第924話「家族の繋がり・フローゲルの親心」
更新ですっぽ……(゜ω゜)あれ?24時間経ってるゴロゴロしてたら……
今回のお話は!フローゲル・ニューワールドパパンの親心のお話!
4000文字なのでメッチャ長いです!( '-' )ノ)`-' )ぺし……ごめんよぉ
僕は大凡だがそいつら等の考えは読めている。
パウロ絡みで長年引きずった問題を、今此処で解決しようとしているのだろう。
問題は、彼らがパウロの時代から生きているとは考え難い。
サイキや僕と同じ異世界人だったら長生きしている可能性こそあるが、フローゲル問題に固執している時点で間違いなく違うだろう。
「僕にちょっと考えがあります……引っ掛け鞄を一旦戻して貰えます?」
そう言った後に『あと出来る限りこのギルド内で会話を引き伸ばしてください……あとそうですね……その会話の中で、今宮廷にいる特定の人物がフローゲル一家の末裔を知っているとも言ってください』とも付け加える。
僕がキーテラに説明をしていると、アマナとアルカンナが会話に混ざってきた……
「ねぇ……ヒロ……私とアーリスが話し込んでいる間に、色々面倒が発生したみたいだけど……何か手伝えることはあるかしら?例のレシピのお礼もしたいし……」
「娘達を仲直りさせてくれた礼がまだじゃからな!この婆やで良ければ、何でも手伝うぞよ?ヒロや……何かあるかい?」
アマナ達のその言葉は非常に助かる……
何故なら、誰かを使いに宮廷のアユニ達の元へ送らないとならないのだ……
「では……アマナさんとアルカンナさんはグラップさんに急用があると言って、騎士団までへ行ってもらえませんか?そしてグラップさんを通じて、僕の仲間に手紙を届けてほしいんです!」
僕は作戦内容を分かり易く認めると、アマナへ其れを託す。
「兄さんに渡せば良いのね?ちょっと中身が見えちゃったけど……かなり面白い意地悪ね?」
「この婆やも歳ながら、この意地悪にはワクワクじゃぞ!……ふぇっふぇっふぇ!」
どうやら二人とも、帝国魔導師協会があまり好きでは無い様だ……
推測の範疇だが、アーリスと帝国魔導師協会の折り合いが悪いのだろう。
「取り敢えず僕は、目的の物を急いでこさえて下準備します!なのでキーテラさんはアーリスさんと打ち合わせをして、出来るだけ話を伸ばして下さい」
「分かりました……なんか本当にすいません………」
僕はナイフを取り出し、引っ掛け鞄の外革と内革を繋ぐ紐を数本切ると隙間を開ける。
そして空間を確認した後、リュックからスライムを呼ぶ。
「スラ悪いけど……分体を作ってこの中に入ってくれる?……相手に渡した後、安全になったら這い出てきてバックを包んで帝国魔導師協会から持ち出してくれるかな?」
この引っ掛け鞄はサイキへ家族の形見として渡す物だから、馬鹿な奴等には渡すつもりなど毛頭無い。
その事もしっかりスラに伝える。
そして帝国魔導師協会から出る時は、他の引っ掛け鞄を全て溶解してくる様にも指示を出す。
『ぷるん……ぷるるん』
皆の前で言葉を発すると、予想以上に周りが凄く驚くと理解したスライムは、最近では皆の前で話さずぷるぷる揺れて誤魔化している。
プルプルしてた方が人気が出ると理解している所が末恐ろしい。
変なベクトルに進んでいるスライムだが、いざという時に頼りになるかけがえのない仲間だ。
「じゃあ……サイキさんは此処で待機しててください」
「え?でも……私も何か………」
「今はスキルを使って走った方が早いので!帰ってきたら、後でお願いしたい事がありますので!」
サイキは『ヨキヨキ!!』と言うと、僕を送り出してくれた。
僕は瞬歩を多用して朽ちたフローゲル像迄急ぐ……
「この短時間で同じ場所に2回か。フローゲルさんとは縁があるな……3代に渡ってその存在を知るなんて……」
僕は独り言でそう言って、引っ掛け鞄の魔法印を石碑に押し付ける……
『ゴ……ゴゴゴゴゴゴ』
上が朽ちても下の台座が朽ちなかった理由は、特殊な魔法がかけられていたからだった様だ。
台座の裏に行くと内側が魔法の収納庫になっていて、内側には劣化防止の魔法文字がみっちり書かれていた。
そして収納の中は、手紙の内容とは全く異なっていた……
手前には目につく様に置かれた手紙と、重石がわりの金貨1000枚が詰まった袋が目に入る。
そして奥には様々な設計図や魔導書に作りかけのマジックワンドの杖部分、それに山の様なマジックアイテムがあったからだ。
僕は手紙を開いて見る……
◆◇
親愛なる、我が意志を継承する未来の息子達へ……
これを読む君を謀り、こんな頼み事をする私を許して欲しい。
まず最初に、君を謀った事を謝罪する……私は既に次元収納を完成させているからだ。
今この場所へ君を呼んだのは、我が娘サイキの運命を変えて欲しいからだ。
