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Tell the end of birthday

作者: Kana

「なぁ、どうした?」

「へ?」

どこからか間抜けな声が出た。

「えっ、いや...なんでもないよ!」

咄嗟に出た言葉。

「そうか?」

「...うん」

「なんかあったら言えよ。」

ごめんね、璟。嘘ついてまで迷惑かけちゃって。

あと少しだけわたしの嘘に付き合って。

気づいた時にはもう遅かった。

「余命は持ってあと半年です。」

医師にそう告げられてからもう四ヶ月が過ぎた。

その日はどうやって家に帰ったかもわからない。

ただ覚えているのは家に帰ってからたくさん涙を流したことだ。

少しだけ嫌な予感はしてた。

最近、体調がどことなく悪い日が続いてた。

病院に行ったらこの始末だ。

次の日は、学校を休んで両親に余命宣告のことを告げた。そしたら、泣きながら「ごめんね」なんて謝ってきたからわたしも泣いちゃった。

もちろん親友の澪華にも彼氏の璟にも言ってない。


だって怖いから。

「距離、置こう」とか「別れよう」とか言われたらもう無理だもん。

だから今日も薬を飲んで、笑顔を作ってみんなに会う。

あと一ヶ月笑っていられますように。

そう願いを込めて家のドアを開ける。

「行ってきます」

ドアを開けたら澪華が待ってくれていた。

「お待たせ!」

「行こ!」

今日もいつも通り「今日の時間割なんだっけ?」とか「今日、小テストじゃん!」とかふざけながら登校した。

クラスに着いたらみんなに「おはよう」って元気に言って隣のクラスにいる璟にも「おはよう」と言いに行く。

璟は、笑顔を向けながら「おはよう」と返してくる。

これだからイケメンは。

そんな毎日を過ごしてた。

ついに時は来たって感じ。

「璟、明日の放課後空いてる?」とメッセージを送信する。

そしたらすぐ返信が来て

「空いてるよ。どうしたの?」

「話したいことがある」

メッセージを送信し、既読がついたのを確認して、スマホの電源を落とした。

次の朝もいつも通り。

放課後、璟の部活が終わって近くの公園のベンチに座る。

「莉湖、話ってなに?」

少しだけ不安そうな声で聞いてくる。

「ねぇ璟、わたしたち別れよっか。」

「え、?」

わたし、初めて璟の間抜けな声聞いたかも。

...なんて考えながら。

「なんで?ねぇ、莉湖」

「わたし、もう璟のこと好きじゃなくなった。ごめん。」

「俺が悪かったから。ねぇ別れないで...」

ごめん、璟。

「璟は悪くない。わたしが全部悪いの。」

「そ...っか」

泣きそうになるのを堪えて

「ごめんね、璟。バイバイ」

ベンチから立ってその場を離れようとした時、

「俺はずっと莉湖のこと好きだから。」

なんでそんなこと言うの。

もう涙を堪えきれずに泣いてしまった。

こんな顔見せたくないから、少しだけ立ち止まったがそのまま振り返らずそのまま家に帰り、ベッドに直行。

朝まで泣いたから、目元が腫れちゃっている。

「今日は学校休もうか。」

お母さんが言ってきた。

今は素直に頷いた。

一週間後は、入院する日だ。先生には病気のことは言ってあるので、転校ということで伝えてくれるそうだ。

あと一週間でこの家ともお別れか。

やっぱり寂しいな。

次の日から一つを除けばいつも通りだった。璟におはようと言わなくなったことが決定的に違うところだった。

だが、気にせず学校に通い、入院する日がやってきた。

「バイバイ」

そう言ってから家を出発し、病院へ向かった。

病院へ着くと

「こんにちは」

また挨拶をする。

まぁ一ヶ月お世話になるんだし、いいよね。

その日から病院の生活や食事にも慣れてきた。

もう体も自由に動かせなくなってきた時期。

あぁ、もうやばいんだなって自分でも感じた。

今日は季節の変わり目も過ぎ、今までよりも寒くなってきた。

あぁ、そういえば

去年のこの頃も寒くて璟のマフラー貸してもらってたなぁ、なんて考えて

あぁ寒い

あの頃のあたたかさが欲しい。

病院に入院した日から少しだけ期待してた。

璟がお見舞いに来てくれるんじゃないか、って

そんなわけないのに淡い期待だけを抱きながら...

「もうすぐ日が沈んで、ほんとに寒くなっちゃうな」

部屋に一人しかいないのに言葉を紡いだ。

「返事なんか返ってこないか」


「俺があたためてあげようか?」

あの頃の優しい声が部屋を満たした。

驚いて振り向くといないはずの璟が紫蘭の花束を持って立っていた。

あ、幻覚か、

「幻覚なんかじゃないよ」

「へ?」

「もしかして声に出てた?」

「うん。バリバリ」

「マジか」

こんな会話久しぶりすぎて新鮮。

「ていうか、なんで来ちゃうのよ。」

もう堪えられなくなって涙を流した。

「莉湖がいなくなっちゃったから。」

「バカじゃないの。せっかく別れてあげたのに。」

「そんな優しさいらない。」

璟が歩み寄って来て抱きしめてくれた。

「ごめんね、璟」

璟が真剣に見つめて来て察した。

「莉湖、もう一度俺と付き合ってください。」

「だめだよ。わたしはもうすぐいなくなっちゃうんだから」

「それでも莉湖と一緒にいたい」

もうこんなの付き合うって言うしかなくて

「こんなわたしでもいいの?」

「莉湖じゃなきゃダメ。」

「璟、ありがとう。」

その日は暗いからすぐに帰ってもらった。


次の日、璟は澪華を連れて来てくれた。

澪華は泣きながらわたしに抱きついて来てくれた。


その次の日も澪華と五人程度のクラスメイトを連れて来てくれた。


クラスメイト全員と会い終わる頃には限界に近かった。

木曜日、朝起きて朝食を食べたらスマホを取り出し、メッセージを送った。


「璟、誕生日おめでとう」

璟の誕生日はいろんなものが詰まってる。

璟とわたしが初めて出会った日。

わたしが璟に告白した日

一年の中で一番大切な日

「璟、幸せになってね。」

今日は一段と体調が悪かった。

あぁ、終わりか。

もうすぐ璟が来てくれる時間だ。

璟が病室に入ってきて安心した。

毎日お見舞いに来てもうすぐ呆れられるんじゃないかって。

言葉を紡いだ。


「おめでとう、バイバイ」


その声と璟が泣いてる顔を見ながら瞼を閉じた。

ピーーーーー

かすかにその音が聞こえた気がした。




「璟、あなたに出会えてよかった。最後までごめんね。」







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