第919話「キーテラの興味と後悔」
おはようですぞ!\( ॑꒳ ॑ \三/ ॑꒳ ॑)/あさー!
さぁ薬指に薬を塗りたくり……痛み止めを飲んで今日の更新開始です!
ふおぉぉぉぉ( ˙ ꒳ ˙=˙ ꒳ ˙ )小説書きたい意欲が満タン!
今回のお話は……キーテラ絶賛後悔するの巻
(´・Д・)」やめてくんろぉぉぉぉ!!
僕はキーテラに言われるままに、呪文の準備をする……
そうした方が現状で望ましいからだが、他の受験生と違って座学は受けてない……
『問題が起こる可能性は濃厚だ………』そう思いつつも、呪文を使う前に質問をする。
「キーテラさん……では……ここから撃てば良いんですね?魔法は何でも良いのですか?」
「はい?判定用の魔法陣まで届く射撃系魔法なら、呪文はなんでも構いませんよ?」
「アタイ的には『範囲魔法』以外で頼むよ!あんなのはボウの馬鹿で懲り懲りだ……」
アルカンナもアマナも、アーリスの言葉に苦笑いしている。
その様子からして、多分僕の馬鹿さ加減を愚痴られたのだろう。
ちなみに銅級4位の試験レーンには、10メートル先に1つしか魔法陣がない。
そして当然の如く、周りにいた受験生は既に居ない。
僕の受験資格がノーマルという時点で興味も無いのか、足早に試験会場を後にしたのだ。
だから居るのは、名物化している小さな女の子だけだ。
僕は応援してくれる人がいない中、魔法を使う……
『ウォーター・バレット』
僕が水魔法を放つと、魔法弾は勢い良く飛んでいきレーンを簡単に抜け壁まで到達する。
すると壁周辺の方で、小さく『パキン』と音がした。
しかし試験官のキーテラは、僕の事とは別の事で驚いている。
「え?今のは……なんの魔法………?魔導師ギルドの記録に無い魔法?」
そう言ったキーテラの動揺は酷く『それどころじゃ無いわ!彼はノーマルの筈……魔法が使えるはずがないのに!?』などと、声にまで出している。
しかし僕は意味の分からない言葉より、微かに聞こえた音の質問をする……
「あれ?いま……何かが割れる音がしました?」
「は?割れる音!?アンタの気のせいだろう?」
『ギルマスのアーリスがそう言うからには、あの音は問題がないのだろう……』そう思い、僕は次の射撃位置に移動してキーテラに準備が出来た事を言う。
「はい……どうぞ……じゃない!!アーリスさん……このまま彼に撃たせて良いんですか??」
「キーテラ……おかしいのは承知の上で、今は黙って見てな!……」
「え?いやいや……ギルマスの言っている意味が分かりません!過去の測定記録では、ノーマルが今まで魔法を行使した事など無いんですってば!」
「でも現に使ってるじゃないか!今更記録がないっていう理由だけで、辞めさせる訳にはいかないだろう?何の為の試験なんだよ!」
何か問題を感じたのか、キーテラはアーリスと激しく言い合いを始めた。
しかしチビっ子はノーマルに希望を見出したのか、羨望の眼差しで僕を見る……
因みにだが……ギルマスであるアーリスの許可が出ているのだから、僕が撃ったとて当然問題はない筈だ。
だからこそ僕は『撃ってしまえば、こっちのもんだ』とばかりに、準備を始める。
「おい!キーテラ。早く行かないとヒロが撃つよ!測定が嫌なら試験官を変わるかい?」
そう言われたキーテラは、戻って来るなり『ヒロさん用意は出来てますので……何時でもどうぞ』と若干不機嫌そうに言葉を発する。
表情からして、ギルマスに押し切られたのは明白だ。
僕はこれ以上キーテラの機嫌を損ねない様に、急いで次弾の魔法を強めに魔力を込めて連弾で撃つ。
『ウォーターバレット』
水弾が勢い良く壁に到達すると『ピシィ……パキン』と、また何かが割れる音がする。
「あれ?……やっぱり変な何か音がしません?」
「……………!?……アーリスさん!よく考えると、この状況は流石に説明がつかないですよ!?ノーマルが無詠唱ですよ?こればかりは異常です!」
「いや……キーテラよく見ろって!そもそもコイツなんで二発撃ってんだって話だろう?」
彼女達は既にその会話さえ噛み合ってない……試験そっちのけで意見を衝突させる有様だ。
「いいえ問題はこっちが優先です!絶対におかしいです!今のは完全に無詠唱です!!」
「そんなのどうせ、詠唱待機か何かだろう?どんだけここで試験官やってんだ?キーテラ!!」
そう言ったアーリスは『おい!ヒロ……連続詠唱をしたら駄目だって、あたしゃ言ったよな?』などと僕を起こる始末だ。
とばっちりも甚だしい……
姑息もなにも……『多弾魔法が駄目なら先に言って貰いたい』そう思った僕は、ついアーリスに反論してしまう。
