5話 再会
レナに図書館で本を借りてもらい、読み進めること数日間。
前の人生も本を読む習慣はなく、文字が読めると言っても読み終わるまでびっくりするほど時間がかかっている。
歴史も語学も絵本レベルからスタートすることになった。
今日も成長しているかわからないが、絵本を読んでいる。
「なんだかお嬢様、急に大人びた気がしますね」
レナが読書をしている私のそばにきて、真面目な顔で呟いた。
「えっ、そうかなぁ」
あ、あぶない。そんなふうに見られていたなんて。
私が10歳の時ってどんな感じだっけ、、
「本を読むようになったのもそうですが」
「お野菜も残さず食べるようになりました」
「おねしょも無くなりました」
うそでしょ?!
確かに私の中身は18歳ですから。
怪しまれないように気を付けないと。
「つ、疲れちゃったし外に遊びに行ってくる!」
「危ないことしては駄目ですからね」
「分かってる〜!」
私はそのまま玄関のドアを開けて外へ出た。
もし私が未来から来たなんていたら、まず信じないだろうし、頭のおかしい子だと思われるだろう。
「気をつけないと、、」
天気が良ければ毎日のように外に行って、探索をしていたのでこの周辺はだいぶ慣れてきた。
前もずっとここで暮らしていたが、自分の身長が変わると目線も変わるもので18歳の時の記憶している環境とどうにも同じ場所として捉えられないのだ。
「あれ?誰かいる?」
しばらく何も考えず歩いていると、人影を見つけた。
2人いるようだった。
過去にきてから1度もレナ以外の人には会っていなかった。
思ったよりも遠くへ来てしまったのかもしれない。
『見つかったら怒られる』
私は息を止めて咄嗟に隠れた。
ゆっくりと来た道を引き返そうとしたら、体が茂みの枝に引っかかってしまい音が出た。
ガサッ!
「誰だ」
しまった。
私はその場で固まってしまった。
「どうしました、ケヴィン様」
「いや、誰かそこの茂みにいるみたいなんだ」
向こう側にいる2人の会話がきこえる。
ケヴィン?
その名前を聞いて私の心臓は大きく跳ねた。
まさか。
その声の人物が、近づいてきて、私を見つけた。
私と同じ王族遺伝の瞳を持つ血の繋がった実の兄。
現国王の実子であり、次期国王に最も近い人物。
出会うのが早すぎます。
お兄様と初めて会うのは、私が殺されたあのパーティー当日なのだから。
「1人で行かないでくださいケヴィン様、何かあったらっ」
後ろから護衛らしき人も兄の後ろから追ってきて私を見つけた。
「はじめまして、かな」
兄は私と目があい、少し驚いたように見えた。
「話は聞いてたけど妹だな」
「っ、」
私を殺した実の兄。
今ここで変に問題を起こすのは避けたい。
また殺されるかもしれない。
「おにぃちゃん?」
私は可愛い妹に見えるように、10歳らしく無邪気に笑った。