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第957話「おちょくるラビット」

こんばんわー\( ॑꒳ ॑ \三/ ॑꒳ ॑)/


更新遅くなりましたー


今回のお話は……


ラビットと追いかけっこdeath!


 しかし僕はこの時点で、あることに気がついた……



『あの天井の文字………ドドムさんは錬金術師の使う魔法文字って言ってたな……。あのメンバーには僕が錬金術師とバレた可能性もあるなぁ……はぁ……問題が山積みだ……』



 そう呟いてから部屋の様子を伺う……



 彼等の荷物はもちろん宝箱も部屋にはない。


 しかしそれも当然だ……転移陣が、部屋にある物や人に関わらず全てを転送していたのだ。


 

 但しその事に気が付いたのは、皆が僕の見送りに来てくれた時だった。


 

 ちなみに現時点では冒険者は誰も居ない……こればかりは偶然だったが運が良かった。



 転送された所を見られれば大問題だし、到着した時に人がいたら説明が面倒だ。



 しかしこの件を、ギルマスに伝えるべきか非常に悩ましい。



 伝えればなぜ文字が読めるのか……


 そしてハイエルフ達が隠遁していた場合は、人間と抗争に繋がる可能性もある。



 伝えなければ、なぜドドムの件を放置したのか……


 そしてあのマッドネス・プディングを脅威ととらえる輩が現れる可能性がある。



 何方をとっても、問題しかないのは間違いがない。




『ああ……頭痛い……面倒しかないじゃないか!……まぁ今は素材集めに集中して万能薬を早く作ろう……それが一番だろう……』



 そう思った瞬間、部屋の目の前を猛進する集団が見えた……



「ああ!?あれは……フルーツラビット……待たんかい!!豪勢な晩飯……」



『瞬歩!!』



 僕は瞬歩を使い、休息できる安全部屋から飛び出す……



 フルーツラビットの進行方向には冒険者が6名いた。


 ノールアクスラーは激しく斧を振り回す、乱撃を繰り出している……


 冒険者達はそれをなんとか距離を保ち様子を見て斬り込む隙を窺っている様だが、フルーツラビットは冒険者を避けた際にその乱撃に突っ込む可能性もある。


 

 ズタボロになったフルーツラビットは血抜きが省けるだろうが、見栄えからして間違いなく美味しくはないだろう。



「ゼース……スイッチだ!デスカルゴが来る前にノール・アクスラーを3匹とも倒すぞ!!」



「「「「おう!」」」」



『瞬歩!』



『ウォーターアロー!』



 僕はスイッチによる連続攻撃を繰り出そうとしている冒険者の横をすり抜け、フルーツラビット移動位置を予測して魔法を放つ。


 狙う場所は当然ラビットの頭で、命を頂く以上苦しめない様に配慮する。



『ギャワン!!』



「な!?……だ……誰だ!?お前……」



「あ!!くそ……ラビットの癖に……まさか……攻撃先を誘導された!!」



 ラビットは僕が追いかけている事に気が付いていた様で、なんと攻撃を誘導していた……


 射撃魔法は見事に誘導位置に放たれているので、ノールの頭にヒットしてその個体を勢い良く吹き飛ばす。



 狙った筈のフルーツラビットといえば、空中で器用に巻く様に回転をしてその射撃魔法を躱していた。


 目の前の障害が無事いなくなった事で、避ける必要の無くなったフルーツラビットは、憎たらしく僕へ腹を見せつけ仰向け大の字でぶっ飛んでいく……まるで腹を撃って下さいと言わんばかりのおちょくり具合だ。



