21「呪いのスペシャリスト」
神様……あなたは一体……
あなたの目的は何ですか……?
しばらくの間、ベッドに横になりながら様々なことを思案していた。
神様の言葉、呪いの正体、七悪魔と言う存在、地下組織、ジョズが言っていた依頼されてって言うのも何だか引っ掛かる。
最近現れたという吸血鬼とも関係があるのだろうか。
吸血鬼を追ってやってきたアイリーンたちは、どこまでその正体を知っているのだろうか。
いくら想像を巡らせても答えが出ることなどない。
全ては所詮、考察でしかない。
起き上がって水を飲みに行きたい。
そう思ったけど、体が重いし筋肉痛は酷い。
あいたたた……だめだ。
起き上がれやしない。
今日はベッドでゆっくりしよう。
昨日はあんなに色んな事が起きたんだ。
今日ぐらい許してくれるさ。
え? 誰が許すのかって? 誰だろ……?
なんだか妙な強迫観念に憑りつかれているみたいだ……
つ、疲れてる……
そんな時、僕の部屋のドアをノックする音がした。
「お兄ちゃん。起きてる?」
か細く可憐な声。
サラだ。
「起きてるよ。いま行く」
僕は起きあがって駆けていく。
ああ、サラよ。
朝からなんて可愛らしい声なんだ。
僕は幸せ者だ。
本当にサラが無事で良かった。
一瞬にして疲れも痛みも吹き飛んでゆく。
知らず知らずのうちに僕の精神は、サラによって調教されていた。
けしからん。
けしからん妹だよ君は。
早くその顔を見せておくれよ。
今日はいいだろ?
抱きついて頬擦りしても、今日は許してくれるだろ?
耳たぶを触ってそのまま輪郭をなぞっても。
可愛らしい鼻に触れて唇を指で摘んでも。
そして、そのまま口付けをしても、いいだろ?
ほら、兄弟なんだしいいよね? 大丈夫だよね?
問題ないよね!
ああ、もう抑えられないよー!
その勢いのままリビングのドアを開け放った。
……そこにいたのは、予想外の人物だった。
「どうしたペリドット。そんなに腑抜けた面をして」
そこにはロリババア……もとい、大魔術師にして、命の恩人アイリーンがいた。
「あ、アイリーン!? どうして僕の家に!?」
「いま、すごく失礼なことを思ったじゃろ?」
「な、なんのことかな……?」
「お兄ちゃん、もう大丈夫なの? どこも痛くない?」
リビングで二人は、仲良く談笑をしながら朝食を食べていたようだ。
すっかり打ち解けた様子だ。
ちなみに僕の分は無かった。
「そんなに驚くことはなかろう。朝食に誘ってもらっておったんじゃ。
それにしてもサラちゃんは可愛らしいのぉ。こんなに可愛らしい娘っ子は初めてじゃよ」
「そ、そんなことないですよ……。アイリーンさんだってちっちゃくて可愛いですっ」
サラとアイリーンは可愛いものを愛でるようにお互いの身体に触れ合っている。
女性にしては長身のサラと、少女のように小柄なアイリーン。
二人が寄り添っていると何とも不思議な感情、いやこれはいわゆる眼福というやつか。
「ペリドット。サラちゃんをわしにくれ」
「あげるか!!」
「いいじゃない。私、アイリーンさんとだったら……」
突然の百合展開に焦りを隠せない僕だった。
「サラ! 冷静になりなさい!!」
「冷静になるのはペリドット、お主の方じゃ。
朝っぱらから実の妹を追い回す変態野郎じゃったとは思わなかったぞ。はは!」
「だ、誰が変態野郎だよ! サラを愛でるのは兄である僕の特権なんだよ」
「お、お兄ちゃん気持ち悪い……」
「うっ……」
「しかし朝から元気なやつじゃのう。毎日気絶しておるやつとは思えんぞ。わしはサラちゃんの緊張をほぐしているのじゃ。ペリドットも昨晩は大変じゃったが、サラちゃんも大変じゃったんじゃぞ?」
その通りだ。
大変だったのは僕なんかよりも寧ろサラの方だ。
突然訳の分からない連中から攫われるわ、兄は死にかけているわ。
とんだ災難だっただろう。
「アイリーン。昨日は本当にありがとう」
「なあに、気にするでない」
「君が来てくれなかったらと思うと……恐怖が蘇るようだよ」
「約束したじゃろ? わしとお主はソウルメイトじゃ。まあなんにせよ守護精霊に感謝することじゃな」
「ああ、まったくだ」
アイリーンはお茶を一口飲んだ。
「……ところでじゃが」
「と、ところで?」
一変して真面目な表情になる。
「ついに呪いが発動したようじゃな?」
「わ、わかるのかい!?」
「わかるのかじゃと? わしを誰だと思っておる。呪いのスペシャリストじゃぞ?」
呪いのスペシャリスト。
そうだ。
アイリーンは子供の頃からずっと呪いと共に生きてきた。
吸血鬼殺しの専門家である以前に、幻想の魔術師である以前に、彼女は呪いのスペシャリストなのだ。
スペシャリストに成らざるを得なかったのだ。
「見せてみよ」
アイリーンはあの日のように僕の瞳を覗き込む。
僕は黙ってヘーゼル色の瞳を覗き返した。
一点の曇りもない澄んだそれは宝石のように魔力を孕んでいるように見える。
虹彩は薄く砂浜の眩しさを思わせ、猫のような印象を与えた。
僕はアイリーンの瞳の色が好きだった。
あの日よりもずっと長い時間、アイリーンは僕の緑の瞳を見つめ続けた。
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