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03「リディアと僕」

 僕のたった一人の妹サラは、街一番の美人だった。


 それに加え学業も超が付くほど優秀。

 成績はいつもトップをキープ。

 僕と同じく父さん譲りの緑の瞳(グリーンアイ)は、サラの魅力を一層増したし、とても希少なそれは彼女を更に高貴なものに見せた。


 クラスの男子は全員が漏れなくサラのことを好きだったし、女子だってサラと仲良くしたがった。

 サラと仲良くすれば自分のレベルや立ち位置も上がると思ったのだろうか。

 だけれど実際は違った。


 自分とサラを否応なしに比べられることで、余計に惨めになるのだった。

 その気持ちは痛いほど解る。


 僕はいたって平凡。


「サラちゃんのお兄ちゃんなのに、なんだか普通なのね……」

「きっと複雑な理由があるのよ……」


 そんな陰口は何度も叩かれたことがあった。

 因みに僕もサラも父さんと母さんの子供だ。

 複雑な理由などない。



 これがもし同性の男兄弟ならば、嫉妬の一つもしたのかもしれない。

 サラが女の子じゃなかったら僕は耐えられなかったのかもしれない。


 しかし僕とサラは別の生き物なのだ。

 そう理解できたのは、僕のこれまでの人生においての美点だと言える。

 生まれた時からサラは美しかった。

 普通の赤子とは明らかに違う次元にいる。

 ひょっとするとサラは天使なのではないだろうか。

 本気でそう思ったりもした。


 サラを()()()()()()()()だと認めることで、僕は普通に生きていける。

 むしろ嫉妬でもしていた方が僕自身の為になったのかもしれないが。



 僕は美しく優秀な妹を溺愛した。

 サラの為ならこの身を投げ売ったってかまわない。

 サラの幸せが僕の幸せだといつからか考えていた。



 先日14歳になったサラは、今まで以上に綺麗になった。

 町ゆく人々は振り返り、花も恥じらって萎む。


 許されるのであれば、サラの小さく華奢な背中に背後から抱きつき、頭皮の匂いを胸いっぱいに吸い込み吟味する。


 それが僕の生き甲斐だと自身を持って言える。


 そうすると烈火の如し平手打ちが飛んでくる。


「もう! お兄ちゃんの変態!」


 それを敢えてかわさずに頬で受け止める。

 それがお兄ちゃんだろ?

 違うかい?


「ごめん! 痛かった?」と心配されるのを含めて一セットだ。


 友人たちは気持ち悪がったけれど、そんなことはどうだっていいのだ。

 サラがいて初めて僕という人間が完成するのだ。


 前途有望な妹をサポートするのが僕の存在証明なのだ。


 …………そんな僕には目標も夢もなかった。




 石切り場の面接は簡単に終わった。

 名前、住所、年齢。それを言っただけで面接は終わり、僕は明日からこの石切り場で働く事となった。


「はい。就職祝い」


 初出勤日の朝、サラが照れた笑みで何かを差し出した。

 それは小さな箱に入って、しっかりとラッピングされている。


「私の入学祝いにもプレゼントくれたでしょ? これはお返しだよ。恥ずかしいから私のいないところで開けてよね」


 突然のプレゼントに驚いている僕にそう言った。


「じゃあ、私は行ってくるから」


 照れ隠しに大きな声でそう言うと駆けて行った。

 涙が出てきた。

 本当にいい妹だ。

 お兄ちゃんやってきて良かった。


 そのときある衝動に駆られた。

 今すぐにサラを追いかけて、ペロペロと舐め回すのだ。

 嫌がる表情を記憶に保存して、サラの肖像画を描こう。

 そしてそれをこっそりサラの部屋に飾るのだ。

 帰宅して肖像画を見たときの驚く顔が見てみたい。

 いやいや落ち着けよ。

 今日の僕は忙しいのだ。


 ペロペロは帰るまで我慢するとしよう。

 プレゼントの中身は帰ってから確認するとするか。

 楽しみだ。

 よし! 今日は頑張るぞ!


 悦に浸っていると、今度は何かが僕の肩にのしかかった。

 なんだこの柔らかいの。


「ペリドット! やっと就職決まったかー! 今度はクビにならないように気をつけろよ!」


 声の主はリディアだ。

 すらりとした長身に、程よく筋肉の付いた四肢。

 燃えるような赤髪のショートカット、男勝りの口調、目のやり場に困る程に豊満な胸。

 そして底なしに明るい性格。

 それが僕の幼馴染み、リディアだ。


「脅かすなよリディア! 大事な初出勤なんだよ? 骨折でもしたらどうする」

「なんで声を掛けただけで骨折するんだよ。

 あんたがそんなにヤワじゃないこと、あたしは知ってるんだぜ?」


 お前のその重たい巨乳がのしかかったんだよ。

 と言おうと思って止める。

 わざとじゃないんだし、次から意識されると勿体なくて何だか嫌だし。

 てゆうか、昔はこんなにデカくなかったぞ?


 騎士団の制服に身を包んだリディアは随分と立派に見えた。

 なるべくなら制服姿のリディアのことを見たくはなかった。

 置いて行かれたような気になって、少しだけ寂しくなる。





 リディアと僕は子供の頃からずっと一緒だった。

 同じように遊び、学び、悪さをした。


 15歳で大人だと認められてからは、街で働きだした僕とは違いリディアはラスラ騎士団に入団した。

 その類稀な戦闘センスと容姿も相まって、既に〝期待のルーキー〟の肩書を欲しいままにしている。

 リディアは、騎士団内で話題になっている()()()を教えてくれた。


「ねえペリドット。吸血鬼バンパイアって知ってるか?」

【※重要なお願いです!】


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