12「ソウルメイト」
とまあこんな風にして、僕に大魔術師のソウルメイトができた。
ついでに守護精霊なんてものも授けて貰い、僕はやや平凡じゃない男になってしまった。
あまりの急展開に僕の理解能力は早々に音を上げていた。
けれど僕の胸は踊っていた。
これから何かが起こる期待感。
なんだか面白くなってきたじゃないか。
魔術師たちとの交流は、僕の好奇心を刺激してやまない。
アイリーンさんの眩い光の魔術、アリスさんの風の魔術。
普段の生活では決して経験することのない不思議。
僕にもあんな魔術が使えたのなら___
そう想像するだけで楽しい。
魔術があれば何だってできる気がする。
サラを守ってあげることもできるだろう。
そして魔術を使った仕事なんかもあるのだろう。
なんせ、アミットでは魔術師は貴重だ。
自在に魔術を操って、世界中を旅するとどんなに楽しいだろうか。
と、そんな妄想を展開しながら思った。
それじゃあ、少なくとも平凡ではなくなってしまうのか……。
そんな夢のような考えを巡らせながら僕は帰り仕度をする。
魔術なんてものは、普通の人には使えない。
生まれ持った潜在魔力が魔術の種であり才能だ。
だから一般人は真似してもできない。
そう学校の授業でも教えられた。
魔術は才能が全てなのだ。
そんな事は知っている。
けれども、何故だが納得することができなかった。
あの、騎士団を束ねる父さんにも使えなかった技術。
僕の人生とは関わり合いのないもの。
だけれど……
目の前で感じたあれは間違いなく身近に存在するものだった。
僕の人生はこのまま終わって行くのだろうか。
『そんなこと無いと思うけどな……』
ん?
何か聞こえたような。
部屋には僕しかいない。
空耳だろう。
暫らく経ってリディアが迎えにきてくれた。
「脅かすんじゃねえよ!」
そう言って僕の頭をはたく。
「てか、これどうなっての? すっかり傷がふさがってる……」
僕の傷口をつんつんと触りながらも驚いた様子のリディアだが、昨晩僕が倒れたときに泣きながら止血を施してくれたのだ。
アリスさんがニヤニヤしながら教えてくれた。
そしてアイリーンさんの屋敷に運ばれた僕は、お屋敷にあった最高級の回復薬で難を逃れたという訳だ。
「一応言っておきますけどそんな関係じゃありませんよ?」
「そうなの? 勿体ないわぁ」
僕は否定したけれど……リディアにも可愛いところもあるんだな。
心配をかけてしまって申し訳なかったと反省してる。
その回復薬はアミットでも庭付きで家が建つほどに高価な物らしい。
僕にはもったいなかったと言うと、また頭をはたかれた。
「あの暗殺者は、魔術師を狙ってたんでしょ? あんたが死んでたら、あたしはやっぱり魔術師たちを殺してたかもしれない」
リディアはそう言っていたけれど、きっとそれは無理だろう。
魔術師という生き物は、生身の人間が敵う相手だとは到底思えないのだ。
いや、呪われたアイリーンさんにならリディアの刃は届いていたのだろうか。
そう考えるとより恐ろしく感じる。
親友を殺人者にしてしまうこともそうだが、アイリーンさんは普段からどんな気持ちで生活をしているのだろう。
無防備な状態で生きていくには、どれほどの覚悟が必要なのだろうか。
平凡な僕には、やはりよく解らないのだった。
そして、僕に掛けられた〝呪い〟も、いつか恐怖となるときが来るのだろうか。
なんせどんな呪いなのかも分からないのだから。
「こないだの話なんだけど、やっぱり忘れてくれ」
こないだの話?
そうだ。
酒場で僕は「騎士団に入れ」と誘われていたのだ。
魔術師の登場と、その後の事件のせいですっかり忘れていた。
「あの瞬間、ペリドットが死んだかと思うと、あたしは辛くて堪らなかったんだ。
やっぱりあんたは平凡な道を歩むべきなんだとあたしは思っちゃったよ。血や死とは遠い世界でね。
だから、ペリドットはあんた自身の道を進んでくれ。血生臭いのはあたしが引き受けるからさ」
そういうと直ぐに前を向いて歩き出した。
「リディア……?」
一瞬見えたリディアの表情はとても悲しそうだった。
「それにしても、あのお姉さん綺麗だったよねー」
あのお姉さんとは、つまりアリスさんのことだ。
それに関しては僕も激しく同意する。
あんなに綺麗な人は見たことがない。
まるで妖精のように美しい女性だった。
そして僕の股関を見てあの一言。
そんなこと、さすがにリディアに言えるわけがなかったが、あの人は危険な女性だ。
そう思った僕だった。
丘の上にあるアイリーンさんの屋敷を出てしばらく歩くと、いつもの街並みが見える。
アイリーンさんは別れ際に「ペリドット。近いうちにお主の身に何かが起こる。
何が起こるかはわしにも解らんが、何かが起こることは確かじゃ。そう精霊たちが言っておる。
精霊たちは世の理と密接に繋がっておるからな。不穏さを感じとると教えてくれるのじゃ。
なに、お主が危険なときはわしを呼べ。ソウルメイトよ、わしとお主は魂で繋がっておる」
アイリーンさんの周辺で大気がキラキラと輝く。
それは僕に安心感をもたらしてくれた。
その輝きは精霊たちの笑顔や笑い声だとアイリーンさんは教えてくれた。
そんなことを言っては少し寂しそうな表情をして笑った。
〝大魔術師様〟だとか祭り上げられてはいるが、きっと内心は寂しくて孤独なのかもしれない。
今度サラを連れて遊びに行ってみよう。
そんな知ったようなことを思っていた僕は、少しだけの非日常の裏で何かが蠢いていることに気付きもしなかった。
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