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第922話「フローゲルの娘」

おはようございまーす!


とうとうフローゲル像に着いた\( ॑꒳ ॑ \三/ ॑꒳ ॑)/わっしょーい


そして……またまたお話が進むよ!


知る人ぞ知る……あの人が登場………そして問題も急浮上✌︎('ω'✌︎ )いぇい


「あれ?石碑?……銅板プレートの間違いじゃ……」



 そう呟くも、当然周りには誰も居ない。



 僕は周囲を再確認して、クロークの次元収納からパウロの手紙を取り出して読み返す。



 そして手紙に書いてあった『帝都の魔導院(フローゲル魔道士像)の裏』という文字で周囲を見回した……



『あれ?帝都魔導院?……そんなん無いぞ!?……ここ周辺は建物なんか無いしな……緑地豊かな散歩道と言った感じだ……』



 そう思いつつ周りを見回す……


 道沿いには転々と屋台があるので、近くにそこそこ規模のある青空市場があるのがわかる。



「どうしたんじゃ?何か探しもんか?」



 突然背後から声をかけられてびっくりした僕は、ついありのまま答える。


 模試関係者だとしても、パウロの引っ掛け鞄を持っていない。


 まず勘繰られる心配はないだろう。


「え?……ああ……フローゲルの像を見にきたんですけど………」



「うん?此処にあるではないか?」



 その声の主をよく見ると、先程精霊の話をした綺麗な女性だった。


 相変わらず言葉遣いに特徴があるが、今はそれは重要ではない。



「あ……先程の……」



「おお……なんだい……連れてる精霊に見覚えがあるから……もしやと思ったが。やはりお主だったか……」



「やっぱり……精霊が……見えるんですか?」



「何を言ってるんだい?見えないで精霊の話をすると思うかい?」



 僕は『あ!』という顔をしたのだろう……


 すぐにその事を指摘された。



「意外とマヌケだねぇ?そんな直ぐに顔に出る様じゃ……状況次第では精霊に危険が及ぶよ?今の世はちゃんと隠してナンボなんだ。しっかりおし!」



「すいません……気を付けててもつい……。でも本来見えませんから……相手にもよると思うんですけど?」



「そこがマヌケだって言ってんのさ!風っ子とか呼ばれてる風の精霊は『そんな事ない』と言ってるよ?まったく……」


 そう言った女性は『<毎回間抜けな事に付き合わされてる>って怒ってるじゃないか!まぁ……喧嘩するほど仲が良いのは認めるけどね!それで?今は何をお探しだい?』と念押しの為か、話の最後にもう一度同じ質問を繰り返した。



「ああ……石碑付きのフローゲル像を探してました」



「ふむ……素直で宜しい。ちょっと待ってな!今精霊を使ってありかを探ってやるからね!」



『猛り狂う風の王よ……この地に強き風を!』



『ゴォォォ…………ザワワワ………ザワワ…………』



 女性がそう言うと、帝都を抜けるかの様に割と強めの風が吹く………



「分かったよ!フローゲルの像は此処を含めて3箇所さね」



 そう言った女性は『うち2つは石碑の無い銅像さ。街外れの旧魔導院跡地に朽ちたフローゲルの像がある。アンタが探してるのはそれじゃないかね?』と詳細を語った。



「………有難う御座います!貴女は……僕がそれを捜してた理由を聞かないんですか?」



「アタシがフローゲルの坊やに教えたのは次元収納のレシピだけさ。アンタが気になってるのはそれだろう?」



「!?」



「はぁ……マヌケを通り越して馬鹿だねぇ……。さっきも言ったが顔に出過ぎさ……すぐに顔に出さない様に訓練しな!」



 僕は頭をコリコリとかくと『気をつけます!ところで……その跡地ってどっち側でしょう?』と聞くと、女性は右の方を指差して……『此処の道を突き当たりまで行けば辿り着くよ』と言った。