「え?そもそもウォーターバレットは10発同時発射可能な魔法なんですけど?だから……別詠唱では無いですよ?」
「「………………」」
急に黙った二人は顔を見合わせる……
そしてキーテラは、自分が持つ羊皮紙の束をバラバラとめくる。
当然アーリスも首を伸ばしてその様子を見守る。
「………………」
「あったか?キーテラ……」
「何処を探しても無いです…………ウォーター………何ですっけ?」
「ウォーターバレットとか言ってたぞ?」
必死に探すキーテラを横目で見ながらも、アーリスは他のレーンに移動する僕に重要な発言をした。
「まぁいいや……それは後で調べるとして、多弾魔法は損するぞ?それぞれから魔力が差っ引かれるから!」
「え?到達点を測るんですよね?試験で使うのは多弾魔法じゃ無い方がいいんですか?攻撃力重視の魔法とかの方が有利なら……今の僕は滅茶苦茶損してるじゃ無いですか!」
僕がそう言った瞬間『な!?なんですと!?……攻撃力重視?……まさか手数と威力の使い分けを?なら是非、威力最大で端まで届くのをお願いします!』などと言い始める。
そんなキーテラの表情には、あからさまな興味が浮き出ていた。
彼女の表情を見る限り、嫌な予感しかしないのはなぜだろう。
しかしアーリスも、この状況では流石に黙ってられない様で、キーテラの問題行動に注意を促した……
「ちょっと……キーテラ!何を勝手に……試験官が勝手に魔法指定は……ってアンタ聞いてる?」
「聞いてますよ?アーリスさん。全部すっ飛ばして銀級1位から逆走しましょう!その方がこの人は早そうなので!」
「いやいや……それはルール違反…………ってか!MP総量が計れねぇだろう?銀級条件のMP総量は、どう測るんだっての!」
「そんなのは試験票が物語ってるじゃないですか!アーリスさんも見ましたよね?黒く変色したんですよ?」
そう言ったキーテラは『アーリスさん。そもそもルールを破ったのはギルドマスターであるアーリスさんの方でしょう?』とニヤリとしつつアーリスを見る。
「あの氷魔法なんか、どう見てもボウさんな筈ないし!!そもそも色々と無駄が多いと思ってますよね?飛び入り参加の誰かさん?」
心を見透かす様にそう言ったキーテラに促され、僕は銀級一位の検査魔法陣まで移動する。
アーリスも口ではルールが云々と言いつつも興味はある様だ。
何食わぬ顔で後をついて来る……
「えっと……それなりの威力があって……あの壁まで届けば良いんですか?」
「そうそう!魔導師ギルド自慢の魔法障壁は5層なので、威力が強くてもなんら問題ないわ!ですよね?アーリスさん?」
「え?そ……そうだな!お前くらいの魔法とかなら、なんら問題はないさ!」
二人が言う、その情報は少し前にも聞いた説明だ……
魔法が壁まで届くことに意味があるのは、先程の表情から察しがつく。
距離的にして言えば壁まで大凡100メートル。
魔物と戦う場合、魔法使いが魔法を行使するのに安全な距離なのかも知れない。
「じゃあ撃ちますね……」
『ウォーター・スフィア!』
威力最大までMPを注いだ水珠は、内部に流れ込む様に激しく渦巻いている。
もし水珠の中に入ったならば……捩れ合わさる激しい水流で、揉みくちゃのバラバラになるのは間違い無いだろう。
しかし二人は、僕の撃ち出した魔法を見るなり、自慢気に言った事を若干後悔している様だ……
「あ……あの魔法はなんでしょう?アーリスさん………なんか……危険臭がします……」
「……見た感じが水珠だよね?キーテラ……あの魔法の記述は……過去の記録にはないの?」
「ゼロです……無いですっ……初見です!!………でもスピードがかなり遅くて……壁までは期待できないのでは?」
そう言いつつ魔法を見守る二人……
ゆっくりとしたスピードではあるが、あくまで他の魔法より遅いだけだ。
ウォータースフィアは二つ目の魔法陣を通過すると、その魔法陣は魔力を吸い上げ煌々と光出す。
その光は、素人目にも異常だと理解が出来るくらいだ。
「スピードは無いね……でも非常に嫌な予感がする。だって全く小さくなってないもの……殆ど魔法弾のMPが減ってないんじゃない?」
「私も前言撤回です。嫌な予感しかしないです………。だって……地面の魔法陣……魔力を吸い過ぎて、明るさが異常です………」
スピードこそ遅いが、水珠のサイズは変わることもなく壁にどんどんと近づいていく。
そして水珠が壁にぶつかると『ボゴン!』と鈍い音がなった。
そして次の瞬間『ギシギシギシ……バギ…バキン……ガシャン』と音がする……絶対にギルド自慢の何かが壊れた音だろう……