 フルーツラビットの憎たらしい行動は、相手を完全におちょくって来るところだ。


 攻撃が躱された場合、奴等は120%馬鹿にしてくるのだ。



「ぶ……ぶっ殺す!!おちょくった事後悔させてやる!!邪魔だ!ワンコロがぁぁぁ!!」



 気が付いたら物騒な言葉が声に出ていた……



 僕は気がつくとフルーツラビットの能力『煽り』を受けて『憤怒・思考負荷30秒』を受けていた。


 冷静さを欠いた僕はクロークから剣を抜き放ち、コマのような横回転で剣を振る……その斬撃で残るノール2匹を腹から上下に両断する。



 単純にノール2匹の間をすり抜けた回転斬りだが、エルフの剣は鋭利すぎるのでノールの背骨ごとバッサリ斬り払った。



「あ……ああ……ノールが試し斬りの藁人形の様だ…………」



「誰だ!?あの冒険者………」



「なんて洗練された動きなんだ!!あの隙間を回転しながら2匹とも……」



「べ……勉強になるな……前方移動の運動スピードに、回転の遠心力で威力を上乗せするのか……」



「あれは何と言う技だ?昔の剣神や剣豪の技なのか?誰か教えてくれよ……俺絶対にあれを覚えてぇよ!!」



 そんな訳はない……


 フルーツラビットのスキル『おちょくり』をまともに受けて、進路妨害になるノールを怒りに任せて切り裂いただけなのだから。


 そんな高尚な技術の賜物ではないのだ。



「く……煽りをくらった?……やりやがったな……クソウサギめ!!僕の晩飯!!待てコラぁぁぁぁ!」



 煽りを喰らったと理解した瞬間、今度は他のフルーツラビットに煽りを受ける……


 そしてまたイラッとした僕は正常な考えが出来なくなる『思考負荷』をかけられた。



 この能力は思考が出来なくなる訳では無い。


 怒りという負荷をかけられ、更なる煽りを受けやすくされるのだ。



 運が悪いと、体力が尽き追いかけられなくなるまでエンドレスに受け続ける『非常にムカつく能力』だ……



「あ!?ちょっと……アンタこの素材は?」



「そんなもんいるかぁぁ……アンタが要らなきゃどっかに捨てろぉ!!待てコラァ僕の晩飯!!」


 

『ウォーターアロー!!』


『ウォーターバレット!!』


『ウォーターアロー!!!』



「ちょこまか避けんな!当たれ!馬鹿ウサギ!!」



『瞬歩!!』



 僕はこの後ノール8グループを血祭りにして、デスカルゴを5匹程一方的に惨殺した。


 そして念願のフルーツラビットの取得数は、僕をおちょくり続けた5匹の群れ全てになった。



 この狂乱の宴では、時には瀕死の冒険者を救い感謝され、時には乱入で戦場を掻き乱し迷惑がられ、ある時は横打ちして恨まれた……


 フルーツラビットから受けた挑発効果の被害はとても酷く、この一件以来一部の冒険者からは『ウサギ男』と呼ばれる事になった。


 名称由来は『飛び跳ねる』という意味から、ウサギ型のラビットフットという魔物だ……



 ◆◇



「はぁ……フルーツラビットの挑発が全部クリーンヒットするって……今回は物凄く運が悪くて、途中経過が酷かったな……」



「あ!ウサギ男さん!今帰りですか?さっきは助かりました!マジで誰か死ぬって思いました……」



「いやいや……すいません本当に。フルーツラビットの挑発を受けて、全部見事にクリーンヒットしちゃいました……」



「それでもあの跳躍は、神がかっていて凄まじいものでしたよ?フルーツラビット並みに通路を跳ね回るから、うちのアーチャーもあれくらい動けるように体力強化するって言ってましたし……」



「まぁ……その所為であだ名が『ウサギ男』ですけど…………」



 転送陣で一緒になった冒険者達と、会話しながら地上出口に向かう……



 相当な迷惑をかけたつもりだが、彼らは誰かしらが戦闘不能になる可能性があったらしいのだ。


 偶然そこに僕が到着して、一方的にデスカルゴを殲滅したので感謝されている。



「じゃあ僕達は飯食ってからギルドに行きます!また何処かで。ウサギ男さん!」



「はい!僕はこのままギルドに行きます……多分ギルマスからお叱りがあるんで…」



「ははははは!ギルマスだったら、恐らくもう酒飲んでますよ!じゃあ頑張って。ではでは!」



 そう言って彼等はダンジョン前で別れを告げ目的地へ向かった……


 僕は『多分もう報告が上がってるはずだ……お小言が嫌だなぁ』と思いつつもギルドへ向かう。



 最低限冒険用のロープを買い込まないとならないからだ。


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