 僕はその方向を見て、向かう場所を把握する。


 位置的に言えば、どうやらかなり無駄足だった様だ……


 何故なら来た道を逆走して、更に先に行く必要があるからだ。


 そして御礼を言おうと振り返る………



「すいません。有難う………あ……あれ?……また居ない…………」



 女性は風の様に現れ、誰かも名乗らず風の様に消えていた……



 ◆◇



 僕は来た道を戻る……


 行くべき場所は、どうやら薬師ギルドをさらに超えた場所の様で、非常に遠い……



『あ……あった!崩れた石像に割れた石碑……たしかに石碑の魔法印は、あの引っ掛け鞄にあったのと一緒だ!』



 僕は心でそう呟くと、石造の裏に回る。



『あったぞ!……窪んだ台座裏!……成程この場所に収納があるのか……不思議な魔法もあるもんだ……』



 僕はパウロの引っ掛け鞄をキーテラに預けたことを若干後悔した。


 何故なら、この場所ならまず誰も居ない。



 周囲を気にする必要もないくらい、今居る場所は街にの中心部から離れているせいでそこそこ荒れ果てているのだ。


「はぁ……こんな事ならキーテラさんに渡すんじゃ………『ガサガサ』………ふおぉ!?………」



 つい一人ごとを言うと、後ろで人の気配がした。


 相手は前から隠れていたのではなく、どう言う訳か樹々を避けながら抜けて来た様だ……



「ひぃ!?……な……何ですか……私は何も良いものもってませんよ!!襲っても絶対にアナタは得はしないです」



 声の方を見ると一人の女性が居た……黒髪が非常に長く、一言で表すと凄く綺麗な女性だ。



「ちぃ!……やっぱり念の為に武器持ってくるんだった………」



「武器!?ちょっと待って……僕は何もしませんよ?武器とか言わないで下さいよ……。此処へは調べ物しに来ただけですから!」



 そう言って僕はリュックを下ろして『危害を加える気はない』と手をあげる。


 しかし、どうやらその行動が間違いだった様だ……女性はより一層不審な目で僕を見ている。


「そう言って冒険者は皆私を騙すんです!!何度危険な目に遭った……はぇ!?……そのリュック……前に私が無くしたリュックじゃない!!」



「え??……これは僕のですよ?………言いがかりはやめてください」



「絶対に嘘!!それはこの帝都では売ってません!!」



「え?」



「ほら!今『え?』って言った!!嘘だって見え見えじゃない!」



 そう言った女性は、目にも止まらぬ早業で僕の背後に回る……


 幾ら僕が気を抜いていたからと言っても、街娘にしては異常でしかない……



 そして女性は僕の腕を取り締め上げて、関節技を決める。



「え!?……あいたたたたたたた………痛い痛い!ギブ!ギブアップ!!何もしないってば!!……いたたた」



「え!?………ギ……ギブアップ?………」



 僕がついそう言った瞬間、女性はすぐに関節を決めた腕を離す。



 そして途端に僕から距離をとると……『貴方!何者ですか?……そのバック今すぐ開けて!貴方の物なら、証明の為に開けられるでしょう?』と言い始める。



 今は女性の言い分を聞くしかないが、何もかもが滅茶苦茶だ……



「開けますけど……何度も言いますが、これは僕のものです!……貴女の物だって言うなら、開ける前に中に何が入ってるか言ってください!」



「うるさい!私が開けてって言ったら開けなさいよ!」



「何ですかその言い方!」



 あまりに理不尽な言い分を突きつける女性に僕は『まるで女性のジャイアンじゃないか……』と聴こえる様にボソリと言う。



「ジャ……ジャイアン?……五月蝿い!!のび太!私が今開けろって言ったでしょう!……グス………グス………」



「……え!?………の……のび太?……………」



 僕は突然泣き始めた彼女に、自分のバックを放り投げる。



「……グス………開けて……いいの?」



「見ても中身はあげませんよ?確認ならどうぞ……」



『ジジジジ……ジジジジ』



 名も知らない彼女は、金属製のホックを外しジッパーをずらしてリュックを開ける。


 その動作は『開け方』を知っている人の動作に違いなかった。



『ぷるるん』


「ひぃ!?………リュックの中に…………ス………スライムを飼ってる!?………ひぃぃ…………へ……変態だ!」



 リュックの中のスライムを見た彼女は、すっかり泣きやんでいた。



 ◆◇



「えっと……はじめまして……名前は万が一誰かに聞かれると困るので下だけで……ヒロシと言います。高3です元ですが……」


「御免なさい勘違いしちゃって。私はサイキと言います。元高2ですけど……今は彷徨い過ぎて……もう良くわかりません」



 ビックリした事に、彼女は僕と同じ世界から来た流れだった。


 既にどれだけ彷徨っているかも、途中から馬鹿らしくなって数えてないらしい。



 何故彼女が此処にいるかと言うと、義父である魔導士フローゲルの墓参りに来たらい。


 そこで僕と鉢合わせして、現在に至る様だ。



 『大魔道士フローゲル』は、彼女が彷徨って絶望している時に遭ったこの異世界の義父だと言った。



「義父だけどフローゲル父さんは良い人だったの。魔導師達とよく喧嘩してたけど、彼等が困ってる時は決して見捨てなかったわ。最後は帝国の悪辣貴族と魔術師達の謀略に引っかかり……非業の死を遂げたけど……」



「実は僕……パウロの引っ掛け鞄にあった手紙を読んで此処に来たんだ」



「え!?……パウロ兄さんの?お願い!その手紙を見せて!!」



 僕は悪意増し増しの手紙を見せるか悩んだが『彼女の義理の兄であれば、内容がどうあれ見せるしかない……』と割り切って読ませた。


 すると彼女は『あいかわらず……兄さんは最後まで怒ってたのね!ハイドホラーを倒して、魔導師のバカタレをギャフンと言わす!と言ってたけど……』と、苦笑いしつつ当時の思い出を語る……


 そんな事を言いつつ、大事そうに手紙をたたむ彼女を見て『この手紙は僕が持っているべきでは無い……』と判断した。


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