第934話「護衛完了」
こんばんわー_(:3 」∠)_夜も……暑い……あぢぃ
今回のお話……
護衛をコクゴウに引き継ぎ宮殿へ帰ります……
既に問題しか起こしてないこの現状_(:3」z)_いやん
「くそ……ヴァイスめ……良い手駒を見つけたもんだ………それにしてもグラップまで勧誘に来たのか?……坊主!お前なら我が管轄する騎士団で百人長は固いぞ?悩んだら我の元に来い……悪い様にはせん!」
そう言ったシュートは、エクサルファの前だと言う事を思い出したのか、唐突に頭を下げる……
「も……申し訳ございません!有力な人材は争奪戦のため……つい………」
「うふふふふ……構いませんよ?この方お料理の腕前も素晴らしいです!食べてみた所、宮廷料理人でも通用しますから。シュートさん!この方がもし騎士団に編入されたら、是非私まで連絡を……」
「サルファさん……それって僕は料理人決定じゃ無いですか?」
「えー?私はそうは言ってませんよ?でも……軍事訓練より料理の比率が大きいでしょうけど……うふふふふ……」
冗談を言う余裕が出来たのか、エクサルファの表情は来る前とはかなり差がある。
「ではシュート行くとしよう……これ以上此処に長居すれば、問題はもっと大きくなるからな……。ヒロと言ったな……今回は非常に助かった、この礼はまた後日させて頂く!」
そう堅苦しい挨拶をして、コクゴウはエクサルファと店を後にした。
◆◇
「はぁ………もう今日は仕事したくねぇぞ?なぁ……ホランドロップ………」
「そう言っても仕方無いだろう?食事処が食事を提供しなけりゃ仕事にならんだろう?違うか?チビート……」
二人は貰った金貨100枚を眺めつつ、ニヤニヤする。
多分一仕事終えた気分なのだろう……当然僕も同じ気分だ。
しかし素材購入が終わっていないのだから、鞭を打ってでも動かなければならない。
「お二人さんお疲れ様でした!僕はまだ一仕事残ってるんです……。問題発生で素材購入が終わってなくて……」
「ヒロ殿……そうなんですか?なら俺等が必要な店の店主に物を持って宮殿に行くように伝えましょうか?」
チビートは僕にとって凄い助け舟になる一言をいう……
僕が足で稼がなくても、向こうから来てくれるなら、それこそ御の字だ……
「俺もホランドロップも商工ギルドの一員ですから!」
「それに……流石に今日は、今から仕事をする気にもなれないんで……」
僕はその言葉を間に受けてお願いをする……当然二人が僕に気を遣ってくれているのだ。
彼等は『では俺らで必要な物を持って宮殿に行くように伝えておきます』と言うと、すぐに副支配人と他のシェフに仕事を一任する。
「なんか‥‥すいません………もう日暮れでもあるんで、非常に助かります!実は、宮殿に残してきた仲間も気がかりだったんですよ……」
「いやいや……構いませんよ!でもヒロ殿が来ると、店に何か問題が起きるというのはビラッツ総支配人の言う通りでしたな……」
チビートはそれを聞いて『わっはっは……自分がコレを味わう日が来るとはな……前は思いもしなかった!』と言って、二人で僕を見送ってくれた。
僕はチビートが作ってくれたお弁当を四人前クロークへしまい、ラムセスと共に宮殿に用意された部屋に戻る……
蘇生薬の発見で帝都に来る羽目になったが、非常に有意義な遠征であった。
ディーナ用の万能薬素材探しだけの筈が、魔導師ギルドと薬師ギルドの伝手が出来た。
その途中で、帝都貴族の侯爵家であるドネガン公と面識を得た。
そこからフローゲル像の観光になり、パウロの手紙に繋がった……当然此処でもドネガン公と仲を深める結果になった。
そしてこの観光兼パウロの願望成就が無ければ、僕は同郷のサイキに出会う事は無かった……
彼女は僕と出会った事で、新たな出会いを見つけた。
相手は魔導師ギルドの問題児たるギルドマスターだが、その生活には明確な変化があった筈だ。