彼女は霧吹き山脈への遠征時に偶然出会った娘で、実の子では無い。
サイキは心優しい娘だが、その心には深く刻まれた傷がある……
決して言葉に出して言わないが、私は親として接する内にそれを感じ取ることができた。
彼女はこの不甲斐ない父に、その真実をひた隠しにしているが……サイキはこの世界に落ちた異界の人間だろう……
この世界での彼等の呼び名は『流れ』……知っての通り異世界人である。
気づかれない様に調べた結果、彼女は特異点を体内に抱えている……
魂レベルで変質し、寿命ではこの世界において死ぬ事が無い。
その上老化に対応した肉体を持ち、肉体年齢を調整する細胞は既に停止し、正常に作用をしていない。
そのせいで長い悠久の時をただ一人で歩み続け、報われることの無い運命を歩む事になてしまっている。
しかし不老であって、ヴァンパイアの様な不死属性の生命体ではない。
普通の人間と同じ様に、外傷により死ぬことは出来る……だがその死の代償は我々とは大きく異なり、魂の苦しみと痛み……そして崩壊を伴うのだ。
彼女達異世界人が死ぬという事……即ちそれは魂の崩壊……輪廻の輪から外れて無となる事に限られる。
それがこの私が導き出した答え……『流れの死』……魂の崩壊による虚無堕ちだ。
様々な知識を蓄えて来たこの私でも、その秘密の一部を解き明かすだけで人生を終えてしまった。
魔法薬や秘薬で延命して尚、私程度の実力では謎の一部を解明するだけに留まった。
残念な事に……娘であるサイキを、元の世界に還す事は……父である私では叶わない……
実験の末……我が魂は変質し、肉体レベルで崩壊しつつあり魔法薬での回復措置と肉体維持も既に困難である。
そこで……これを読む君達に全てを託したい。
我が魔導士の記憶、そして世界から失われつつある錬金術の禁書、次元を制御する技術……それらをこれを読む君達に授けたいと思う。
だから……我が愛娘サイキを……元の世界へ還してやってほしい。
私は最後の実験後に、実験結果全てを弟子であり、我が家系の長兄であるパウロに託す予定である。
当然既に、我が息子パウロにも今後の協力を仰いでいる。
私の死後は全てをパウロに頼み、この技術をサイキを救おうと尽力してくれる者へ全て継承する。
我が計画の芯はハイドホラーである……あの魔物は、次元の壁を自在に通る力を有する。
奴の表皮があれば、次元通過の際に受ける劣化を全て遮断できるのだ。
しかし帝国騎士団6部隊をもってして、討伐できたのは不甲斐ない事にたった1匹だった。
それではサイキを包み込むローブの完成には程遠い。
ローブであれば最低3匹……奴を殺せる冒険者である君に倒して来て貰いたい。
その報酬にレジェンドアイテムである『次元容器』の製造法を伝授する。
この技術を持ちいれば、サイズも種類も自在に作れる。
作った容器をマジックバッグの転用し帝国軍へ売れば、君達は間違いなく巨万の富を得られるだろう。
何故ならば、次元容器のシェアを君達が独占できるからだ。
報酬には充分な物を用意させて貰ったと自負している。
是非我が意志を受け継いで貰い、娘の笑顔を取り戻して欲しい。
死にゆく哀れな父親の最後の願いと思い……願いを聞き届けて頂きたい。
ps、ちなみに彼女の居場所は、マジックアイテム『忘れ形見のブローチ』を作りかけのマジックワンドと組み合わせる事で、この世界どこにいても彼女の位置を捕捉できる。
フローゲル・ニューワールド
◆◇
『………まさか……こんな形で帰り方の情報が更に手に入るとは。』
僕は『狭間で得た帰り方の情報……それに噛み合う様に手に入った新情報……運が良いというレベルじゃない!』そう心で考えつつ、パウロにも感謝をする。
ダンジョンでマジッククロークを手に入れて中を探らなかったら、今のこの状況には行きついてない。
それどころか、パウロが手紙を残した事が僕達の帰還の道標になったのだ。
そして何よりフローゲルの、義理の娘にかける愛情にも感謝をする。
その愛情は周り巡って僕を助けるからだ。
そして妹思いの義理の兄のパウロ……
世代を変えても救おうとする強い意志……なんて素晴らしい家族だろうか……
暫くこの感動を味わいたい……しかし残念ながら、感動に浸っている暇が無いのもまた事実だ。
時間は待ってくれないし、これ以上厄介者の問題がひどくなる前に対処が必要だ。
この家族愛に水を差す欲に塗れた帝国魔導師協会には、フローゲル父と兄の怒りの鉄槌をくれてやらねばならないだろう……
僕はフローゲル親子が残したアイテム類を、纏めてマジッククロークの収納にしまう。
そして代わりに滅茶苦茶な素材を書いた設計図を忍ばせて、触ると猛毒になるポーションを偽設計図にハケで塗りたくる。
題して『ファラオの呪い大作戦』だ。




