6話 私の兄
「僕が兄だって分かるのか」
ケヴィン兄さんは少し驚いたように私を見つめ返してきました。
私もとても驚いています。
「アネットと同じ、おめめ」
私は自分の瞳を指でさした。
10歳である今の私と、将来私の事を殺す兄との接し方が正直分かりません。
愛想がよく見えるようにとりあえずニコニコと笑います。
とにかく、今は悪い印象を与えないようにします。
「アネットお嬢様ですよね、なぜこんなところに」
兄の後ろから剣を腰に着け、護衛の騎士が私を見て驚いていた。
もしかしたら、外で遊んでいたことを父にまで報告されるかもしれない。
そのことを考えた時、ヒヤっと背筋に悪寒が走った。
まだ自分がどのような状態にあるのかも手探りな状態なのに、そんなことをされるのはとても困る。
私は子どもらしく、許される理由を一瞬で考えた。
「お腹すいたの」
私は兄の後ろを指をさします。
向こう側には他の兄弟たちが生活する城がありました。
「美味しい匂いがする」
ちょうど食事の時間帯だからだろう、風に乗って美味しい匂いが微かにしていた。
「あぁ、この匂いにつられて来たんですね」
護衛の騎士は”確かに少し交じってる”とスンスンと匂いを嗅いで言った。
すると兄はゴソゴソと洋服を探し始めた。
「どこに入れたかな、」
上着のポケットからハンカチの包みを出してきた。
「クッキー、食べるか?」
兄がハンカチの包みを開けると数枚のクッキーがあり、一つつまんで私の前に見せた。
「あーん」
私はレナにいつもしていたように、兄のつまんだクッキーをそのままパクっと口に入れた。
「甘くておいしぃ」
クッキーはバターの甘い味がしてとても美味しく、もぐもぐと食べていると護衛の騎士をジッと見ていた。
流石に、10歳といっても王族の娘が人前でこれはダメだったのかもしれない。
案の定兄を見るとびっくりしていた。
これ以上2人と話していると、また墓穴を掘ってしまいそうで私は逃げる事にした。
「い、今の内緒ね!ご飯前におやつ食べると怒られるの、」
しっかりと口止めもしておく。
どのぐらい効果があるかは分からないが、しないよりは良いいいだろう。
私はパタパタと来た道を走った。
「アネット戻るね、おにーちゃん」
私は思い出したように、くるっと振り返り後ろにいる兄にさよならの挨拶をする。
兄も後ろの騎士も特に反応は無いように見える。
もうしばらくは会わないだろう。
私は逃げるようにして来た道を走った。