枝を振り回す。


 だが、当然ながら効くはずがない。


 狼は羽虫を払うかの如く、爪を振り下ろす。


「危ない!」


 春姫が叫ぶ、その時だった。


 本が、再び光った。


 まばゆい光。


 ページに文字が浮かび上がる。


 


 記録(ログ)開始


 


 さらに文字。


 


 職業(クラス)解放


 


 俺の体が光に包まれる。


 その光に目が眩んだのか、狼は攻撃を止め、後ずさった。


「な、なんだ!?」


 気がつくと。


 枝を握っていた右手には剣が握られていた。


「……え?」


 いつの間にか、金属の剣を持っている。


 本に文字が刻まれていく。


 


 ツバメ

 職業:剣士


 シグレ

 職業:盗賊


 ルナ

 職業:治癒士


 


「マジかよ」


 思わず呟く。


 目が慣れた狼はさっきよりも勢いよく俺に飛びかかる。


 反射的に剣を振った。


 ガキン!


 爪と剣がぶつかる。


「うおおおおおお!」


 力の限り押し返す。


 明らかにいつも以上の力が漲っていることが自分でもわかる。


 狼がバランスを崩す。


「今だ!」


 時雨が狼を目がけて飛び出す。


 飛び出してきた時雨の手には短剣があった。


「なんで武器持ってんだよ!」


「ぼくだって知らないよ!」


 時雨が狼の横に素早く回り込み、短剣で切り刻む。


 狼は突然の痛みに行動が止まる。


 その隙に、俺は剣を振り下ろした。


「はあっ!」


 剣も振ったことも握ったことすらないのに、体が自然と斬るための動きを取る。


 剣は狼の体に深い傷をつけ、狼が悲鳴を上げる。


 さらに。


「やぁ!」


 時雨が短剣で追撃。


 そして。


「二人とも、下がって!」


 春姫の手が光っている。


 淡い光が俺たちを包んだ。


 体の痛みが消える。


「回復魔法……?」


 俺が呟く。


「そんな気がする」


 春姫が答える。


 狼はふらつき始めたその隙に。


「今だ!」


 俺はもう一度剣を振る。


 狼を屠るための最後の一撃。


 ≪クロス・スラッシュ≫


 放たれた二本の刃は狼に深いダメージを負わせ、そして、絶命させた。


 すると、狼の体が光に包まれる。


 そして。


 消えた。


 狼がいた場所には、小さな石といくつかの骨と牙だけが残った。


 静寂が生まれる。


「……」


 しばらくして。


 時雨が言う。


「ねえ」


「ん?」


「今の」


「完全にRPGだったよね」


「……だな」


 そんな冗談で俺は苦笑した。


 本がまた光る。


 ページに新しい文字。


 


 第二章


 中央平原にて

 魔獣ウルフを討伐


 


 さらに。


 


 新しい目的地

 ウグイト村


 


 俺たちは顔を見合わせた。


「……村?」


 俺が言う。


 本の地図のページに新たな地名が刻まれていた。


 地名が刻まれた西の方角にある丘を見る。


 その向こうに、村があると示されている。


「その向こうに人が住んでるかもね」


 春姫が言う。


「行くしかないね」


 時雨が笑う。


 俺は本を見る。


 続きには、こう書かれていた。


 


 旅を続けますか?


 ▶YES


 NO


 


 俺は迷わず言った。


「YESに決まっている」


 学校が終わったばかりの夏休みなんだ。

 

 こんな非日常もありかもしれないな。


 三人は歩き出す。


 見知らぬ草原を。


 俺たちの――


 冒険が、ここから始まった。

読んでいただきありがとうございます。

誤字脱字の報告だけでなく、感想もくれると嬉しかったりします。

分かる人には、分かるんですが、実はある昔のゲームから着想を得て、この物語を書いています。気付いた方がいましたら、感想で書いてくれると嬉しいです。ちなみに、筆者は当時小学生で、100時間はするくらいにはハマっていましたww

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