そして皇女を巡る問題……
相手の詳細こそ分からないが、目につく敵はスラが全て殲滅した様だ。
そのお陰もあり、エクサルファ達は無事宮殿に帰れる様だ。
宮殿に帰る間にそう思い起こしたが、なかなか濃密な遠征で間違いが無いだろう……
「帰ってきた!!あの大馬鹿のヒロさんが!」
「本当か!?……アユニ……ちょっとそこを退くんだ!!」
帰ってくるなり大馬鹿呼ばわりだが……騎士団全体が騒ついている……何かあったのは間違いがない様だ。
「ヴァイス騎士団長?どうしたんですか……何かありました?」
僕がそう言うと、奥からグラップまで走ってきた。
「何かだと!?お前……帝都オークションに登録しただろうが!あんな物をオークションに出すなんぞ……大馬鹿以外何があるんだ!!」
非常に『オークション』と『あんな物』には心当たりがある……
しかし当然だが僕は無関係だ。
関係者は魔導師ギルドの問題児『キーテラ』である事は間違いがない……
素早い動きでギルドから飛び出ていった所までは記憶に新しいが、その後の行動まで僕は追っていない……
まさか帝都オークションに、僕の名前で登録しているとは夢にも思っていないのだから、驚くのも当然だ。
「待ってください!それを登録したのは間違い無く僕じゃないですから!!」
「いやいや……だとしても師匠くらいしかあんな物を手に入れられないでしょう?水龍サザンクロス様の尻尾だなんて……会場が大変なことになったんですよ?」
僕はついウッカリ『水龍サザンクロスではなく、水龍ウィンターコスモスですから!』と間違いを正したが、問題はそうではないらしい……
「す………水龍………ウィンター……コスモス様?………あの危険度が『滅び』のデカディメントクラスを意味する、危険種である狂龍の?」
マナカに僕が肯定をした瞬間、彼女は『ドサリ』と音を立てその場にぶっ倒れる……
しかしヴァイスとグラップは、倒れた彼女に構ってられない状況の様で、僕に続けて話をする……
「な……!?龍種のウィンターコスモスと言ったら……破壊を意味する、ディストラクションクラスの更に上じゃないか!?単純にサザンクロス様の倍は脅威度が上がるぞ?そんな尻尾を!お前はどうやって斬り落としたんだ……」
「ヴァイス!!今は切断した方法が問題ではない!!……狂龍ウィンターコスモス様を、コイツは事もあろうか怒らせたんだぞ?……終わりだ………もう帝都は間違い無く終わる………」
ヴァイス騎士団長が絶句した後、グラップが珍しく弱音を吐く……
グラップの発言のせいで、僕は周囲の睨みと絶望を一身に浴びた。
夢にまで出てきそうな怨みの目だ……怨念とは非常に恐ろしい。
夢にまで出られるのはたまったモノではないので、僕は今日あった事を説明する……
「ち……違いますって……全く逆で、助けたんですってば!そのお礼の代わりに、尻尾と羽を貰ったんですよ!なんか休眠するのに、水中だと羽とかがが邪魔だって言ってましたよ?」
そう言った瞬間ヴァイスとグラップは『あの龍種が……休眠するだと?』そう言った後『何故それを先に言わないんだ!!』と言ってすぐに兵を伴い僕の前から離れて行く……
「突然ヴァイスさん達は、どこへ行くんでしょう?ラムセスさん……分かりますか?」
「へ?ヒロ殿……な?何を言ってるんですか?……休眠は間違い無く大問題です。龍種の休眠は、他の魔物に大きく影響を及ぼします!常識でしょう?」
「そ……そうなんですか?でも……影響があるって……何故ですか?」
「いやいや……絶対的強者である捕食者が、眠りについていなくなるんですよ?近辺に脅威が無くなれば、自由に動き回る魔物だって増えますから!」
僕はラムセスの話に『なるほど』と相槌をうつ……
龍種の尻尾問題は休眠問題が浮上した事で、然程たいした問題では無くなった様だ。
出品理由が明確になったことも、大きいのかも知れない。




