37「アミット感謝祭」
ラスラ騎士団に入団してからの初任務は、アミットの感謝祭の警備だった。
アミットでは収穫の季節が過ぎたころの年に一度、感謝祭が行われるの。
町人はもとより、ラスラ領の人々が大勢集まるこのお祭りは、商人にとっては絶好の商売の機会であり、盗賊や輩にとっても犯罪が起こしやすい絶好の機会と言えた。
騎士団の主な任務は街の治安の維持だった。
この時期にはスリや窃盗などの軽犯罪だけでなく、旅行者を狙った強盗や強姦、殺人も頻発した。
小さな子供を持つ親は子供の外出を制限し、夜にはしっかりと出入り口に何重ものカギを掛けなければ、ゆっくりと眠ることもできなかった。
僕たち新人は三人一組となって街を巡察した。
シルビアさんとは試験以降、何故だか親しくなった。
試験でもあった通り、彼はとても面倒見がよくて強い。
生まれつきに魔力を持ち、体格にも恵まれたシルビアさんは、冒険者ギルドでもそこそこの活躍をしたらしい。
この歳でB級だ。
僕の父さんでさえ、冒険者時代はA級だったらしいけど、今のシルビアさんよりもずっと長く活動をしていた。
シルビアさんは天才だと言える。
けれども油断が過ぎるところがあって、一緒に行動してるといつもドギマギさせる。
「なあペリドット。こんな地味な仕事もう飽きちまったぜ。どっかでサボろうぜー」
「何言ってるんですか、ダメですよ。この前も隊長からサボってるところバレたばかりじゃないですか。僕まで巻き添え食らったんですからね!」
「悪かったよ。てか、あれバラしたの誰だったんだよ? 俺がサボって酒飲み行ったこと、少なくとも俺たち三人しか知らねえ筈だろ?」
「……誰かから恨みでも買ってるんじゃないですか?」
「恨み? そうは言ってもアミットには来たばかりだからな……まあ、心あたりは有りすぎるほど有るけどよ」
「シルビアさん目立つからな……セブさんは何か知りませんか?」
「さ、さあ誰だろうな……」
もう一人の同期であるセブさんとは、入団してから知り合いになった。
獣人のハーフなだけあって、戦闘面ではシルビアさんには劣るにしても重要な戦力となりえる。
シルビアさんとは違って魔術とは無縁のようだけど、ここに来る前は彼も冒険者をしていたらしい。
どうやらリディアとは知り合いだったようで、いまや先輩のリディアを見つけては文字どおり尻尾を振って喜んでいる。
どこで知りあったのだろうか。
僕の知り得ないところで、リディアにはリディアの世界があるのだろう。
「あーあ、ペリドットはクソ真面目だし、セブは何考えてるか分かんねーし、お前らもっと人生というものを謳歌しねえと勿体ねーぞ?」
「謳歌って? シルビアさんは入団前は何をしていたんですか? 確かB級冒険者だったんですよね?」
「何って、そりゃあ男は冒険に出るべきだろ? 14で家を出てからは冒険者ギルドに登録して戦いの毎日よ!」
「勘当されたって聞きましたけど?」
「何だお前知ってんじゃねえかよ……ちょっとメイドに手を出しちまったらよ、兄貴たちから追い出されちまってな! はは……」
「意外と苦労してるんですね……セブさんも冒険者だったんですよね?」
「ああ。俺は最近まで小さな依頼を細々とこなすただの冒険者だった。一度依頼中に死にかけてしまってな、その時助けてくれたのがリディアさんなんだ」
「そうなんですか! それでリディアと知り会いだったんですね!」
「…………呼び捨てか」
「え? 何か言いましたか?」
「いや、何でもない」
「そのリディアって言えば『蜜蜂』の異名を持つ……あ! 確かペリドットの彼女だったな!」
「そんなんじゃないですよ。ただの幼馴染みですから」
「ただの幼馴染みって言ってもよ、あの巨乳ちゃんを間近で眺めていて、よく平常心でいられるよな? 勿体ねー。あ、さてはお前童貞だな?」
「ち、ち、違いますよ!!」
「うわっ! こいつほんとに童貞だぜ! セブ見ろよ」
「……童貞かどうかはどうでもいいが、リディアさんをそんな下品な言い方で表現するんじゃない」
「おいおいセブまで童貞臭いこと言いやがって」
しばらく楽しそうにするシルビアさん。
この人は生粋のいじめっ子だ。
「ん? おい2人とも! あれ見たか?」
シルビアさんの目つきが変わった。
あれとは?
僕には何も見えなかった。
「ああ。あの男、何か大きなモノを抱えていた……行くぞ」
セブさんは見ていた。
二人はすぐさま走り出した。
「え? どうしたんです?」
僕はわけが分からないまま二人の後を追う。
どうやら二人は怪しい人物を見たらしい。
つまり、僕たちの仕事だってことだ。
『ペリドット! 怪しい男が大きな袋を担いで逃げて行ったよ!』
大きな袋?
フィーナが僕にだけ教えてくれた。
お祭り騒ぎに乗じての犯行か。
僕たち三人は人混みをかき分けて、狭くいかにも湿った路地へと入って行く。
路地に進入してから真っ直ぐ走り、一つ目の角を緊張しながらも左折した先の、そのまた次の曲がり角を、大きな袋を担いだ男がそそくさと曲がっていくのが見えた。
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