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04「吸血鬼の噂」

吸血鬼バンパイア

 聞いたことないな。それがどうしたんだい?」


 _______ 吸血鬼バンパイア

 僕はその言葉を聞いたことがなかった。

 魔獣の話か?

 リディアの雰囲気からして、少なくとも楽しい話題ではないことは分かった。


「なんでも、人の生き血を吸う怪物らしいんだ。それも恐ろしく強くて賢い。

 それがどうやらこの街に出たらしいんだよ。今のところ目立った被害は無いんだけど……」

「被害が無いのに、なぜそれが出たってわかるんだい? その吸血鬼バンパイアだっけ」

「ああ。あたしも聞いた話なんだけどさ、夜中に二番街の路地裏で男が襲われたんだ。

 そいつは男に危害を加える事もなく、ただ名乗って去ったらしいんだ。

『私が吸血鬼バンパイアだ』って。

 そいつは金色の瞳で、八重歯が長く鋭い、それでいて綺麗な女の人だったって話さ」

「はあ。自己主張の強い怪物だね。危害を加えない綺麗な女なら一度会ってみたい気はする」

「バカ。出会ったら最期、血を吸われてスッカラカンだ」

「その女の胃袋に僕の血が入ったとしても、たかが知れてるさ。量的に」

「ペリはほんとにマイペースだな。まあお互い気をつけようぜって話さ」


 ペリというのはリディアだけが使う僕のあだ名のようなものだ。

 僕個人としては気に入っているわけでないことを明言しておこう。


「そろそろ行かなきゃ!」


 時計の針は8時を回っていた。

 リディアと話していると時間をついつい忘れてしまうのだ。

 速足のリディアに別れを告げて、街外れの石切り場へと急いだ。

 出勤初日から遅刻なんてシャレにならないからね。



 ◇◇◇




「バッカモォォォッッンン!!!」


 社長が憤慨している。

 なぜだろう。

 そう。

 僕のせいだ。

 出勤初日で僕は大失敗をしてしまった。


 失敗の概要はこうだ。


「おはよう御座います! 今日からお世話になるペリドットです!

 どうぞよろしくお願いいたします!」


 パチパチパチ。

「よろしくなー」


 先輩従業員達が手を叩いて歓迎してくれた。

 みんな笑顔で親切そうな人ばかり。

 僕は安心して胸を撫で下ろした。


「早速だが、作業に取り掛かってもらうぜ。教育係のジョズだ。何でも聞いてくれ」


 ジョズさんは僕より一つ上の17歳。

 失礼だけど、チャラチャラと音がしそうで軽薄そうな見た目だったが、面倒見の良さそうな体育会系の男だった。


 初めは、機材の使い方や注意事項、どういう商品が求められるのかを簡単に説明された。

 

「ここで使うのはどれも危険な工具ばかりだ。使い方を誤れば兇器にだってなり得る。

 十分注意してくれよ」


 ジョズさんは〝コヤスケ〟というハンマーの先端部分を撫でながら言った。



 そして早速作業に入り、バタバタとあっという間にお昼休み。

 先輩のジョズさん、スミスさんと僕の三人でお昼ごはんを取ることとなった。

 テーブルには各々の持ち寄ったお弁当が広げられた。


 僕のお弁当はサラの手製だった。

 最近のサラは自分のお弁当の他に、父さんの分も作ってた。

 それを良いことに僕の分も作ってくれるようにお願いしたのだ。

 僕は泣きながらそれを食べた。


 サラの指先が奏でるように作ったサラダ。

 サラが丁寧に焼いたベーコンエッグ。

 別容器に容れられたシチューは温かく、サラの温もりを感じる。

 先輩方は完全に引いていた。


「へー。妹がねえ」

「そうなんです。最高の妹が作ってくれたんです」

「最高って……新入り、お前だいぶヤバいこと言ってるのに気づいているか?」

「そんなに美人の妹なのか? 一度会ってみたいね」

「誰にもサラはあげませんよ」

「そんなこと言ったって、妹ちゃんはもう14歳なんだろ?

 恋人の一人でもいておかしくねー。おめーが邪魔してちゃあ可哀想だろうに」

「美人過ぎるんですよ」

「え?」

「おそらくあの美しさには世界を揺るがす理由があると思っているんです……」

「え……」


 けれどもサラは美しいが故の苦労のようなものをしてきた。

 美しすぎて嫉妬され、美しすぎて敬遠され、美しすぎて危険な目に会ったことも一度や二度じゃない。

 過去にこんな事があった。


 サラは昔から可愛くて評判だった。

 近所でも有名で、怪しい大人に何度も連れて行かれそうになったり、不審な人物が家の周りをうろうろしていたりと、怖い思いをたくさんしてきたのだ。


 あれはサラが8歳の頃だ。

 僕とサラが近所で遊んでいると、中年の脂っこいおじさんが道を尋ねてきた。

 サラは愛想よく教えてあげようと歩みよった。

 離れて見ていると、急にサラの表情が固く、恐怖を感じているそれに変わった。

 不審に思い近づくと、なんと下を履いていなかったのだ。


 おじさんのおじさんが剥き出しだったのだ。

 それもエレクトロ状態で。


 もう一度言おう、おじさんのおじさんはエレクトロ状態でトランスしていたのだ。


 僕はサラを引き離し、その中年に飛びかかった。

 顔面にニ発、腹に一発打撃を加え、最後におじさんのおじさんを思いっきり蹴り上げた。

 泡を吹いて倒れるその中年を縛り、ラスラ騎士団に突き出した。


 父さんが騎士団長だってこともあって、中年は滞りなく牢屋に入ることとなり、そのまま事件は収束したが、サラは心に傷を負った。


 あれ以来、男が苦手だと言うのだ。

 サラはあの事件をきっかけに男性恐怖症になってしまった。

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